第4話 魔術学園の入学試験を受けました

 翌日私はヨーゼフ先生に連れられて魔術学園に行くことになった。


 ヨーゼフ先生が言うには学園長が入学試験に合格しないと入学を認めないと言い張っているのだとか。

 まあ、入試を受けるのは普通は当然だから私もやぶさかではなかった。


「入試科目は何ですか?」

 私が無邪気に聞くと

「まず、魔力の量の測定と適性検査がある。これは問題ないだろう」

 私はヨーゼフ先生の言葉に頷いた。

 私はアンハームの街では母に次いで魔力量が多かったはずだ。王都ではどうだか判らないが、おそらくそれはクリアできる。


「それ以外に筆記試験がある。まあ、大した問題は出ないと思うが、それが出来るかどうかだな」

 ヨーゼフ先生の言葉に私は少し戸惑ってしまった。

 数学とか理科はおそらく前世の知識が役に立つと思うが、この国の歴史や地理は私は苦手だった。

 と言うか、父も母もほとんど教えてくれなかったのだ。特に母は貴族を嫌っており、全く貴族関係のことを教えてくれなかった。だからどの領地を誰が納めていてどのような特産品があるとか、この国の貴族関係の歴史のことをほとんど知らなかったのだ。もっとも前世の知識が入ってきたから公爵が一番偉くて次いで侯爵、伯爵、子爵、最後が男爵というのは判ったけれど、この国の歴史とかはほとんど知らなかった。


 冒険者になるには関係ないわという母の一言で終えられたし……


 まあ、ヨーゼフ先生が言うには筆記試験は形だけで魔術試験で大半が決まるとのことだったので、なんとかなるかと思った。

 試験に落ちたら、今度は学園長を脅そうと思ったのは秘密だ。



 その王立魔術学園は王都の郊外の林の中にあった。


 ツタの絡まったフェンスに囲まれた景色はほのかに既視感があった。前世やったゲームのどれかだろうか? 学校に行きたかったというのもあって、私は学園ものは結構クリアした記憶があるのだけど、結構どれも似通っていて、どのゲームかは判らなかったけれど……


 古びた門は年代を感じさせた。

 私はそのまま訓練場に連れて行かれた。


 そこにはいかがわしいところで出会った学園長始め、多くの先生方と野次馬の生徒達がいた。


「おい、あの子は誰だ?」

「1年の転入希望者らしいわよ。これから試験を受けて受かれば転入してくるんだって」

「どこの物好きか判らないけれど、我が魔術学園の試験は難しいからな。中々厳しいんじゃないか?」

「本試験よりも転入試験は難しいからな。あの子も可哀想に」

 生徒達の同情の声が聞こえてきたけれど、魔術の試験で不合格になる気はさらさら無いんだけど……


 確かに筆記試験は難しいかもしれないが、魔術試験は楽勝のはずだった。


「では、アマーリア君。まずこの水晶に思いっきり魔力を流してみてくれたまえ」

 神経質そうな試験官の先生が私に指示した。

「判りました」

 私は言われたように手を水晶につけると思いっきり魔力を流した。


 バリン!


 次の瞬間粉々に水晶が砕け散った。


「えっ」

 試験官の先生は唖然としていた。


「おいおい、あの子、一体何をしたんだ?」

「試験用の水晶を割るなんてどうすれば割れるんだ?」

 生徒達は騒然とした。


「ガイスラー君。ヒビの入った水晶なんて持ってきては行かんよ」

「学園長、お言葉ですが、ヒビが入っていないかどうか、試験の前に確認しました。ヨーゼフ先生にも見てもらいましたし」

「では、何故水晶が割れたのだね?」

 学園長は試験管の先生を睨み付けていた。


「ほっほっほっほっ、アマーリアの魔力量が大きすぎて、水晶が耐えられなかったみたいですな」

 ヨーゼフ先生が笑ってくれた。他の先生に何か指示する。


「ヨーゼフ先生、そういう事は前もっておっしゃってください!」

「そうだぞ。ヨーゼフ。この子は先生が連れてきたのではないか!」

「はっはっはっは、儂もアマーリアがここまで魔力を増やしているとは思っておりませんでしたからの」

 試験管の先生と学園長が文句を言うが、ヨーゼフ先生は笑って流してくれた。


「おい、あのアマーリアって子、あのヨーゼフ先生が連れてきたみたいだぞ」

「この国一番の先生に目をつけられるなんてどれだけ凄いんだ」

 私は皆の注目を浴びてしまった。あんまり最初から注目は集めたくなかったんだけど……貴族の令嬢たちに目をつけられたくなかったし……


「先生、これでよろしいですか?」

「ああ、ご苦労。これなら問題はあるまい」

 一人の先生が大きな水晶を持ってきてヨーゼフ先生に差し出した。先生はそれを砕けた水晶の代わりに壇上に置いてくれた。

「おい、何だ、あのでかいのは」

「さっきの水晶の倍以上あるぞ」

 生徒達が驚くくらいその水晶は大きかった。


「さあ、アマーリア、この水晶に魔力を流してみろ」

「判りました」

 私はその大きな水晶に魔力を流した。

 今度は大丈夫そうだった。


 ピカッ


 その水晶が真っ白に光輝いたのだ。


「きゃっ」

「何これ?」

「まぶしすぎるわ」

 周りの生徒達は思わず目をつぶっていた。


「ほおおおお、これは凄いの」

 ヨーゼフ先生はそれを見て笑ってくれた。


「属性は全属性ですな」

「全属性でこの光の大きさはクリスティーネ並ではないか!」

 学園長は驚愕していた。


 なんか母の名前が出てきたような気がしたけれど、気のせいだろう。母はあれだけ魔術学園を嫌っていたのだ。学園長と関係があるはずはなかった。


「学園長。魔力の適性がこれだけあればもう合格で良いのではありませんか?」

「そうですね」

「十分本学の学生たる資質はあると思えますが」

 ガイスラー先生の言葉に他の試験官の先生方も頷いてくれたが、

「いや、本学は魔術馬鹿だけでは入学資格を認めるわけにはいかん」

 学園長は頑なだった。

 ちぇっ、皆が認めてくれているのだから認めてくれたら良かったのに!


 私はその後三時間の学科試験を受けさせられた。


 数学と理科は簡単な問題が出たから百点近かったけれど、歴史と地理が壊滅的だった。

 歴史と地理は貴族の学問だと母が嫌っていたのが祟ったのだ。

 こんなところまで母の呪いが続いているなんて……

 でも、このテストを盾に入学に反対する学園長をヨーゼフ先生達が説得してくれて、私は条件付きでなんとか入学が認められたのだった。

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