我々は宇宙人だ、と言ったら本物が来た件

あおい はち

我々は宇宙人だ(本物来た)

  日差しが窓から差し込んでくる夏のある日。

 俺は扇風機の前で、毎年の恒例行事を始めていた。

 きっと誰でも一度はやる、あの言葉だ。

『我々は宇宙人だ』

 扇風機があったらこの言葉を言う。これ、常識なんじゃない?

 毎年、この言葉を扇風機の前で言うのが恒例で、今年も変わらず言うことにした。――でも、今年に限っては違った。

『ほう。そなたも宇宙人なのか?』

 背後から、脳内に響くような声が聞こえた。

 え? いまの、俺じゃないよな?

 振り返ると、窓から「みんなが想像する宇宙人」の見た目をした生物が、こちらを覗いていた。

 大きく、くりっとした目はこちらの心まで覗いてきそうで、妙な力を感じる。

 三頭身くらいのグレーのそいつは、三本指の真ん中をこちらに向けて言った。

『何だお前!』

 少しのけぞりながらも、思ったことを口にできた。

 怖い。理由は分からないが、鳥肌が止まらない。

『そなたが言っただろ? 宇宙人だと。だから見に来たのだ』

 まじか……。本当に、あの言葉につられて来たのか。

 今年二十五歳の俺にとって、こんなの初体験だ。

 よりによって、なんで俺の家なんだよ。

『そなた、まさか嘘をついているんじゃなかろうな?』

 背筋が凍る。こ、殺される――。

 俺は思わず答えていた。

『嘘はついてない!』

『では聞こう。この地球という星は、侵略したほうが良いか?』

 なんで俺に相談するんだよ。役所に行け、役所に。

 宇宙人はおもちゃみたいな銃を窓へ向けた。

 一瞬で、ガラスが蝋のように垂れ落ちる。

 冷房の風だけが、だだ漏れになった。

『どうなんだ? 答えなさい』

 くっ。こうなったら――。

『いや、やめといたほうが良い。友好的にしたほうがメリットがありそうだ』

 一度だけ深呼吸。

 バレないように、落ち着いたふりで言う。

『そうか。では、そのメリットとは?』

『この地球には、たくさんの宇宙人が住んでる。交流できるぞ』

 よくそんな嘘が口から出てくるよな、俺。

『逆に侵略したら、すべての宇宙人から総攻撃に遭うぞ』

 脅すように声を低くした。

 宇宙人は静かに頷く。

『たしかに、あちこちで“我々は宇宙人だ”という声を聞く。つまり、それだけ宇宙人がいるということか』

 そう言うと、宇宙人はくるりと背を向け、片手を上げた。

『世話になった。侵略は見送ることにしよう』

 そのまま空へ飛び去っていく。

 やっと行ったか。ハッタリが効いてよかった。

 扇風機を消し、溶けた窓の液体を見つめる。

「これどうするか……」

 でもまあ、地球の平和のためには安いものか?

 さっきまで宇宙船がいた空は、何もなかったみたいに青かった。

 ……いや、なんで俺だけこんな目に遭うんだよ。窓代はもらわねぇとな。

 扇風機をもう一度つけ、誘い出すように言う。

『我々は宇宙人だ』

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我々は宇宙人だ、と言ったら本物が来た件 あおい はち @aoihati101

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