善意という侵入
@Y_M_
第1話:日常の静寂
第1章:日常の静寂
デスクライトの白い光が、机の端まで均一に伸びている。
時計の秒針が、規則正しく夜を刻んでいた。
モニターの前に座り、キーボードに両手を置く。
今日も過不足なく整っている。
少なくとも、見える範囲では。
画面右上で、通知がひとつ光った。
仕事に関する短い確認だった。
「例の件、進んでますか?」
問題はない。
そう判断するまでに、思考はすでに動いている。
内容を読み取る前に、頭の奥でプロトコルが立ち上がる。
発信源の特定。
文脈の照合。
優先順位の算定。
それは思考というより、呼吸に近い処理だった。
返信文を整え、送信する。
句読点の位置まで、違和感はない。
画面から目を離した瞬間、コーヒーに手を伸ばす。
カップに触れる。
まだ湯気は残っているはずだったが、すでにぬるかった。
……いつものことだ。
反射的に、次の作業へ意識が滑る。
癖のようなものだと、自分でもわかっている。
通知が、もう一度光った。
今度は内容を確認する前に、わずかな引っかかりを感じた。
その小さな光が、整然とした部屋の空気に、目に見えない歪みを加えたような気がする。
胸の奥が、ほんのわずかにざわつく。
大した負荷ではない。
処理不能でもない。
ただ、いつもより応答が遅れているだけだ。
頭の奥で、警告灯が点いた。
まだ弱い。
だが確かに、点灯していた。
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