新春を寿ぐ、冬の空

立花ひなた

新春を寿ぐ、冬の空

――真賀津町まがつちょうの新年は、初日の出が出てから始まる。

 なぜなら、町の掟に『夜に家の外に出てはならぬ』というものがある。

 ――破った者はみな、帰らぬ人となったからだ。

 そのため、この町の住民は日が昇ってから出かけるのだ。

 もちろん、この町に住む人外達も日が昇ってから出かける。

 ――この町に住む神の一柱ひとり禍月黒也まがつきくろやも例外ではない。

 

「んー良い天気、ですねぇ。新年早々良い初日の出ですね、姉さん」

 

 そう、後ろにいた女性に黒也は声をかけた。

 ――黒也の姉、禍月まがつきかすみである。

 彼ら姉弟は、真賀津町に祭られている福の神と貧乏神である。

 姉のかすみは福の神の一柱で、貧乏神である弟の黒也を尻に引いている。

 その為、黒也はヘタレな性格をしている。

 

「そうね、今年も良い一年になりそう! さあ黒也、仕事しに神社へ行くわよ」

 

「はいはい、分かってますよ。行きましょうか」

 

 そう言って、二柱は神社へと向かっていった。

 

 

 ――響冬夜ひびきとうやは、この町に住む小学五年生だ。

 彼は去年の夏から、黒也の営業している何でも屋で手伝いを始めてから迎える最初の正月なので楽しみにしていた。

 

「冬夜ー初詣いくわよー」

 

「今年はは禍月さんの所の神社に

 行くから楽しみだな!」

 

「うん! 黒也の兄ちゃんとかすみ姉さんが、神様の仕事してるところ見てみたい!」

 

 そう両親に声を掛けられて、駆け足で追いかける。

 禍月神社に到着したころには、大勢の人々で賑わっていた。

 

「うわーすごい混んでる!」

 

「人込みすごいわねぇ」

 

「黒也の兄ちゃんとこまで行けるかなー?」

 

「かすみさんの列は混んでるけど、黒也さんの列は空いてるからそっち並ぼうか」

 

「分かった!」

 

 そうして響家は、貧乏神の黒也にお参りできる列に並んだ。

 すぐに黒也の元にたどり着くことができた。

 

「黒也さんあけましておめでとうございます」

 

「響さん家の皆さん、あけましておめでとうございます!」

 

「黒也のにーちゃん、あけおめ!」

 

「はい、冬夜くんもあけましておめでとう」

 

 今年もよろしくねと、黒也が声をかける。

 すると、冬夜はキラキラと目を輝かせながらスマホを手渡した。

 

「黒也のにーちゃん、ソシャゲのガチャ回してくんない?」

 

 欲しいキャラがいるんだよ! と冬夜は鼻息を荒くして言った。

 

「わたしにそれ頼むのかい? 姉さんの方がいいんじゃ……」

 

「かすみ姉ちゃんこういうのやってくれなさそうだからさー」

 

「まあ、確かに。どれを回したらいいのかな?」

 

「えっとねーおれ、このガチャ回してほしいの!」

 

「分かった、どうなっても知らないからね」

 

「任せた!」

 

 そう言われて、黒也は正月ピックアップガチャを回した。

 そしたら、恒常キャラがすり抜けてきた。

 しかもSSRだった。

 

「ごめん、すりぬけちゃった」

 

「え」

 

「ほら、一応わたし貧乏神だろう? ソシャゲのガチャってピックアップキャラ来たことないんだよね」

 

「えーそんなあ」

 

「一応爆死とか物欲センサー司ってるから」

 

「そーなの!?」

 

「うん、だから頼むのおすすめしないよ?」

 

「ちぇー」

 

 冬夜は不満そうに言った。

 しかし、持っていないキャラだったので、少しだけ冬夜に福がきたのであった。

 貧乏神なりのささやかな幸運だった。

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新春を寿ぐ、冬の空 立花ひなた @HinataTatibana50

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