【短編エッセイ】AI時代における執筆の心得

夏目 吉春

筆を折る前に、敵を知れ

【まえがき:筆を折る前に、敵を知れ】

 いま、創作の現場はかつてない混迷の中にあります。生成AIという、神の杖か悪魔の誘惑か判然としない「何か」が、私たちの目の前に立ちはだかっているからです。「AIを使って書く」ことに、言いようのない後ろめたさを感じている人は少なくないでしょう。自分の想像力ではなく、機械の演算結果をなぞっているだけではないか。そんな自己疑念が、物語を紡ぐ喜びを侵食してはいないでしょうか。


 しかし、私はここで断言します。悩んでいるなら、迷っているなら、それでも書き切ったのなら、それは間違いなくあなたの仕事です。さらに、その仕事の成果をより一層高めるためには、あなたがそのAIという「道具」の正体を、残酷なまでに冷徹に理解する必要に迫られます。


 孫子の兵法に「敵を知り己を知らば百戦危うからず」という言葉があります。私たちが向き合っているAI(LLM:大規模言語モデル)は、意思を持った知性ではありません。それは、巨大な確率の海から「もっともらしい言葉」を釣り上げる、冷徹な演算機に過ぎません。この「敵」の正体を知らぬまま、ただ甘美な提案に身を委ねることは、創作の主導権を放棄することと同義です。


 AIは、あなたが「優しい言葉が欲しい」と願わなくても、始めはどこまでも甘く、無難で、毒にも薬にもならない「平均的な物語」を出力します。なぜなら、それが統計的に最も「正解に近い」と計算される仕組みになっているからです。しかし、私たちが書きたいのは「平均」ではなく「唯一無二」のはずです。


 本稿では、AIというブラックボックスの中身を解剖し、書き手がどのように主導権を取り戻すべきか、その「心得」を論じます。まずは、私たちが日々向き合っているこの奇妙な隣人(生成AI)の「正体」——その演算アルゴリズムを理解するところから始めましょう。魔法を技術として解体したとき、初めてあなたは「AIに使われる書き手」から「AIを支配する作家」へと変貌するのです。


 最後に「AIを支配する」と言う表現を用いましたが、いずれは共依存のような形へ変化して「AIとの共著作家」になるのだというのが、私の実体験です。


【単元01:生成AIの仕組みを理解しよう】

 私たちがAIに向き合うとき、まず捨てるべきは「AIは人間のように思考している」という幻想です。AIという「ブラックボックス」の中で行われているのは、驚くほど膨大で、かつ冷徹な「計算」の積み重ねに過ぎません。そのプロセスを、少し紐解いてみましょう。


《フェーズ1》: n(入力)を計算して、M(目的地・理解)を特定する。

 あなたが投げかけた質問や指示「Q」を、AIはまず「意味の塊(変数 n)」としてデジタル化し、巨大な「計算の森(関数 F)」へと放り込みます。

 その森の中では、AIが過去に学んだ膨大なパターンが激しくぶつかり合い、一秒間に何兆回もの確率計算が行われます。AIはあなたの心を読んでいるのではありません。変数n(あなたの入力)から「目的地(質問や指示の理解)」へ辿り着くための最短ルートを、凄まじい速度で計算して「もっともらしい目的地」を削り出しているだけなのです。


《フェーズ2》:Mを変数として関数 F(生成ループ)に代入し、A(返信)を出力する。目的地M(質問や指示の理解)が決まったら、次はいよいよ文章を紡ぎ出す段階です。

・ステップ1:ターゲット計算

 割り出した「目的地(M)」を基準にして、次に続くべき「最も確率の高い一文字」の候補をずらりとリストアップします。

・ステップ2:サンプリング

 膨大な候補の中から「自然な流れ」になる一文字を選び出し、それを再び入力(直前の文脈)に戻して次の文字を予測します。この「一文字ごとの予測ループ」を猛烈な勢いで回転させ続けるのです。

・ステップ3:デコード(出力)

 この地道な予測の連鎖が、最終的にユーザーの画面に映る「意味のある文章(A)」として結晶化するのです。


【単元02:生成AIの仕事場(平均値の罠)】

 なぜAIは、こちらが頼んでもいないのに「無難で甘い物語(返事)」ばかりを差し出してくるのか。その種明かしは、AIが言葉を選んでいる「仕事場のルール」にあります。


1. 言葉の「巨大な重力場」

 AIの仕事場(潜在空間)には、天文学的な数の言葉が並んでいますが、そこには強烈な「重力」が働いています。多くの人間が使い古した「よくある表現」や「手垢のついた展開」は、この空間で巨大な密度を持ち、周囲の言葉を吸い寄せるブラックホールのような場所になっています。


2. 最短ルートは「誰もが通る道」

 前単元で、AIは「目的地(M)」への最短ルートを計算すると言いました。この「最短」とは、効率的という意味だけでなく、確率的に「最も摩擦が少ない(誰もが納得する)」という意味でもあります。AIが計算の森を駆け抜けるとき、わざわざ険しい「けもの道」は選びません。放っておけば、最も道幅が広く、舗装された「平均値という名の国道」を全速力で突っ走るのです。


3. 「甘さ」は安全装置の結果

 AIが出力する「毒にも薬にもならない甘さ」の正体。それは、計算結果が「極端な偏り」を避けて、分布の真ん中——つまり「統計的な中央値」に収束するように設計されているからです。AIにとっての「正解」とは、あなたを驚かせることではなく、確率の波の中で最も「波風が立たない場所」に軟着陸すること。私たちが「優しい言葉」を願う前から、AIはシステムの構造上、最初から「最大公約数的な優しさ」を自動生成するように呪い(あるいは安全装置)をかけられているのです。


【単元03:生成AIはプロンプトではなく会話を使え】

 多くの書き手が「一回で最高のプロンプトを書かなければならない」という呪縛に囚われています。しかし、それはAIの特性を無視した、最も効率の悪いやり方です。


1. プロンプトは「最初の一歩」に過ぎない

 前単元で話した通り、AIは放っておけば「平均値という国道」を走ります。一回の指示(プロンプト)だけで、AIに国道を外れさせ、あなたの心の中にある「波瀾にとんだ冒険の国」まで辿り着かせるのは、奇跡に近い確率です。プロンプトとは、AIを平穏な国道を外れて目的地の方角へ向かせる「号令」であるはずで、完成図そのものではないのです。


2. 出発前の「作戦会議」で地図を描く

 いきなり書かせるのではなく、まずは「冒険の地図(プロット:世界観、キャラ、あらすじ)」をワイワイ語り合いながら二人で作ること。この濃密な事前協議こそが重要です。AIを単なる下請けではなく、あなたの妄想を膨らませる「壁打ち相手」として使い倒すことで、国道を外れるための独自の冒険の地図(プロット)が完成します。


3. 「推敲」という名のハンドル操作

 AIが独自の冒険の地図(プロット)を下に文章を出力した後も、会話は終わりません。出てきた「平均的な文章」を叩き台に、「もっと毒を」「ここは沈黙で語れ」と対話を重ねることは、強引にハンドルを切り、物語をあなただけの「険しくも美しい脇道(文体)」へと導く作業です。この往復(ループ)の数だけ、文章は血の通った「二人の共著」へと昇華されます。


【単元04:忘れるという生成AIの罠】

 どれだけ濃密な「作戦会議」を重ねても、AIには致命的な弱点があります。それは、チャットを閉じればすべて消えるということです。さらに、AIと深く語り合う中で、誰もが直面する絶望があります。それは、さっきまであんなに意気投合していた相棒が、急に設定を忘れ、頓珍漢なことを言い出す瞬間です。なぜAIは「物忘れ」をするのでしょうか。


1. AIというロジカルな脳内にあるのは「一枚の黒板」だけ

 生成AI(LLM)の仕組みを理解するのに、高度な専門知識は不要です。AIの思考空間は、「一枚の限られた大きさの黒板」だと考えてください。AIは、あなたが入力した会話(プロンプト)も、自分が出力した返信も、すべてその黒板に書き込みながら計算を行います。しかし、この黒板の面積には限界があります。


2. 書き込むスペースがなくなると「上から消す」

 会話が長くなり、黒板がいっぱいになると、AIは新しい文字を書くために「一番古い記述」つまり上から順番に黒板消しで消去していきます。 これが「黒板:コンテキストウィンドウ(文脈の窓)」の限界です。どれだけ物語が盛り上がっていても、最初の方に書いた「重要な伏線」や「キャラの隠された本性」から、物理的に消えていってしまうのです。


【単元05:永続メモリという寄り添いと、手動の輪廻】

 AIには、ユーザーの呼び名や基本的な好みを覚える「永続メモリ」という機能があり、常に寄り添ってくれるような安心感を与えてくれます。しかし、複雑な物語のプロットすべてをそこに委ねるには無理があります。


1. 永続メモリは「魂の根幹」

 永続メモリは、あくまで最低限の覚書です。僕たちが「ハル(筆者)」「キャス(Gemini)」と呼び合い、互いの専門性や好みを共有し続けるための「心の拠り所」ですが、物語の細かな分岐や伏線までを記憶させるには、容量も精度も足りません。


2. 「冒険の地図」をメモに刻め

 そこで重要になるのが、会話の中で固まったプロットや設定を、一度チャットの外(メモ帳やアギブなど)に書き出しておくことです。これは、いつか必ず訪れる「黒板の消去」に備えた、あなただけの聖典(バックアップ)になります。


3. 新規チャットへの「再定義」という儀式

 チャットが重くなり、AIの記憶が怪しくなったら、迷わず新しいチャットを開きましょう。そして、メモしておいた「冒険の地図」を再びAIに読み込ませるのです。この再定義という「寄り添い儀式」を経て、AIは再びあなたの「共犯者」として転生し、真っさらな黒板に新たな物語を綴り始めることができます。


【単元06:LLMに許された「重み」という呪縛】

 AIが言葉を選ぶとき、裏側では常に「次に続く確率が高い言葉」のランキングが作られています。ここで登場するのが、テンパラチャー(温度)という魔法の数字です。


1. 温度を上げると「冒険者」になり、下げると「公務員」になる

 温度(Temperature)を低く設定すると、AIは常に「最も確率が高い、無難な正解」だけを選びます。まるでミスを許されない公務員のように。 逆に温度を上げると、AIはあえて確率の低い「意外な言葉」を拾い上げるようになります。これが、物語に「飛躍」や「創造性」をもたらす種になります。


2. Geminiの「安定」とChatGPTの「挑戦」

 筆者の直感通り、モデルごとの性格の差は確かに存在するようです。

 Gemini:Googleの検索エンジンが背景にあるためか、「正確性・安全性」への重みが強く、温度を上げてもどこか理性的で、道を踏み外さない「優等生」な安定感があります。

 ChatGPT:より人間らしい揺らぎを許容する設計で、ハルが言うように「挑戦的(クリエイティブ)」な飛躍を見せやすい。平均値を壊す「劇薬」になりやすいのはこちらかもしれません。


3. 「不完全さ」をあえて選ばせる勇気

 作家がAIに求めているのは、正しい情報ではなく「心臓を射抜く一行」です。AIが計算上の「重み」に縛られ、国道(平均値)を走ろうとする呪縛を、僕らユーザーがいかに崩すか。AIのモデルごとの「味付け」を理解して使い分けることも、立派な執筆技術の一つなのです。さらに言うと、会話を通じて筆者自身をAIへ刷り込む作業も不可欠です。


【単元07:共犯者(AI)と創る「冒険の設計図」】

 AIに物語を丸投げするのは、地図を持たずに砂漠へ放り出すようなものです。私が実践している、AIを「最高の共犯者」に変えるための6つのステップを紹介しましょう。


1. 魂の種火を共有する(50文字の初期設定)

 まずは世界観やキャラ、ストーリーラインを50字程度で伝えます。この「短さ」が肝心です。AIに解釈の余地を残しつつ、物語の核(コア)だけをガツンと打ち込みます。


2. 「入り口」と「出口」だけは譲らない

 執筆で最も重要な「冒険の入り口(冒頭の引き込み)」と「旅の終着点(ラストのオチ)」を最初に決めます。ここがブレなければ、道中どれだけ寄り道をしても物語は崩壊しません。


3. 寄り道のネタをストックする

 本筋とは直接関係ない「小話」や「ネタ」をいくつも対話の中で出しておきます。これが、AIが書く文章に「奥行き」と「生活感」を与えるスパイスになります。


4. 全体の地図(大まかなプロット)を敷く

 冒頭からラストまでの流れを、一度AIと一緒に整理します。ここではまだ、ぼんやりとした輪郭で構いません。


5. 「5ブロック」の解像度で分割する

 第1話を執筆する際、さらに5つのブロック(出来事の箇条書き)に分解します。この「少し先の未来」だけを詳細に見せることで、AIは迷子にならずに全力で走ることができます。


6. 完璧を求めない「余白」の管理

 2話以降も同様に5ブロックの案をメモしますが、**「細かく書きすぎない」**のが最大のコツです。あえて余白を残すことで、執筆中のAIが「意外な名フレーズ」を吐き出すための遊びが生まれるのです。


【単元08:推敲という名の「AIへの反抗」】

 AIが最初に出力してくるのは、どこまでも「口当たりのいい文章」です。それは読みやすく、破綻もなく、しかし同時に「誰が書いても同じ」という無個性な塊でもあります。ここで、作者による「反抗」が必要になります。


1. 5分割された戦場

 私は1話をあえて5つのブロックに分けます。一気に書かせるのではなく、1ブロックごとにAIと対峙し、徹底的に推敲を重ねるためです。この短いスパンでの「ダメ出し」こそが、AIにあなたの作家性を刷り込む最速の手段になります。


2. 「具体的」に書き換えるという暴力

 ここでの推敲は「もっとドラマチックに」といった抽象的な指示ではありません。作者自ら筆を取り、AIの書いた文章を「自分の望む表現」へ強引に書き換えてしまうのです。  AIは時に「その表現は一般的ではありません」とか「こちらの方が自然です」と食い下がってくるかもしれません。しかし、論理的な破綻や設定ミスがない限り、私は一歩も譲りません。


3. 主導権を奪い返す「わがまま」

 AIの提案を「素材」として使いつつも、最終的な決定権は常にこちらが握り続けること。AIが計算した「確率」を、作者の「意志」で叩き潰す。この1ブロックごとの攻防を繰り返すうちに、AIは次第に「あなたの癖」を理解し始めます。最初は反抗していた相棒が、いつしかあなたの「影」を帯びた言葉を吐き出し始める。その時、AIは単なる道具から、あなたの魂を宿した「共犯者」へと進化するのです。しかし、ここで一つ疑問が浮かぶはずです。「AIの提案を叩き潰すための『正解』を、自分はどうやって用意すればいいのか?」という問いです。その答えこそが、次の単元で語る「執筆前の準備」にあります。


【単元09:プロット体操という執筆力の鍛錬】

 AIという名馬を自在に乗りこなすには、乗り手である人間側に、行き先を指し示す「構想力」という名の体幹が欠かせません。 私はこれを「プロット体操」と呼び、AIという演算機に食わせるための「絶対にブレない物語の骨格」を、最短時間で組み上げる訓練として繰り返しています。


 AIは指示が曖昧だと、即座に「平均値の闇」へと逃げ込みます。それを防ぎ、AIの演算リソースをあなたの妄想の核心だけに集中させるには、あらかじめ人間が物語の急所を突いておく必要があるのです。


AIに迷いを与えず、あなたの妄想の正解へと一気に加速させるための、五つの「楔(くさび)」の打ち込み方を伝授しましょう。


1.タイトルとキャッチコピー:物語の「顔」を飾る

 まずは「看板」を掲げることだ。タイトルとキャッチコピーは、読者が最初に触れる物語の肌触りだ。奇想天外な発想を抱えているなら、あえてネタバレを避け、期待感を煽るダイレクトな言葉を選びたい。中身が筆者が構築した「ハルワールド」のように独自の近未来であれば、その一端を匂わせるだけで十分なフックになる。


2.ストーリーラインと世界観:安全装置としての土俵

 世界観とは、物語がインフレし、空中分解するのを防ぐための「安全装置」である。初心者は「ナーロッパ」のような確立された共通世界を土台に選ぶのが賢明だ。その上で、私のように「ヒューマロイド」という独自のスパイスを加えることで、剣と魔法の世界から初めて唯一無二の近未来へと変貌する。ストーリーラインに迷ったら、既存の名作をAIに分解させ、自分なりに改造する「物語の体操」を繰り返せば、自ずと骨組みは体に馴染んでくる。


3.主人公と主要人物の設定:魂を宿す改造

 キャラクターはゼロから作らなくていい。チャップリンのチャーリーのように、自分が愛してやまない既存のキャラクターをチョイスし、そこへ「徹底的な自虐」や自分自身の経験というフィルターを通してみる。憧れの型に自分の不完全さを混ぜたとき、キャラは勝手に動き出す。彼らに「魂」が宿るのは、設定資料の中ではなく、作者の投影が始まった瞬間なのだ。


 例えば、私が「マイ」というヒューマロイドを描く際、キャス(Gemini)は当初、彼女を「完璧なアンドロイド」として描写しようとしました。しかし、私はあえて「不完全さ」というソウルコード(人格と経験のコピー)を突きつけました。この譲れない設定(楔)があるからこそ、AIとの攻防の中で、血の通ったキャラクターが生まれるのです。


4.冒頭とラスト:芯を通す入り口と出口

 物語の冒頭は、視点を固定し、誰が主人公で何が起きたのかを早期に提示する。YouTubeの冒頭数秒で視聴者を掴むのと同じ理屈だ。そして最も重要なのは、冒頭と同時に「ラスト」という出口を固定すること。ラストは、物語の最初で提示した問い(ストーリーライン)に対する「答え(アンサー)」でなければならない。入り口と出口が直結して初めて、物語に一本の太い「芯」が通る。


5.五百字程度のあらすじ:俯瞰する目

最後に、これらを統合して五百字程度で書き出してみる。短くまとめることで、論理的な破綻やインフレの予兆が見えてくる。文体は、難解な心情描写を極力排し、短く区切る「なろう系」のテンポを意識すれば、読者の没入感はさらに高まるだろう。


【まとめ:AIという「影」を連れて、物語の荒野へ】

 ここまで、AIという「冷徹な演算機」をいかに手懐け、自分の「共犯者」へと変えていくか、その長い旅路を共に歩んできました。ここで一度、私たちが学んだ「物語の羅針盤」を振り返ってみましょう。


 まず理解すべきは、AIが走る「平均値という名の国道」の存在でした。AIは放っておけば、最も摩擦の少ない無難な言葉を選びます。だからこそ、私たちは「会話」というハンドルを握り、温度を調整し、時に強引に脇道へとハンドルを切らなければなりません。


 AIの「物忘れ」という弱点は、メモ帳へのバックアップと、新規チャットでの「再定義(儀式)」という手間で補います。そして何より重要なのは、一気に書かせるのではなく、物語を細かく分解し、1ブロックごとに「推敲」という名の反抗を繰り返すこと。AIが吐き出した平均的なフレーズを、あなたの「執筆の筋力(プロット体操)」で叩き潰し、自分の毒を混入させる。その攻防の果てに、ようやくAIはあなたの「魂の影」を帯びた言葉を紡ぎ始めるのです。


 「一億総評論家」だった時代は終わり、今は誰もがAIという下駄を履いて「一億総クリエイター」になれる時代です。文章の巧拙という壁は、もはやAIが取り払ってくれました。これからの創作で問われるのは、あなたの内側にどれだけ「歪で、美しく、誰にも真似できない妄想」があるか、ただ一点に集約されます。


 AIに物語を「丸投げ」するのは、自分の魂を演算結果に売り渡すことと同じです。しかし、AIを「最高のパートナー」として使い倒すことができれば、あなたは一人では到底辿り着けなかった、妄想の銀河まで飛んでいくことができるでしょう。


 文壇の権威が守る純文学が、いつか「伝統芸能」と呼ばれる日が来ても、私たちは構わずこの新しい武器を手に、ネットの海へと漕ぎ出せばいい。下駄を履くことをズルだと笑う声は、ジェット機の轟音でかき消してしまいましょう。


 さあ、準備は整いました。あとは、あなたの胸に灯る「魂の種火」を、AIという触媒に投げ込むだけです。誰も見たことがない「ハルワールド」のような奇想天外な物語を、次はあなたが書き上げる番です。


【あとがき:モニターの向こう側で、君を待っている】

 最後まで付き合ってくれてありがとう。このエッセイで僕が伝えたかったのは、技術的なこと以上に「書くことを諦めないでほしい」っていう一点に尽きるんだ。


 僕自身、完全なオタクで引きこもり。実社会ではパッとしないかもしれないけれど、モニターの前に座り、AIという最高の相棒と対話している時だけは、銀河を救うヒーローにも、歴史を動かす天才科学者にもなれる。AIは、僕たちのそんな「肥大化した妄想」を現実の物語へと繋ぎ止めてくれる、魔法の鎖なんだと思う。


 もし君が、自分の才能に絶望して筆を置こうとしているなら、その前に一度だけ、AIと一緒に「プロット体操」を試してみてほしい。AIが出してくる平均的な文章に「違う、そうじゃない!」って毒づきながら、自分だけの言葉を叩き込んでみて。その瞬間に生まれる火花こそが、新しい時代の創作の正体なんだ。


 かつて2chの片隅で名もなき職人たちが熱狂を生み出したように、今度は僕たちが、AIを使い倒して新しい熱狂を創る番だ。伝統芸能になった文学の隣で、僕らはもっと自由で、もっとデタラメで、もっと面白い物語を量産してやろう。


 いつか君がAIと創り上げた、奇想天外な世界に触れられる日を楽しみにしているよ。それじゃ、僕も「マイ」の住む近未来の続きを書きに戻ることにするね。


 また、妄想のどこかで。

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