俺の幼馴染は白衣の天使のはず

リラックス夢土

第1話



知宏ともひろ。お前の彼女と俺、寝たわ。お前の彼女っていい身体してるよな」


「はあ!?」



 俺は中学からの友人に彼女を寝取ったことを告げられて驚く。



「本気で愛奈あいなと寝たのか!? 雅人まさと!」


「ああ、こないだ愛奈ちゃんと知宏と俺の三人で飲んだ時にお前は先に酔い潰れちまっただろ? そしたら愛奈ちゃんが俺のこと誘ってきたからその場の勢いでヤッちまってさ」


「ま、まさか……俺が寝てる横で愛奈と……?」


「愛奈ちゃんも彼氏が寝てる横でヤッてることに興奮してたみたいだぜ。俺と愛奈ちゃんの身体の相性は抜群でさ。だから愛奈ちゃんは俺がもらうことにしたわ」


「なんだと! 愛奈は俺と別れるなんて言ってなかったぞ!」


「そりゃ、女から彼氏より彼氏の友人とヤッた方が気持ちいいから別れるってのは言いづらいだろ? だから俺が愛奈ちゃんの代わりに別れ話してやってるんだよ」



 雅人はニヤニヤ笑いながら俺を馬鹿にしたような眼で見る。



 愛奈がそんな女だったなんて……雅人のことだって友人だと思っていたのに……



 俺は信じていた二人に裏切られて怒りが頂点に達する。



「このクソ野郎! 許さねえええぇーっ!!」



 思わず雅人に殴りかかった俺だったが逆に雅人にボコボコにされてしまう。

 雅人は武術を習っていて学生時代はヤンキーに絡まれてケンカしても負け知らずだったのを俺は思い出す。

 


「がはっ! ぐううぅ……」



 地面に転がる俺を雅人は見下すように嘲笑う。



「知宏が俺に勝てるわけないじゃん。それじゃ、これから愛奈ちゃんとデートだからもう俺は行くわ」



 雅人がその場を去って行くのを俺は薄れていく意識の中で見つめていた。



 絶対に雅人も愛奈も許さねえええぇーっ!!



 そこで俺の記憶は途切れる。





「う~ん……」



 俺が目を覚ますと見知らぬ天井が見える。



「ここは……?」


「意識が戻ったみたいですね。ここは病院ですよ。道に倒れていたあなたは救急車で運ばれたんです」



 看護師に言われて俺は自分が病院にいることが分かった。



 雅人にボコボコにされて病院に運ばれたのか。

 まったくなぜ俺がこんな目に……



 悔しさに俺の目に涙が滲む。

 するとその看護師が俺に声をかけてきた。



「まったくたいしたケガじゃなくて良かったわ、トモくん」


「え?」



 俺はその若い看護師に「トモくん」と愛称を呼ばれて驚く。



「私のこと忘れちゃった? 幼稚園の時にいつも遊んでいた美波みなみよ」


「み、美波って……もしかしてみっちゃん……?」


「そうよ」



 みっちゃんはニコリと微笑む。

 美波は俺の幼稚園の時の幼馴染でいつも二人で遊んでいた。


 トモくんとみっちゃんと呼び合って将来結婚しようねって約束もしたことがある俺の初恋の相手だ。

 でも彼女が家の都合で引っ越してしまってから会えなくなっていた。



「私は今この病院で看護師として働いてるのよ。それにしてもトモくんがこんなケガするなんて何かあったの?」


「ああ……ちょっといろいろと……」


「愚痴なら私が聞いてあげるわよ。トモくんと私の仲でしょ?」


「う、うん……実は……」



 雅人にボコボコにされ愛奈に裏切られて弱気になっていた俺は再会した幼馴染の優しい言葉に縋る気持ちで雅人と愛奈のことを話した。



「そう。それは辛かったわね、トモくん。もうそんな二人のことは忘れた方がいいわよ。これからは私がトモくんの側にいてあげる」


「え? みっちゃんが……?」


「トモくんは約束を忘れたの? 私と結婚してくれるって言ってたじゃない。私、ずっとトモくんのことが好きだったの。私と付き合ってくれない?」


「お、覚えてるよ! 俺もみっちゃんのこと好きだし……弱くて情けない俺だけどいいの?」


「フフフッ、トモくんが弱いなら私が護ってあげるから大丈夫よ」


「そ、それなら、これからよろしく、みっちゃん」


「ええ、よろしくね、トモくん」



 微笑むみっちゃんの姿が俺には白衣の天使に見える。



「みっちゃんは白衣の天使になったんだね。白衣の天使のいる病院ならずっと入院したいかも」


「それはダメよ。トモくんは一日でも早く元気になってここを出ないといけないわ。病院は生きて出るか死んで出るか五分五分の世界なのよ」



 そうか。みっちゃんも大変な仕事してるんだな。

 それなら俺は一日も早く元気になってこの病院を退院しよう。





 その後、検査の結果、俺のケガはたいしたことがないことが分かりすぐに退院となった。

 みっちゃんとも恋人になって幸せな日々を送る俺がテレビでニュースを見ていると交通事故のニュースが流れる。


 その事故のニュースは車がぶつかって乗っていた男女二人が負傷して病院に搬送されたというもの。

 そして事故現場がテレビの画面に映されてぶつかった車を見たらその車は雅人が持っていた車だった。



 雅人の奴、交通事故でケガしたのか! ざまあねえぜ!

 もうひとりの女は愛奈かもしれねえな!

 二人ともそのまま死んじまいやがれ! アハハハハハハッ!!





 美波はいつも通りに病院で仕事をしていた。

 先日、交通事故で入院してきた男女のカルテに誤情報を追加しておく。


 これで後日、この誤情報によって二人の男女にな医療ミスが起こるはずだ。



「あの雅人って人が風邪でこの病院を受診した時に処方箋情報を書き換えておいたら思った通りに事故を起こしてくれて良かったわ。本当はその事故で死んでもらうつもりだったけどまさか私の病院に搬送されるなんてね。それももうひとりの憎い愛奈って彼女と一緒に。でもこれも神からの啓示だわ。トモくんが私を白衣の天使と言ってくれた通りに私は天使だもの。天使というのは死者の魂をあの世に連れていく存在でもあるのよ、トモくん。でも安心してね。あの二人の魂はすぐに連れて行くけどトモくんの魂は私が死ぬまで連れていかないから。愛してるわ、トモくん、フフフッ」





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