本を読みたいだけ。
@Abe_Aoi
人間とは例えるならなに?
「人間とは、例えるなら本みたいなもの」
年明け早々、今この瞬間にも誰かが考えつくような名(迷)言?みたいな事を私は考えつきました。
嫁は北海道の実家に帰省し僕は家にただ1人。
暇すぎて挙句の果てには初めてエッセイなんて書き出す始末。
何故おもむろに駄文を殴り書こうと思ったかというと、色んな理由がありますが1番大きな部分は「暇」だからです。あとすごくちょっとだけ自分の気持ちを大切にしたいと思ったからです。
拙い文章で形式もへったくれもありませんが僕と同じ暇な方はどうか読んでください。
「人間とは、例えるなら本みたいなもの」
厳密に言えば時間が経つと徐々に文字が浮かび上がるハ○ーポッターみたいな本だと思います。
表紙は人間の見て呉れを表し、ページ数はその人間の経験や人との思い出、考え方などを表します。
僕は普段ほとんど小説などの活字ばっかりの本は読みません。読んでも年に2~3冊です。
選ぶ時はランキング上位だったりなにか賞を取ってる本を選ぶ事もありますが、大体は表紙とタイトルに惹かれたものを選びます。
手に取って面白い、買ってよかった!と思うのは体感3~4割くらいといったとこでしょうか。
まぁ母数が少なすぎるので当てにはならない体感ですが…。
これが全くもって人間にも同じ事が言えるなぁと思うわけです。
・外見がいい人とデートしたら店員への態度が
終わってた。
・見た目は秀でてないけど誠実で一途に大事に
してくれる。
・第一印象悪すぎたけど話したらいいヤツだっ
た。
等々、まるで本みたいな人々の人間模様じゃないですか!
そして僕が慣れないことをしてまで聞いて欲しいのは「どうしても読みたい人間が居る」という事です。
みなさんには俗に言う「忘れられない人」はいますか?
学生時代でも大人になってからでもどんな時でも。
僕には居ます
僕の「忘れられない人」は別に元カノでもなんでもない、ただ中学の時に片想いで初めて叶わなかった恋の相手です。
結構ポピュラーな相手ですが、僕にとってはすごく思い入れがある大切な思い出です。
別に不倫がしたいとかいう話ではないのですが、嫁が居るのにいつまでも過去の片想いの相手を忘れられないのは世間一般的に見れば好ましくないとは思います。
でも変に正当化しようとすると余計気持ち悪いのでありのままの気持ちで書きます。
僕と「忘れられない人」は中学2年の時に同じクラスになった事がきっかけで関わりができました。
思春期真っ只中の時期、男女の成長にもはっきりと違いが出てくる時期でした。
そんな風に当てられていとも簡単に一目惚れしたのが僕です。
今まで好きな人ができなかった訳じゃない、けど確かに今までとは違う衝撃があったのを覚えています。
思えばその時初めて「忘れられない人」という本を手にとった瞬間でした。
夢中で読み進めたいのに、出てくる文字1つ1つをゆっくり待つしかないもどかしさ。
無理にページを捲ろうとすれば固く閉じてしまうかもしれない恐怖とそれでも捲りたくなる欲求。学校に来ればそこにある嫌でも惹かれてしまう綺麗な表紙。自分のものじゃないのに独り占めしたくなってしまう。
将来の夢や、やりたい事なんか何一つなくて自分から何かしようとしてこなかった僕が、初めて積極的にアプローチしました。僕の中で一番純粋で綺麗な思い出が沢山あります。
思うことはまだまだありますが長くなるのでこれくらいにしときます…。
中学2年生の間はずっとこんな感じでした。
ごちゃごちゃ言ってるけどベタ惚れしてましたね。
話は変わって僕と嫁の出会いは中学3年生の時でした。
「忘れられない人」とクラスが離れガン萎えしてる僕に、「プリントまだ?」と声をかけてきたのが今の嫁です。
僕と嫁は所謂、社会不適合者というやつでしてその片鱗は学生時代から見えていたと思います。
席が近くてなんとなく似た者同士だった僕たちはすぐに意気投合。最低な話ですが最初は「忘れられない人」の穴を埋める目的でお付き合いしましたね。
そんなんだから最初の交際は3ヶ月で別れましたね。中学生らしいです。
ですがそこで何か縁でもできたのか高校も同じでクラスも同じでなにかと2人になる事が多くて知らぬ間に嫁という本を読んでしまっていたんですね。これが思いのほか面白い!
小競り合いが絶えず、何度も嫁という本を投げ捨てるんですが続きが気になってまた拾い直して読んでしまう。不思議ですね。
「忘れられない人」はずっと片隅にはいましたが、読めない本より読める本をとりあえず読むのが当たり前といえば当たり前です。
そんなこんなで高校を卒業しました。
このタイミングで色々な事が重なり一度別れています。
お互い地元から出て東京に就職する事は知っていましたが知っていることはそれだけでした。
後で知ったことですがお互い社会不適合者っぷりが爆発して1年も経たずに仕事を辞めてましたね。
さらにお互い社会不適合者の分際でお金を稼ぐ野望はあったみたいで夜の仕事へ。
そこでまさかの再開という訳です。
地元で投げ捨てた本が巡り巡って大都会東京でまた拾う事になるとは…。
雇用の最後の砦みたいな夜の世界で、笑顔を貼り付けた怪しい奴や、シンプルにやばい奴、オラオラした奴らにもみくちゃにされながらお互い戦友みたいな意識も芽生え始めた頃にまた交際が始まりました。
それからしばらく経ち、幾度となく喧嘩し、何度もこの本を投げ捨ててやろうと思いました。
彼女を責めることもあれば、僕よりちゃんとした器の広い男と一緒になった方が幸せなんじゃないか?と、自分を責める事もありました。
正直よくあるお別れ直前の何の変哲もないただのカップルでしたね。
そんな折に、唯一連絡先を知っていた友達から連絡が来ました。
「久しぶりに地元で会おうよ」
僕は東京に出てきた時にほぼ全ての連絡先を消しましたが、唯一親友と呼べる友達の連絡先は残していました。
数年ぶりの地元に降り立ち、360°どこを見渡しても思い出が漂ってる風景の中に、少しだけ様変わりした店の看板やツギハギの服みたいに一部だけ舗装された歩道を見て若干の居心地悪さを感じながら、友達との待ち合わせの居酒屋へ。
会う前はなんとなくドキドキしますが会ってしまえば昔となんら変わらないノリでくだらない話をするもんですよね男なんて。
久しぶりに会った友達と居酒屋でするトークで昔の思い出話にならないわけがないじゃないですか。
「そーいえばお前ずっとあの子の事好きだったよな?」
「マジで大好きだった。今なにしてんのかなぁ」
「俺インスタ繋がってて今地元にいるらしいから連絡してみる?」
「え、マジで?」
あまりに突然過ぎて程よく回ってた酔いが一瞬で引いていくのを感じました。
もう二度と会うこともないと思ってました。夜の世界で社会的に見ればニートみたいな自分がどんな顔して会えばいいかも分かりません。
そんな僕に見向きもしない友人は、
「お、来るってさー」
「はぁ!?」
「20分くらいで着くってよ」
「…まじか」
ここから先しばらくはずっと脳内で会話デッキを構築してたので友人の話は何一つ覚えていません。
30分弱経った頃でしょうか。
「いらっしゃいませー」
店員の挨拶の方を向くと、確かに少しあの時の面影を残しつつちょっとだけ大人っぽくなった「忘れられない人」がそこにいました。
「久しぶりー!」
あの時と全く変わらない声を聞いた瞬間に記憶の片隅に大切にしまっていた思い出が溢れて自分がどんな表情をしているか認知できなくなりそうになりました。
それを必死に堪えながら
「久しぶりぃ」
なんか微妙に吐息混じりでキモかったと思います。
いつの間にか正面にいたはずの友人は僕の視界から消えて「忘れられない人」の姿と声だけがハッキリと鮮明に聴こえる。わけもなく、やかましい友人の笑い声を下げて「忘れられない人」の声だけボリュームを上げれるミキサーとかないかな?なんて考えてましたね。
本当に色んな事を話しました。
学生時代の話、仕事の話、恋愛の話、友達の話。
その度に中学で止まっていた本のページがすごい勢いで埋まっていくのを感じます。まるで風に吹かれたように。
でも空いた約7年の歳月でやはり自分とは違いすぎる生き様に時の流れを感じます。
それでも知りたくて、この時間が終わるのが惜しくて、もうそうそう会う機会なんてないでしょうからつい立て続けに質問しちゃったりして。
どう考えても7年の出来事をたった数時間で知ることなんて出来るわけないのに。
人間って生き物はつくづく自分勝手で欲深いと思います。少なくとも僕自身は自分勝手で欲深い人間です。
会えないと思っていた人に会えてスッキリすると思いきや、もっと一緒に居たいしもっと知りたいし喋りたいしでキリがない。
ましてや上手くいってないとはいえ彼女だっているのに。
理性ではこんな事を思っていました。
本能では、世間体とか最低だとか女々しいとかそんな事は全部どうでもいいから全て投げ捨てて「忘れられない人」を自分だけの本にしたい。
今すぐにでも手を引いてどこかに行ってしまいたい。
同じ人間の同じ脳みそでこんなに真逆の思考が起こっているなんて今の僕には意味が分からないですね。
楽しい時間は本当にあっという間でした。
あれほど読みたかった本がまたどこかに行ってしまう。あんなに見惚れてた表紙がまた少しずつぼやけてく日常に戻っていく。
ただ僕はずっとその本を読みたいだけなのに。
会計が終わって店を出て、友達と僕は同じ道を。「忘れられない人」は反対の道を。
ただ単純に家が逆方向なので何も変なことはないのですが、なんとなく僕が「忘れられない人」の本を読む事はもう無さそうな気がして少し歩きにくいようなそんな感覚です。
友達とテキトーな話をしながら歩いてると後ろから、
「またねー!!」
正直なんにもスッキリしてないし一人で車も通らない田舎の無音の夜道を歩きたい気分でしたが、友達と全力で
「またなーーーー!!!!!」
と叫びました。
それから半年程経って僕は彼女と入籍しました。
根本は圧倒的に社会不適合者なので当初の計画とは全く違う形でしたが、彼女と何とか折り合いをつけ、お互い社会不適合者から普通になる事を目指して頑張っています。
「忘れられない人」に会わせてくれた友人にはとても感謝しています。
会ってくれた「忘れられない人」にも。
世間的に良くない事だと思います。
でもやっぱり「忘れられない人」の本が読みたいんです。最後の「またね」という言葉が小さな棘のように僕の心に食いこんで取れません。
僕のように心にずっと「忘れられない人」がいて、それでも頑張って生きてる人達がいる。
そう思ってこの気持ちを大切に、嫁と生きていこうと思います。
この拙い文章を僕自身の本に刻みます。
最後まで聞いて頂いた方、本当にありがとうございます。
阿部 葵
本を読みたいだけ。 @Abe_Aoi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます