1-24 脱出
ヤルダバルトが時限爆弾を武器庫の可燃物付近へ仕掛け、アンクルコミーが辺りの様子を警戒する。ある程度人通りこそあったものの、武器庫内部へ人が来る様子はなかった。カルマリオンがハンドサインをアンクルコミーに送り、そのタイミングで二人は武器庫から抜け出してカルマリオンと合流した。次に彼らは食料庫へと向かう。その付近には帝国兵の詰め所があり、彼らはそこで次の任務まで待機しているように装う。――武器庫に爆弾を仕掛けてから三十分が過ぎた。けたたましい爆発音とともに激しい炎が武器庫から立ち上る。混乱に乗じて三人は食料庫に入り込んだ。ヤルダバルトは山積みされている食料の袋に手を突っ込み、その中身を口に含むとすぐに吐き出した。
「ペッペッ! マッズイなこれ、人が食うもんじゃねぇ。 魔竜の餌だ」
「包装からするに、これら全てがそうか」
「だろうな。こいつは大当たりを引いたらしいぜ、カルマリオン。全部焼き払っちまえばしばらくここから魔竜は動かせなくなる。補給が来るまで帝国の戦略を一気に遅らせることができるぜ」
「なら早速始めるとしようじゃないか。発破は私のスキルだったか、ボムトラップで良いか?」
「おう、それで火力も足りるはずだアンクルコミー。――よし、設置完了。やってくれ」
アンクルコミーが厚めの円盤のようなものを地面に設置された爆薬へ投げつけると、カチッという音と共に爆発し、爆炎が食料庫に積まれている袋に燃え移る。炎が広がっていることを確認すると三人は食料庫から詰め所に慌てた様子で駆け込んだ。
「やられた、食料庫だ! 食料庫も炎上しているぞ!」
ヤルダバルトの叫び声に帝国兵達は大慌てで食料庫へと確認に向かった。武器庫と食料庫からは黒煙が吹き出し、既に辺りの視界はかなり悪くなっていた。アンクルコミーがスモークボムを発動し、その効果によって周囲のエネミーはプレイヤー三人を見失う。彼らはそのまま混乱に乗じて基地をハイランド側の出口から脱出した。
ハイランド領と帝国前線基地との間にある山脈に掘られたトンネルの中、小さな炎の中で帝国兵の装備が燃やされていた。ヤルダバルト達三人は既に以前の装備に着替えを終え、潜入していた証拠を隠滅すべく使用していた帝国兵装備を破棄していた。帝国前線基地へ潜入する前、ウォルターからヤルダバルトへ渡されていた通信機器であるマナリンケージが反応する。
「こちらウォルター。そっちはもう脱出できたか?」
「おう、全員揃って無事だぜ。そっちはどうだ? 無事か?」
「ああ、お前達のおかげでな。こっちも目当ての資料は回収できた。今のところ連中の動きは俺達が以前に経験した動きと同じものの予定らしい。どうやら、連中が巻き戻りに気がついてどうこう、って展開にはならなさそうだ。これなら俺達『大地の盟約』主導で先手が取れる」
「流石だなウォルター。これでしばらく帝国と封神の方は任せちまえるな」
「安心して任せてくれ。それじゃあこれでクエスト達成だな、報酬を渡すとしよう」
ウォルターがそう言った途端に、三人の目の前にコンソールウィンドウが現れる。そこには「クエストクリア」の文字と共に、ウォルターから提示された通りの経験値と三万ダランが報酬として表示されていた。彼らがコンソールを操作して報酬を受け取ったその瞬間、それぞれの足元から光が放たれ、下から上へと全身を包んだ。レベルアップの演出が同時に十数レベル分上がった結果、エフェクトが重なることで本来は淡い光が広がる演出が、周囲をはっきりと照らすほど強い光になっていた。ヤルダバルトはレベル二十五になり蘇生魔法を習得し、範囲回復魔法や一度だけ詠唱を破棄して魔法を放てるスキルも同時に習得した。アンクルコミーもまたレベルが三十まで上がり新しいスキルを覚えたようだ。彼はメニューコンソールを呼び出し、スキルの確認とセッティングをしている。 カルマリオンはレベル二十八、ダメージ軽減スキルを習得できるレベルである。このレベルであっても変わらず道中のエネミー相手に正面から戦闘を行うには心もとないレベルではあったが、彼らがポートエスケンに向かった時の戦法をやるには十分なステータスを得られたことを三人は確認する。通信機越しから再びウォルターが声をかけた。
「どうだ、クエスト報酬は受け取れたか?」
「おう、バッチリもらったぜ。助かった」
「そいつは良かった。だがこれからが本番だということは忘れるなよ?」
「わかってるよ、俺達だってナーランドルートで時間を食われるのは避けたい。じゃあ気をつけろよ、ウォルター」
「ああ、互いにな、ヤルダバルト。皇都へ到着したら俺に連絡をくれ、クエストの達成を確認してその分の報酬を渡す。それじゃあな」
通信が終わると同時に炎が消え、その燃え殻が果たして元々何だったのか判別不能になっていることを確認すると、三人は改めてハイランドへ向けて歩き始めた。
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