画面越しに

すずめ屋文庫

画面越しに

気づくと彼女を見るのが日課になっていた。


きっかけは、Youtubeのおすすめに出てきた彼女がとても美しかったからだ。


都会でバリキャリの彼女の日常。

それは、平凡な主婦の私には、非日常の楽しいコンテンツだった。


仕事で乗る飛行機。移動時間もパソコンを動かす指先。派手ではない、滑らかな単色のグラデーションネイルにうっとりする。休みの日の朝には、英語のオンラインレッスンを受けたかと思えば、お昼には、手づくりのハーブを取り入れた新鮮なカルパッチョサラダを披露していた。


毎週日曜日の夜に更新。


理想的な女性だ。


流れるような編集も、動画の字幕のフォントもオシャレで彼女らしくて素敵だ。声はほんのり高いが、落ち着いていて、気持ちゆっくりなテンポが耳に心地よい。


そんな彼女のある日の報告動画。


1年間お付き合いされたという彼と入籍したとの事。


「すごい!もう完璧じゃん!」


これから、夫婦共演動画とかになるのかな〜なんて、今後の動画の動向を私は考えた。


ハイスペ旦那とハイスペ彼女。


いいじゃん、いいじゃん!また新しい別世界が見れそう。同じ日本だけど(笑)


2人は仲睦まじそうな様子で、馴れ初めや今後の結婚式の準備について話し始めた。



「………」


「………」


「………」



だが、報告を聞いていくにつれ、私は不思議と彼女への熱が下がっていくのを感じた。


(あぁ。こんな感じかぁ。彼女、こういう人だったんだ…。)



( ……… )



「ただいまー。」


夫の帰って来た声が聞こえた。


私はパソコンを閉じ、パタパタと玄関へ向かった。

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