星降夜譚

稲葉 すず

 夢を見た。夢を見た。


 夢の中で私は小鬼だった。常夜の森に住まう私は毎晩目が覚めると、近くの街まで食事に出かける。


 長い後ろ足でぴょんぴょん飛んでいけばすぐにヒトの街にたどり着いた。まあ、いつも最初の内はすぐに殺されてしまうのだけれど。


 たとえ殺されてしまっても、私は翌夜には森で目を覚ました。そうしてめげることなく、ひとの街に食事に出かける。道なき道を、長い後ろ足で、ぴょんぴょん飛び跳ねて。


 さて私の食事はひとと同じである。従ってひとの街の飯屋を片っ端から覗いて、ここぞと決めた店に通い詰めることにしていた。メニューの上から順に注文する。とても気に入ったものがあれば二度、三度と注文することもあった。


 そうして堪能している内に、私はまた殺されて森で目が覚める。


 無銭飲食では? と思うが小鬼に金銭の概念はない。なぜならその前に殺されるから。メニューに値段が書いてはあるのだろうけれど、小鬼は文字が読めないからそれは分からない。分かっていない。


 それに一度として料金を請求されたことはない。その前に仕留められたから。


 ちなみに美味しくなくてしょげたことも一度や二度ではない。小鬼に数という概念はなかったのでよく分からないけれど。その店には二度と近寄らなかった。あの美味しそうな匂いは何だったのか。納得は出来ていないが美味しくなかったのだから仕方がない。


 街中のお店を食べ尽くしたら次の街に行く。行ったことのある街と食べ終わった街はなぜか分かったし、新しい店が出来た時もなぜか分かった。謎の能力である。




 よく分からないけれど、なんとなく、楽しい夢であった。なんか、そんな記憶だけが、ふんわりと残っている。

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