麻雀アイドル!国士無双物語

平眈 みつき

麻雀アイドル!国士無双物語

むかしむかーし、ある世界では麻雀牌たちがNo.1アイドルを目指して、切磋琢磨していた。


その時代のトップアイドルは、2索、3索、4索、6索、8索、そしてリーダーの發で結成された「緑一色オールグリーン」だった。

彼らはその美しい見た目から、圧倒的な人気を誇り、多くの麻雀牌たちの憧れとなっていた。


ある日、緑一色たちの楽屋を1枚の麻雀牌が訪れた。あまり人気のない1索だった。

1索は、

「緑一色に入れてもらえませんか?」

と真摯にお願いしてきた。

リーダーの發は、いつものアイドル活動では見せない顔で、

「君のような不格好な奴が、うちに入ればグループが安っぽくなっちまうぞ」

とひどい言葉を浴びせていた。

しかし、めげない1索はその言葉を本気にせず、何度も楽屋を訪れ続けました。

1索の気持ちが変わらないのと同様に、發の言葉も同様に変わることはありませんでした。

そうしてついに、1索が楽屋を訪れることもなくなったのです。


1索はどうしたらいいのかわからなくなってしまいました。

自分はどうしたら売れることができるのかと悩み続けていました。

そんな中、ある日1索はある麻雀牌に出会いました。9索でした。

9索も同じく緑一色に憧れはあれど、仲間に入れない、自分は売れないと悩んでいました。

しかし彼は1索とは違いました。ある糸口を見つけたのです。

9索は1索に語りかけました。

「うちに来ないか?」

そう言われ9索に連れられやってきたマンションの一室にはなんだか親近感の湧く、4枚の麻雀牌がいました。

1萬、9萬、1筒、9筒でした。9索は彼らを紹介すると、

「うちらはまだ無名だが、『清老頭オールド・ヘッズ』っていうグループで活動しているんだ。今日俺は1索、君に会って、何かうちらに足りない物を埋めてくれる存在な気がしたんだ」

と明かした。1索にとって、思ってもない出来事だった。今の1索に断る理由はなかった。提案を快諾したのだ。


1索の加わった清老頭は人気を博した。

しかし、緑一色の高い壁には及ばなかった。そのうち彼らの人気は減退傾向にあった。

再び6枚は頭を悩ませる事態に陥ってしまったのだ。


そんな中、1索は緑一色のメンバー、2索、3索、8索にばったり会ってしまった。

1索は恐れていた、もう一度罵られることを。

そんな思いとは裏腹に、3枚から発された言葉は温かいものだった。

「1索君だよね?実は君に折り入ってお願いがあって」

「実は緑一色を脱退しようと思うんだ」

「發とは方向性が合わなくてね。君に言ったみたいに結構口が悪いんだ、あいつ」

1索は3枚から語られたことに驚きを隠せなかった。その一方で疑問が生まれた。

「緑一色を脱退して、僕にお願いすることなんてあるんですか?」

3索は口を開いた。

「清老頭に入れてほしいんだ」

嬉しくなった1索はすぐに他の5枚にその話を伝えた。

人気を博している緑一色のメンバーが入るとなれば、再ブレイクは間違いないと全員が睨んだ。


しかし9筒が言った。

「その3人が入るだけだとなんか一体感が落ちないか?」

1萬も、

「それは思った。その3枚に似た奴らを揃えればいいんじゃないか?」

1萬の発言通り、6枚でさまざまな麻雀牌に声をかけた結果、2索、3索、8索を含む、手頃な18枚のグループができた。1筒が名前を「純チャンズ」に改名した。

純チャンズは人気を博して、当時のトップアイドルまでレベルを上げていった。


その頃、残された4索、6索、發は毎日喧嘩をしていた。

緑一色は3枚体制になると成立しなくなり、一気に人気を落としたのだった。

横暴なリーダーの發を4索と6索は見放すようになり、ついに2枚は發から離れることを決意した。

しかし、純チャンズの天下で、2枚ではアイドルとして売れることはなかった。

そんな2枚に一枚の手紙が届いた。差出人は「Five of Redsアカウーガールズ」とあった。かつて緑一色がブレイクする前に、売れていた、2枚の憧れのアイドルだった。

手紙には、

「私たちと一緒にもう一度天下を目指しませんか?」

とだけ書いてあった。


目を輝かせた2枚はすぐに、Five of Redsのところに駆けつけた。

そこには似たような見た目の4筒、6筒や4萬、6萬がいた。

そこはやってきた、赤5萬、赤5索、赤5筒が口を揃えていった。

「この9人で新しいグループ『SHI•GO•RO三色シゴロサンショク』を結成したいと思います!」


3枚の宣言通りその9枚で新たなアイドルグループ「SHI•GO•RO三色」が誕生した。

圧倒的な美しさと、親しみやすさから庶民派アイドルとして名を馳せ、一気に純チャンズに迫る勢いになった。

迫る勢いだった一方で、なかなか超えることは出来ずにいた。

4索と6索は思案を巡らせた。

「どうしたら純チャンズを上回れるのか」

それしか頭になかった。どんどんと思考が腹黒くなることに気づかずに。

「なあ、元々はあの3枚を1索が唆したのが悪いんじゃないか?」

2枚の頭をそんな考えがよぎった。

4索と6索は2索、3索、8索の3人が1索に唆されたとずっと勘違いしていた。


ある日、4索と6索は偶然を装って2索、3索、8索の3人に接触した。

「もう一度、うちらと一緒に活動しないか」

と声をかけた。それに8索は

「今の仲間を裏切るわけにはいかないけど、君たちを裏切ってしまったのは事実だ」

と答えた。4索はそれに乗っかって、

「じゃあかつての『清老頭』のメンバー以外の人たちを連れてきて、一緒に活動しようよ」

と言ってしまった。8索は一瞬不思議に思ったが、すぐに快諾してしまった。


ある日から純チャンズの練習室には、12人のメンバーが来なくなり、かつての清老頭のメンバーしか集まらなくなった。

結果的に純チャンズは清老頭に名前を戻し、急激に人気を落とすことになった。

一方で新メンバーの加わった、SHI•GO•RO三色は「断么九Guysタンヤオガイズ」と名前を改めて、庶民派アイドルとしてさらに人気を博す結果となった。


1索たちは諦めきれなかった。

しかし、どう足掻いても、もはやあの大舞台に立つことはできないとわかってきた。

落ちこぼれた中、1索がやけ酒に走ろうと思って入ったバーでは、3枚組のアイドルが披露していた。

真ん中にいたのは、雰囲気は変われど、あの發であった。

あの毒々しい面影はなく、まるで新人のように切磋琢磨していた。

披露が終わって、發はすぐに1索に気がついた。申し訳なさそうな顔をしてこちらに来る。

「1索さんですよね、昔は本当にすみませんでした。あの時は思い上がってひどいことを言ってしまって」

「私こそ申し訳ないことをしました。かつてのメンバー3枚を奪って、グループを崩壊させるような真似をして。いつのまにかそいつらもいなくなって、6枚に戻りましたけど、最近はそろそろ引き時かと」

「そんな、もったいない!緑一色を解散した時に、純チャンズで頑張るあなたを見て、恥ずかしながら改心してここまで幼馴染の3人で『大三元ビッグ・スリー』として続けてきたんです。もしよかったら、一緒にやりませんか?そしていつか断么九Guysを追い越して、No.1に返り咲きましょうよ」

その純粋な言葉に1索は驚いたと同時に感心した。

こうして時を経て対立から協力に変わり、大三元と清老頭が合体し、「九種九牌ドリーム・スターター」を結成した。


九種九牌は、最初は断么九Guysの勢いに押しつぶされていた。

しかし、大三元時代に街で演奏を聴いていた客が、だんだんと結集し始め、ついには人気を博し始めた。

しかし、全員はそこまで若くなかった。挑戦を続けた日々と共に積み重なる年齢に、そろそろラストを感じさせていた。

「はあ、年いってアイドルできなくなるまでに、断么九Guysを変えたいんだけどなぁ」

1索が思わず言葉を漏らす。發がそれにこたえて

「1索くん、まだ諦めるには早いと言いたいところだけど、もう尽くせる努力はやり尽くしたよなあ」

というと、

「發さん!よかったら協力させてくれませんか?」

そう言って姿を現したのは東だった。後ろに南、西、そして北もいる。

「『四喜和ウィンド・コンパス』じゃないか!」

發は目を丸くした。

「四喜和って確か、緑一色が解散した後に、發さんがプロデュースしたグループじゃありませんでしたっけ?」

1索が思い出したように言う。

「ええ、うちらは發さんに色々助けてもろたからねー」

「何が役さ立でるごどがあったっきゃいづが恩返すすてって思っちゃーんだ」

「そげえしたらそげん話が聞こえてきて、何かしたかって思うたとです」

西、北、南が口々に言う。

「でも何をしようっていうんだ?」

發が聞き返す。

「そんなに長くやってもらう必要はなくてですね、」

「うちらと一緒にグループば組んだらどげんやろうかって言う話ばい!」

東と南が言う。

「いいんじゃないでしょうか?少し若い子を入れて、そっちの客層を取り込めば、No.1もなくはないですよ、發さん!」

1索も乗り気だ。

「やってみるか」

發のひとことでみんなの士気が上がった。


9枚のところに4枚が加わり、13枚となった「九種九牌」は「国士無双オールスターズ」と名前を変えた。

途端に、ファンの数は増えに増え続け、ついに断么九Guysを余裕で超え、13倍にも成長した。

しかし、時の流れは早い。

九種九牌のメンバーたちの体はそこまで動くものではなかった。

そうして、解散を決めたのだ。

ラストライブ。13枚の戦士たちは、輝いていた。


こうして国士無双の名は今や麻雀を知らない人も聞いたことのある単語にまで名を馳せた。


おしまい。

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