勉強を始める前に、試験が終わる
荒川 蒼
第1話
同じ資格試験に何回も挑んでいる人間がいる。
私のことである。
毎回、試験が終わると「次こそは頑張ろう」
と思う。
落ちた直後のこの決意だけは、誰にも負けていないつもりだ。
試験の半年前になると、本屋に行く。
参考書と問題集を一式買う。
この時点で、すでに少し前に進んだような気分になっている。
家に帰ると参考書は部屋に積まれる。
開かない。
でも、そこにあるだけで安心する。
いつでも勉強してやる、という意気込みを一緒に部屋に置いている感じがするのだ。
三ヶ月前になると、
「そろそろやらないとまずいな」と思う。
積んである参考書を出してみる。
出すだけで、開かない。
一ヶ月前には、その参考書がどこに積まれているのか分からなくなり、探すところから始まる。
見つけて、目次だけを見る。
目次はいつも想像以上に分厚く感じる。
一週間前になって、ようやく勉強を始める。
そして、すぐに勉強量の多さに気づく。
だいたいここで、半分くらい諦める。
そして、なぜかこのタイミングで部屋の掃除を始める。床に落ちていたホコリを集め、不要な書類を整理する。
掃除は成果が目に見える。
やった分だけ部屋がきれいになる。
勉強よりも、ずっと手応えがあるのだ。
試験前日は、結局いつもの一夜漬けになる。
参考書を開きながら、なぜか漫画も一緒に開いている。
どちらも閉じられないまま、朝を迎える。
眠気と意気込みと、後悔を全部抱えたまま、
試験会場に向かう。
試験はマークシートなので「勘でなんとかなるかもしれない」と思う。
こういう時だけ、神様を信じる。
試験が終わると、帰りの電車でSNSを開く。
答え合わせをして、早速いくつもの間違いに気づく。だいたい、ここで静かに絶望する。
「もっと早くやっていれば、解けていたかもしれない」
毎回、そう思う。
そして来年は、ちゃんと早くから勉強しようと決意する。
この決意が、また次も本屋へ向かわせる。
たぶん来年も、同じ棚の前に立っている。
参考書を手に取りながら、
今度こそは、と考えている。
勉強を始める前に、試験が終わる 荒川 蒼 @arakawa_ao
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