謎の物体(?)「ていきけん」

なかむら恵美

第1話


小学校の2年生。

学校の授業で、国語の教科書に載っていた話に、不思議な感覚を抱いた。

「きつねの子の拾ったていきけん」

きつねの子供の3きょうだいが、主人公である。

お兄ちゃんと、お姉ちゃんと、坊や。

揃ってお使いに行った帰り道、道ばたで、坊やが定期券を拾うのだ。

(ていきけん?ていきけんって、何なんだ?)

「セルロイドの入れ物に入って」教科書にある。

(セルロイド?セルロイドって、何だろう?)

下部に描かれている挿絵は、藤城清治さんの作品だった。

影絵の世界だ。


幾度となく、思った。

(先生に、聞いてみようかな?)

セルロイドについても聞きたい。しかし、忙しそうだ。

途中まで一緒に帰るBFくん達に聞いてみた。が、こぞって皆々

「知らない」と言う。

思えば、彼らは自営業者の子供であった。

父親が家にいて仕事をする。=定期券を必要としない。故であろう。

(だったら)

普通の勤め人、ウチの父。お父さんにと思っだが、うやむやとなった。


問題解決。

目出度くわたしが「ていきけん」。

「セルロイドの入れ物に入った」定期券を拾わずに我が手にしたのは、高校に入った頃。電車通学となった為である。

(おおっ!)

これが「ていきけん」か。あの頃が甦る。

「セルロイドの入れ物」は、「定期券ケース」。

「セルロイド」ほほぅ。左側についているコレか。へぇ~っ。

初めこそ興奮。何度も出したり入れたりして楽しんだが、すぐ飽きた。

面倒臭い。

程なくしてそのまんま。「裸体のマヤ」ならぬ「裸体の定期」での使用だ。


水沢アキだったであろうか?

子供の時に父親に怒られた腹いせに、父親の定期券を自宅にあった庭の池に放り投げた強者は。

ものすごい行動力。庭の池がある自宅なんて、と思ってしまう。

さぞかし、社会的地位のある父親だったのであろう。経営者だったのかも知れない。

その後の父親の行動が、知りたいものですな。

もし、わたしが父親だとしたら?出勤前に一喝したいが、時間がなかろう。

「たまにはいいか」と、タクシー出勤にするが、さてはて水沢パパ。

アキ嬢パピーはどう対処しただろうか?

                                <了>

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謎の物体(?)「ていきけん」 なかむら恵美 @003025

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