第8話 命乞い

 テント小屋の裏側にはバリケードがあり細い抜け道があります。


近隣住民たちは、そこに集まって遠巻きに見学をしていました。


なんだか随分とひしめき合い集まっていますが警備員が警戒して尚且つ警察官の方々が赤い棒を持って笛を吹いています。


「撮影禁止です、撮影しないでくださいっ!

コラッ!そこ禁止ですよ、撮影禁止ですっ!」

と警戒していますが、どうなんでしょう・・・



西条先生が話しかけてきました。

「式くん、あの可愛らしい女の子は、なんなのですか」


「あハイ例の祭師様の、お一人です」


「えー?そうですか・・・あの子は今おいくつですか」


「えー多分10歳くらいかと思います・・・」


「では、まだ小学生・・・これは・・・警察には目をつぶっていただくしかありませんなぁ茂木くん」


「ハイ特例を認めるようにと警視庁より仰せつかっていますので大丈夫です」


「だそうです、式くん良かったですね」


「ハイそうでしたか、ありがとうございます、じゃ打ち合わせがありますので失礼いたします」

『感じの良い副署長さんだな・・・やっぱ西条先生、只者じゃないなぁ』


先生と話をしていた時テント裏にいた野次馬のなかに

両手を合わせ何か拝むようにしている人たちが数人おりました。


あまりに深刻な表情を浮かべる彼らは、ひょっとしたら大昔に此処にあったという火葬場を管理していた部落の方の末裔ではないかと

私の頼りない直感がひらめいておりました。


その周辺には時代遅れの平屋の長屋が数件残っていました。


 さて打ち合わせにと尾形君や社長のいる所へ向かうと

何やら和華さんが注文を出しています。


「身内は良いのですが無関係の方に我々の儀式は見せたくないのです、撮影されても困ります。

せめて、この護摩壇周辺の土地、向かい側と川のフェンスのところに

足場を二段重ねにして壁を造っていただき

応急的にブルーシートで囲んでください」


「ハイわかりました、いますぐ手配します」


「それと松ノ木に、うちのしめ縄と御札を貼ったのは誰ですか」


「あ、それは私が許可したのですが造園会社の頭領が、しめ縄と御札を見つけて枝払いするなら、そうしたいと言い出しまして・・あの、マズかったでしょうか・・・」


「いいえ正解です、それでは、木は根元と本体を残し頭から下まで全ての枝を払い、その枝はすべて30cm程度の長さに細かく裁断しておいてください、いまからお焚き上げします。

ブルーシートで目隠しが終わりましたら消防車のスタンバイお願いします。

救急車は今のまま待機させておいてください」


「ハイわかりました、では枝払い、すぐに作業はじめます」


「私は尾形お兄ちゃんとマルダおじさんとで護摩壇の組立に入ります、

何かあれば、その都度、指示させていただきますので、

よろしくお願いします、

じゃ尾形兄ちゃん、マルダおじさん、こっちに来てください」


ぼやっとしていた私に指示が出ました。


「あっハイ」

そして作業に入ろうとしていたとき背後でチェーンソーの音がし始めました。


尾形君が指差し私に見るように促すので指の方向を見ると

造園業の方達の胸の部分から眩い光が出ています。


「え、なにあれ?」


明らかにライトなどではない印象でした。

周囲を見てみると目隠しのための足場組立作業をしている人たちも

一人一人、

胸が光っています・・・御守り・・か?


そういえば和華さんが言っていました。

作業をする人たちは守護の法に守られ光となって

悪しきもの達が近づけない、善兵・善神になると・・・


『うわ、すごいもんだなぁ・・・』思わず見とれていると和華さんが


「マルダおじさんだって、今、光ってるのよ、私の父上すごいでしょ、ンフッ!」

と嬉しそうに笑いました。


そして和華さんの手には、あの黒い長いケースに入った

日本刀と白のハチマキが握られていました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る