タスキを繋いで
進藤 進
第1話 喧噪の中で
【かんぱーいっ・・・】
数十人の声が重なる。
一瞬の沈黙の後。
どよめきが重なる。
一年間。
決して飲むことのなかったビール。
それが。
この瞬間だけ。
勝利の美酒に酔う。
とは、言っても。
十位に滑り込んだ我が校だけど。
それでも。
五年ぶりのシード権獲得は格別だ。
涙を滲ませるキャプテン。
一年間の重圧は想像以上に過酷だったろう。
アンカーでテープを切った先輩。
本当にお疲れ様でした。
だけど。
俺には手に持つグラスを空ける資格はない。
今年も。
怪我で苦しんだ。
春のインカレでは。
そこそこのタイムを出せたのに。
もう、三年生だ。
後が無いはずなのに。
出雲の四区で。
全力でスパートした瞬間。
太ももに違和感を覚えた。
何とかタスキを繋いでけど。
今年の箱根は。
給水係になった。
懸命に声援を送った。
そして、我が校はシードを取れた。
無茶苦茶、嬉しかった。
それでも。
俺は。
手に持つグラスを口にすることは出来なかったんだ。
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