学園冷蔵庫!

未川未練

第1話 登校だって印象深い!

 長野県松本市のとある場所に、デカデカとした建物がありました。

 林を切り開いて建てられた西洋建築のそれは、誰がどう見ても年季が入っていて、ロクな修理もしていないようです。かつて、この建物が小中高一貫の学園であることを聞いて、「これのどこが学園なんだ!どう見ても成金がイキって建てたテーマパークの名残りだろう!」と言った人がいるとかいないとか。

 そんな西洋建築物に向かって、一人の男子生徒がのろのろと歩いて行きます。

 とっても目立つであろう白髪は、少年漫画の主人公のようにトゲトゲしく、世の中を馬鹿にするような鋭い目が、目の前の西洋建築物…小中高一貫・天文崎学園を見ています。着ている学ランは、まさしく天文崎学園高等部の男子生徒の制服。

 彼は相変わらずのろのろと歩きます。細かく言えば、彼の他にも歩いている生徒は何人もいますが、その何人もの生徒は、明らかに白髪の彼を避けています。うっかりおしゃべりに夢中になって彼のそばにやってきてしまった者は、彼がいることに気付いた途端に、あからさまに彼から四メートル以上離れます。

 生徒達はコソ泥のようにコソコソ話します。

「おい、あれって蝉川せみかわ冷蔵れいぞうだよな…」

「間違いないわ。彼以外にあんな髪型してる人なんて、この学園には十六人くらいしかいないもの」

 結構いますやん。

「蝉川冷蔵といえば、あの…」

「ああ、体育祭を中止にしようとして先生を誘拐したんだろう?」

「やばいよな…」

 彼…蝉川冷蔵には、もちろん周りの生徒達のコソコソ話なんて丸聞こえです。彼の耳は自分の悪口にだけ敏感な地獄耳ヘ ル ・ イ ヤ ーです。

(バカどもめ、そうやってコソコソしていられるのもいまのうちじゃ。ワシがこの学園を支配したら、悪口を言った奴は即退学及び停学にしてやるわい)

 その若い見た目に対して老人のような言葉遣い。彼が女の子なら完全に萌えキャラです。

 その時、冷蔵の後ろからバタバタとした足音と共に、「先生!先生!」という叫び声が聞こえてきました。振り返ると、小等部の制服を着た男児二人と女児一人が、周りのコソコソ生徒達とは対照的に、笑顔で冷蔵に近づいて行きます。

「冷蔵先生!新学期おめでとうございます!」

「新学期最初の悪事はなんですか?良ければお手伝いさせてください!」

「是非お願いします!」

 口々に言う小学生三人組。

 先生先生と呼ばれていますが、別に冷蔵は教師ではありません。彼曰く、この三人が勝手にそう呼んでいるだけだそうです。

 冷蔵は彼らを見ると、面白そうに言いました。

「そりゃ嬉しいのう。けど悪事は大衆の前で計画するものじゃない。周りをよく見ろ。大勢の生徒がいる。せっかくの悪事がバレたら台無しじゃ」

「さすが先生!」

「考えることが違います!」

 賑やかな冷蔵達の様子を見て、生徒達はザワザワとざわめきました。

「小等部の子分までいるのかよ…!」

「さすが不良はモノが違うな…」

 そのセリフを聞いた冷蔵。さすがに憤りました。どの部分にかって?

(誰が不良じゃ…ワシは正真正銘「悪党」じゃい…!)

 と言うわけで、「学園冷蔵庫!」只今スタートです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

学園冷蔵庫! 未川未練 @3029

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ