第6話 官僚ガーディアン

 榊原政一郎様・ひきいる大祭りスタッフ入場まで、あと二日。


細かい調整を行って尾形君と、お父さんの建築会社社長、

そして私と、それぞれに仕事をこなして行きました。


現場には一時、静華様専用のキャンピングカーでもという話が出ましたが本人が

「いらない」という事で臨時の事務所であるプレハブの二階を

祭師専用ルームという名目で楽屋に致しました。


私と尾形君はダンプカーやパッカー車、大型のゴミ箱に至るまで御札を貼って、しめ縄をして歩く作業を命ぜられ忙しくしておりました。


 他の作業員達も水道や排水の点検、消防と合同のお焚き上げ作業の打ち合わせや準備、神楽衆や氏子衆の楽屋設置その他の用意など、気が付く限りの準備に忙しく動き回っておりました。


「式さん、楽屋で静華さんが呼んでます」

尾形君に促され私はプレハブの二階へ行きました。


「失礼します」そう言いながら中へ入っていくと

臨時の畳の上に静華さんが長い髪を背中に垂らしコチラに背を向け、座禅を組んでいるようでした。


「こちらへ」静華さんが言うので畳の部分に靴を脱いで上がり

回り込むと、私は『ギョッ』としました。


静華さんは座禅を組み座っていましたが顔、両目とも白目をいて居たのです。

「えっ!」

すると・・・男の低い声で静華さんが喋りました。

「これは驚きましたか、私、静華の父、城一郎です。

私は既に、この世の者ではありませんが榊原一族、家族が心配なあまり

守護霊となって常に、こうして皆と共に過ごしております。

式さん、ちゃんとした御挨拶が遅れまして大変失礼いたしました」


何か変だなとは思っていましたが私は

「そういう・・ことでしたか・・・」と言ったきり

白目を剥き座っている静華さんと城一郎さまに対し言葉が続きません。


「驚かれるのも無理は、ありません。

このような姿、身内の者以外には見せられません、

静華には私が、和華には私の父にあたります剣一郎が守護霊として常に見守っております」


『身内か・・・この俺が・・・』

「あの・・・私、言いづらいのですが・・・」


「はい・・・あぁ・・不安ですか、恐怖心も湧いてますね。

無理もないです、短時間に色々な目に会うと、それに私たち一族の事なにも御存知ないのですから、さぞ気味が悪いでしょう・・・」


『やはり心は読まれています・・・思い出しました、そうか、それで時々、和華さんは昼夜構わずサングラスをかけていたんだな白目を見られないように』


「そんな気味が悪いなんて、先日の殺人未遂事件、いえ、その前の和華さんの儀式・・・・とても私のような輩が、どうのこうの出来るものではありません。

指示に従い出来ることをやるので精一杯です。

私など今でさえ何も考えないようにして無理に忙しくしてはいますが、まして熱を出しオムツをして寝込むなんて生まれて初めてです。

それで・・・」


話しているとプレハブの外で車が入ってきた音やドアを何回も開け閉めする様子が伺え

ガヤガヤと外が騒がしくなりました。

やがて階段を誰かが上がってきました。


―コンコン とノックがされてスーツ姿の男が入ってきました。

「失礼します」

細身のイケメン中年といったところでしょうか


眼光の鋭い彼は私たちに挨拶を始めました。

「やあ城一郎先生、静華先生、ご苦労様です。

あぁどうも、式さんですね、わたくし、こういうものです」


この人、白目の静華さんに驚きもせず、城一郎様だと知っていました。

『え?誰だろう・・・』


懐から取り出し私に差し出された名刺には

住所・代表電話番号が記載されており


国土交通省 保安部 特務課本部


本部長 菅原和茂


裏面には

総務省、防衛省、警視庁、神社庁 

特使・兼・政務官


とありました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る