【BL】南の呪術師
ありま氷炎
第1話 過去の恋
「お前が女だったらなあ」
私の好きな人の口癖はこれ。
その後に笑って、私の頭を撫でる。
「私が女だったら、結婚する?」
「もちろん。でもお前は男だ。だから無理」
彼は私の気持ちを知っている。
小さい時から私たちは一緒に遊び、学んだ。
彼は私の憧れであり、愛する人だった。
私たちは幼馴染で、生まれた年が同じ。
家も隣同士だから、自然と一緒に遊ぶようになった。
彼は本家の跡取り、私は分家の次男。
私が女であれば、五歳の時点で私は彼の許婚に指名されただろう。
私の顔は母に似て女性的、彼に可愛いと言われたくて可愛らしい着物を身に着けていた。
十二歳になり、精通が始まり、私はあまりの衝撃に泣いてしまった。
誰にも見られたくなくて、着物や敷物をすべて火の術で燃やしてしまった。
その頃から、私はどんどん男に近づいた。
彼もそうで、身長が伸び、男らしくなっていった。
私は「男」になるのが嫌で、食事を制限して、日の光から身を守った。
「椿。こんなことやめろよ」
私から彼を誘い、自慰行為を手伝う。
彼の気持ち良そうな表情を見るだけで、自分が特別に思えた。
だけど、十八歳になり、いよいよ彼は許婚を決めた。
そして私を拒否した。
「いや。離れないで。私が一番じゃなくていいから」
「だめだ。椿」
私が女だったら、彼の許婚になれたのに。
前々から私は自分が女になる方法を探していた。
「華能。私、女になる。だから、待っていて」
「そんな馬鹿なことできるわけがないだろう」
「できるわ。私の呪術は誰もよりも素晴らしいの知ってるでしょう?」
「知ってる。だけど。外見を変えるだけでは無理だぞ」
「あなたの子供が産めるように、女になるわ。だから待っていて」
「……わかった。お前を待つ」
華能は私に嘘をついたことはない。
だから私はそれを信じて旅に出た。
一年後、私は完璧な女になって戻ってきた。
魔獣と戦ったり、変な男に絡まれたり、散々な目にあったけど、私は女になった。
でも待っていたのは、大きなおなかを抱えた妻に寄り添う華能だった。
すでに祝言は挙げていて、離縁は難しい。
本家の決定だ。
私が去った後、華能は薬を盛られて、許婚の女を抱いたらしい。
頭を下げて謝られた。
殴ってもいい、殺してもいい。
だが、身重の妻には手を出さないでほしいと頼まれた。
私の好きだった華能はそこにはいなかった。
「どうでもいいわ」
私は家を去った。
そうして隣国に渡り、呪術を研究し、赤の呪術師と呼ばれるようになった。
私が調合した薬は完璧ではなかった。
完璧な女になれるが永遠ではなかった。なれる期間は長くて三か月。
なので、子どもを身ごもっても産むことはできない。
三か月後には男に戻るから、子どもを殺してしまう。
男になれば子宮は消えてしまうから。
華能は私の心に居続けた。
思い出の男として。
愛した男として。
なので、彼に似た男を見ると誘った。
馬鹿みたいに、どの男も皆女の私を好む。
男である私には食指が動かないようだった。
多津もそうで、最低な男だった。
従順な許婚がいながら、女を漁る。
抱きながら許婚のことを想う。
それなら許婚を抱けばいいのに、「彼女」は男だから駄目だそうだ。
馬鹿らしい。
私は心底こいつが嫌いだった。
だけどこいつとの体の相性はいままで最高で、顔も華能によく似ている。
性格や言動に目を閉じ、耳を塞げば、楽しめる。
私も、彼も遊びなのだから。
だが、こいつは結婚した後も私との関係を続ける気らしい。そして私が孕めば……
孕むことありえないが……。
「私とこいつの子」を跡取りにする予定だと言った。
まあ、私以外にもこいつは愛人がいる。
いずれからの愛人が子を成せばいいと考えているらしい。
最低な男だ。
顔は華能と一緒なのに、性格は全然違う。
体の相性はこんなにいいのに。
「あいつは俺にべた惚れなんだ。可哀そうに。女であれば抱いてやるのに。俺の子を孕ませるのに」
最高の気分で終え、寝台に寝っころがっているとあいつがぼやく。
いつもの聞き流しているのに、「女になれば」という言葉が気になった。
あいつ、多津の許婚は阿緒という名で、巳山の深窓の姫と呼ばれている。
気になって「彼女」のことを調べ、屋敷に忍び込んだ。
傍にいる従者がまず気になった。
あの瞳は恋する瞳だ。
従者は主人に恋心を抱いている。けれども、主人の阿緒は気が付いていない。
阿緒はとても素直な子で、可愛らしかった。
子犬みたいだった。
多津に馬鹿みたいに従順で、恋をしているようだった。
女になりたい。
「彼女」はそう願っている。
そうであれば……。
私は彼女の願いを叶えてあげることにした。
でもただでは叶えてあげない。
多津にもひどい目に遭ってほしいし。
私は計画を練って、多津を誘導した。
三人の旅を私は追いかけた。
阿緒の心が変わっていくのがとても嬉しかった。
彼の想いに気が付いてほしい。
多津など捨ててしまえ。
そう思い、三人を見続けた。
最後に阿緒が出した結論。
そして見つけた本当の愛。
私のように嬉しかった。
多津もどうやら少し変わり、私は彼が惜しくなった。
だって、彼以上に体の相性のいい男はいない。
顔は私の愛した華能と同じ。
だから、彼を飼うことにした。
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