男が俺しかいないマチアプを作ったら、お嬢様JDと合法JKが即堕ちして困ってます。

とくとろ

第1話

「なあ、あかり。流石にこのプロフィールはやばいって」


男子大学生の1人部屋。

その一角のパソコンに向かう美少女の背中越しに、俺こと、桑原佳太は愚痴をこぼした。


「うるさいわね、このプロフで何人目だと思ってんの」


「えーっと20人とか?」


「212人目よ!ほんと意味わかんない。架空のプロフィール作りとか頭おかしくなるんだけど」


カタカタと小気味良かったタイピング音に少し力がこもる。 


「あはは、まあバイト代は出すからさ……」 


「もう!アンタの頼みじゃなきゃ本当にやってないんだからね!ちょっとは感謝しなさいよ!」


そういう言うと、俺の唯一の友達は、エナジードリンクを一気に飲み干し、またパソコンに向き直った。


彼女の名前は、蓬莱あかり。

俺の高校からの同級生だ。

栗色のショートボブに、猫のような顔立ちは、明らかに美少女で、一時期男子からの人気を独占していた。


かく言う俺も告白して振られたしね。


「あー、もうなんで私はあんなこと言ったんだろ。こいつの行動力がイカレてるなんてわかりきってたのに!」 


「ちょっといきなり褒めないでよ。照れるじゃんか」 


「……もういい。めちゃくちゃなプロフィールにしてるんだから」 


「おい?!」


俺たちは今、あるプロジェクトに取り組んでいる。


『俺しかいないマッチングアプリを創ろう計画』

通称―俺マチ計画(あかりは言ってくれない)。その発端は一か月前の、授業中にさかのぼる。



「ちょっとこれ見てくれよ」


ある日の授業中、俺は丁度開いていた動画を巻き戻し、隣にいるあかりに手渡した。


「えーっと、マッチングアプリにおいて、男性は女性に対する評価が高いが、女性は低い。そのため女性はハイスペック男子に群がり、平均的な男性はマッチングできない……。へーそうなんだ。知らなかった」


興味なさそうにあかりが呟く。 


「これ驚愕の事実だろ。どうりで俺は全くマッチング出来ない訳だ」


中学は私立の男子校、高校はここにいるあかりに熱をあげ、ろくに恋愛できず現在。


大学ではマッチングアプリに勤しんでいるが未だマッチゼロ。

俺は彼女が欲しいのだ。

誰かに好きになって欲しいのだ。


「そうねー、良い言い訳が見つかって良かったわね」


スマホと一緒にきた棘が見事にブッ刺さる。

別にいい訳で言ったわけじゃないんだけどな、うん、ほんとに。


「ま、まあまあ。でどうやったら俺が余らずに済むか考えて欲しいかなって」


「……アンタが女性のふりして男性を通報しまくってハイスぺ男子を追い出すとか?」


気だるそうにあかりが言う。 


「そこまで性格悪くない」


「えーじゃあプログラミング書き換えて、ハイスぺ男子を表示しなくするとか?」


「それハッキングで捕まりそう」


「んー、ならいっそアンタしかいないマッチングアプリ作るとか?」


「それは………アリじゃね?」


「は?」


初めてあかりがこちらを向いた。

いつも鋭い目が、まんまると開いている。


「そうだよ!男が俺だけなら絶対余らないじゃん!」


「いや、え?冗談のつもりだったんだけど」


「俺、アプリ何個か作ったことあるしいけるよ!嘘から出た真ってやつだよ!」


「それ遣い方違う気が――」


「勿論あかりも手伝ってくれるよな!」


「え、ええぇ」


あかりの手を強引にとり、固い握手を交わす。

凄く苦笑いしてるけど、アイデア出したんだしもう船員だ。

周りからの好奇の視線も気にならないほどこの時の俺のテンションは上がっていた。



「私が言ったのは、男のアカウントがアンタ一人だけのアプリだったのになー」


予定数のアカウントを作り終え、くたくたになったあかりさん。

今はソファに寝転がり、好物のどら焼きを食べている。


「いやそれだとすぐ退会されたじゃん。やっぱりバリエーションは多くないと」


試作品第一号は、男が俺だけしかいないものだった。

宣伝もしたが、退会率が悪すぎて大失敗。


なので、完成版はサクラのプロフィールを作っている。


「中身は全員同じなんだけど」


「まあ相手には分からないし?」


「意気投合して会うってなったらどうするのよ」


「…………会う、?」


ドクっと胸が跳ねる。


「………アンタ彼女が欲しいのよね?なんか目的がマッチングすることになってない?」


「…………え、あ」


「はあ、どうなっても知らないから」


あかりの言葉に、サーっと熱が冷めていくのを感じる。

俺、マッチした後どうするつもりなんだ?

震える手でスマホの画面を確認する。

そこには既にリリースしたマチアプのアイコンがあった。

もうCMも打っている…………走り出してしまっている。


「と、とりあえず今日は解散しよう。うん、そうしよう」


「はぁ……あ、マッチしてる」


「え?!」


あかりはそう言って、パソコンを俺の方に向けた。

そこには安っぽい演出で『マッチング成立!』と表示されていた。


「これ、男性側のプロフィールって何?」


震える声で尋ねる。


「えーっと私が考えたやつね。旧帝大2年生、高校時代は甲子園に出場、今は塾講師のアルバイトで成績1位。アイコンは一応アンタだけど後ろ姿だけだし雰囲気イケメンに写ってるんじゃない?」


??????????????

頭の中に?が無限に浮かんでくる。


このスペック、俺と全く合致してない。


「あかりさん。俺のスペックを客観的に言ってくれます?」


「えーっと、桑原佳太、普通の大学2年生。高校時代は帰宅部で特に目立った才能なし。今はバイトもろくにせず少ないアプリ収入だけで食いつないでる。容姿は……普通?」


「全然合致してないじゃん!ヤバいって!」


「うーん、でも相手の方結構乗り気よ?話弾んでるし会いたがってる」


「なんでもう会話してんの?!」


「あ、会うことになった」


「は?!」


「うーん、ファイト!」


雑に投げつけられたスマホをキャッチして件のアプリを開く。

新規チャット欄には「会うの楽しみです!」とメッセージが来ていた。

急いでアイコンをタッチしプロフィールを開く。


名前)黒木春

19/大学2年

趣味)ピアノ 料理 野球観戦

理想の恋人像)無言の時間が落ち着く人、嘘つかない人

ひとこと!)不慣れなので優しく教えていただけると嬉しいです^_^


アイコンにはゆるふわパーマでどこが気品を感じさせる美少女が写っている。

この写真は夏祭りだろうか、浴衣着てるし。

 

「大学、福女?!あそこお嬢様大学だろ」


「しかも理想の恋人は嘘つかない人だって。いきなりアウトじゃん。どうするの?」


「え、え、アプリ消すとか」


「バカ言わないで会ってきなさいよバカ」


「いやいやいやいや何言ってんの?!」

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男が俺しかいないマチアプを作ったら、お嬢様JDと合法JKが即堕ちして困ってます。 とくとろ @tokutoro

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