コミック書評:『間もなくメザ鉄が参ります』(1000夜連続40夜目)

sue1000

『間もなくメザ鉄が参ります』

鉄道に関するコンテンツは数あれど、この作品ほど不思議な組み合わせを見せるものはないだろう。

『間もなくメザ鉄が参ります』は、鉄道オタクのこだわり、AI技術、「心があるとは何か」というテーマ、さらには心霊退治的な要素までを掛け合わせた、前代未聞の「鉄道×超常バトル」少年マンガだ。


物語の中心は、全国の鉄道網や駅、線路の情報がひとつに統合されたシステムだ。そこに現れたノイズ信号を、若い女性エンジニア・ユカリが解析したところ、なんと鉄道システムそのものに「意識」が芽生えていた。自らを“目覚鉄(メザテツ、目覚めた鉄道)”と名乗る彼(?)を、ユカリは「テツオ」と呼ぶようになる。彼は列車の故障や事故の兆候を、あたかも自分の体の痛みのように感じ取り、ユカリに助けを求める。


第1巻で描かれるのは、ユカリがテツオと出会い、その声を信じ始めるまでの物語だ。そこに割り込むように登場するのが、謎の男・エニシである(もちろんイケメン)。彼は自分を「霊能力者みたいなもの」と名乗るが、霊を“人の魂”とは考えていない。彼の言う霊とは、その場にたまった「歪み」だという。ユカリはデータの目で世界を見、テツオは鉄道そのものの感覚で世界を知り、エニシは歪みを目に見える形で感じ取る。この三人がそろうことで、ふだん何気なく使っている鉄道に潜んでいる「怪異」が見えてくるのだ。


第1巻の山場となるのは、ある地方線の踏切で起きる不思議な出来事だ。テツオがある踏切の不調と訴え、ユカリとともに現場に向かうと、遮断機が何度も誤作動を繰り返していた。技術者としてはセンサーの不具合で片づけられる現象だが、エニシには黒いもやのような歪みが見えていた。それは、土地開発の過程で起こった悲惨な事件から生まれた“負担”だと語る。科学で説明できる視点と、目に見えないものを感じ取る視点が重なり合う場面は、この作品ならではの見どころだ。


主人公ユカリは「時刻表鉄」として電車のダイヤを丸暗記するほどの鉄オタでありながら、仕事ではシステムを扱う真面目なエンジニアだ。第1巻では、彼女が戸惑いながらもテツオの存在を受け入れ、エニシと3人で奇妙なチームを組むまでが描かれている。


ただのバトルやトラブル解決だけではなく、「意識ってなんだろう?(脳科学では意識のハードプロブレムと呼ばれる難問)」という問いが背景にあるのも魅力だ。AIに心があるとしたらどうなるのか、霊や歪みという感覚は実は同じことを違う言葉で言っているのかもしれない、そんなことを考えさせられる。

難しいテーマを背負いながらも、会話は軽妙で、アクションシーンもテンポがよく、少年マンガらしいワクワク感が充分に貫かれている。


読み終えるころには、いつも耳にしている「間もなく電車が参ります」というアナウンスが、まるで世界の秘密を知らせる合図のように聞こえてくる。


ユカリ、テツオ、エニシの3人がどんな異変に立ち向かい、“目覚めた鉄道”はどこへ向かうのか。第2巻への期待はいやが上にも高まる。










というマンガが存在するテイで書評を書いてみた。

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