理性と科学を信じる検眼医が、人体が小宇宙へと変貌する「星宿病」に立ち向かうメディカル・クトゥルフだ。銀の砂を吐き、臓器が空洞化する悍ましくも美しい変異の描写が秀逸である。狂気を「進化」と捉える閉鎖的な街の価値観が、読者の倫理観を静かに侵食していく。救済者であるはずの主人公が次第に未知の真理に魅せられていく心理的葛藤と、緻密なゴシック的世界観が見事に融合した重厚な怪異譚である。クトゥルフ神話的恐怖や、耽美なゴシックホラー、医療ミステリを好む読者におすすめできる。