リストラされた元ゲーマーのおっさんは、転職先のプロゲーマー育成学校で教師になるようです~仕事はしっかりやしたいので、イケイケの若者を経験を生かし【教育】しようと思います~

堕園正太郎

第1話

「羽賀。お前はクビだ」


 突然そう告げられた。会社の社長室でのことだった。


「え……」

「我が社も世代の入れ替えをしたくてね」


 太った社長は、いくつも嵌めている金の指輪を眺めながら言う。


「そのために、上の世代を切り捨てることにしたのだ。君は社内でも評判が悪いそうじゃないか。そんな人間を雇い続けるより、若く希望のある社員が欲しいのだよ。新プロジェクトも始動しているしな!」


 あぁ、俺が上司の代わりに色々仕事をしている新プロジェクトね。ぼうっとした頭で思う。だが、脳内には、先ほどの社長の言葉が反響していた。


 クビ。クビ。クビ。

 俺が……?


「まぁそういうわけだ。羽賀君!」


 だがそんな俺の思いを余所に、社長は朗らかに席を立つと、こちらの肩を叩いた。


「新しい会社で、せいぜい頑張ってくれたまえ!」

「……」


 俺は徹夜明けのせいであいかわらずぼうっとしながら、その言葉を聞く。そのなかで、こう思った。


 あぁ、俺、明日から無職かぁ……。


♢♢♢


 俺の名前は羽賀泰作。おっさんの社畜だ。

 

 俺の人生は決して、大仰なものじゃない。平凡な学校へ行き、平凡に就職した。まぁ就職先では上司がまったく仕事をせず、俺がそれを肩代わりしていたわけなんだけど、そんなのどこにでもあることだろう? 


 唯一頑張ったと言えるものといえば、ゲームくらいだ。いちおう、色々なゲームでランク上位を張っていたことがあり、それがちょっとした誇りだった。だが、そんなもの、社会に出たら何の価値もないわけで、そのせいで、大した働きもできなかったのか、こうして無職となってしまったわけだ。


♢♢♢


「これからどうしよう」


 昼下がり。会社から放り出され、人の行き交う街中にあるベンチに座って呟く。


「無職で、年俸制だったから退職金もないしなぁ……」

 

 それに、親のゴタゴタもあって貯金もない。これでは路頭に迷うこと必須だ。


「……」

 

 街行くスーツのひとたちを見る。いいなぁ、と声が漏れた。彼らには会社がある。行くべき場所がある。それ比べて俺は、クマのできた、死んだ目をして、働く場所を失ってしまったのだ。


「ほんと、これからどうしよう……」


 顔を上げる。広告があった。ゲームの世界大会が、もうすぐ開かれるらしい。著名なプロゲーマーの顔が、誇らしげに掲げられている。いまや、Eスポーツは若者の

憧れ。社会的に認知される、一大産業だ。


「ゲームか……」


 ふと、青春時代、ゲームに打ち込んでいたころの記憶が蘇った。何度も徹夜し、腕を磨いた。強敵に勝ったときの心地よさは格別だった。もっとも、その頃はまだEスポーツ業界はまだ成熟していなかったため、そちらの道に進むつもりもなかったのだが。 


「産まれる時代が違ったら、俺もそっちで頑張れたのかなぁ」


 いや、結局、無職になったのだ。

 だったら、若い頃、リスクを冒してでもその業界へ進むべきだったか。


 だが、考えても仕方がない。

 現実、俺はただのおっさん。過去は変えられない。


「……このまま俺、路頭に迷うのかなぁ……」


 だが、そこでスマホが震動した。会社からだろうか。耳に当てる。


「は、はい、もしもし? 羽賀ですが……」

『あ、羽賀君!? 良かった! 繋がって!」

「……?」


 女性の声だった。誰だ? しかしどこかで聞いたような――?

 だが、相手はこちらの困惑を知らずに、こう言った。


『突然だけどさ、私とゲームしない? 久しぶりに!』

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