地図をみる者たち
@AIokita
地図をみる者たち
乗り合わせた馬車の中で、数人の旅人たちが自慢の地図を見せ合っていました。ある者は「この地図のおかげで、何度も目的地に辿り着いた」と誇り、ある者は「この地図で多くの人々を導いてきた」と語ります。またある者は、平和な暮らしをもたらした地図を、ある者は先祖代々受け継いできた狩場の地図を披露しました。
その場に、まだ地図を見せていない者が一人いました。皆が気になって「君はどんな地図を持っているのか」と尋ねると、彼は何枚かの地図を取り出しました。でも、どれも迷った跡ばかりが書き込まれた、まるで子供の落書きみたいな地図でした。期待外れの内容に、皆はがっかりして「こんな地図、誰が見たって役に立たないよ」と笑いました。男は気にする様子もなく、静かに地図をしまいました。
その時です。馬車が橋から大きな河へと転落してしまいました。激流に流され、命からがら岸へ這い上がったとき、そこは見知らぬ土地でした。一人が「私の地図があれば帰れる」と広げましたが、そもそも現在地がどこなのか分かりません。他の者たちも自分の地図を頼りに進もうとしましたが、「いつもなら着いているはずなのに」と疲弊するばかりで、一向に道は見つかりませんでした。
すると、あの落書きのような地図を持っていた男が、木に登って辺りを見回し、「ひとまず、あっちへ行こう」と言いました。疲れ果てていた一行は、黙って彼についていきました。森を抜けて平原に出ると、男は地面に木の棒を立て、太陽と影の位置を確かめました。「今度はこっちだ」と、彼はあちこちへふらふらと移動します。
やがて、一行は見覚えのある道に出ました。「そうだ、ここなら知っている!」「ここからなら帰れるぞ!」と、皆は元気を取り戻して駆け出していきました。
男が一人で見送っていると、立ち止まった一人が「どうして君は、進むべき道が分かったんだ?」と尋ねました。
男は「いいえ、私はいつも進むべき道など分かっていません」とだけ答えると、またどこかへと歩いて行ってしまいました。
地図をみる者たち @AIokita
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