親戚が亡くなりまして……

日月のぞみ

第1話

 杉山商事人材採用部では、今日もあるサボり魔が、休暇を入手するため、悪戦苦闘していた。


「部長、今、大丈夫ですかね?」


「ん? 今回は何だね」


「あ〜、その、え〜っと……あれだ! この度、親戚が亡くなりまして。葬式に行くためにも、お休みをいただきたく……」


「……何回死ぬんだ君の親戚は。今月だけで10人死んだぞ。何親等離れるんだ!」


「大体君はね、雑なんだよこの前なんか」



 ―二日前―


「今回は従姪孫じゅうてっそんが亡くなりまして…」


「お、おう。それは、大変…? だったな」



 ―現在―


「今まで普通の従兄弟いとこやおばあちゃんだったのに、殺しすぎて知らない単語が出てくるようになったから、こっちも1回検索するフェーズがあるんだよ」


「いやはや、申し訳ない」


「なんだよ従姪孫じゅうてっそんって他人だろ! 従兄弟いとこの孫って、親戚の集まりですら会わない奴じゃないか」


「それは、大家族なので、その……」


「いやいや、流石にもう無理だよ。本当だとしたら会社なんて、来てはならない! それは暗殺とか呪詛の類いだ」


「知らないですよ、死んだんだから!」


「じゃああれだ! 葬式に行くのを辞めるか、三親等までにしなさい。それ以降は四捨五入したら他人だよ、ほら!」


「……じゃあ、めいが亡くなりました」


「じゃあって何? 選んだ?」


「……いえ、別に死んだだけです。今」


「嘘つきの間だよ! あと人が死んで別にって事はないだろ」


「いや、四捨五入したら赤の他人ですし」


「……はぁ」


「そのうち君の家系絶滅するんじゃないのか?」


「しませんよ〜減ったら増やせばだけです」


「葬式で倫理観でも忘れてきたのかい?」


「もし減りすぎたら、十月十日に一人殺して合法休暇をもらいます」


「殺してんじゃねぇか!!」


「いやいや、あははっ、殺して……ないですよ?」


「嘘つきの間だよ! 言質があるよ!」


「あれ、そういや部長。知ってました? 部長って僕の遠ーーい親戚だそうで」


「……え?」


「いやね、家系図を調べる事ができるみたいで、洗ってもらったんですよ、業者に」


「……待とうよ、ちょっと」


「そしたらビックリ、部長の名前があるんだもんなぁ」


「いや、落ち着いて」


「部長は私の従伯父いとこおじだそうで」


「話せば分かる!」


「これで一日休めますね」


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親戚が亡くなりまして…… 日月のぞみ @hituki-nozomi

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