おっさん剣士、異界覇道編

塩塚 和人

第1話 異界への扉


秋山次郎は隣町のギルドで、

今日も日常の雑務を片付けていた。

冒険者としての名声は十分に広がり、

若い冒険者たちから尊敬を受けていた。


だが、心の奥底では退屈さが膨らむ。

日々の依頼は簡単な討伐や護衛ばかり、

剣士としての腕は鈍りつつあると感じていた。

「まだ、俺の力はこんなものじゃない…」


そんなある日、ギルドの掲示板に古代遺跡の調査依頼が出た。

遺跡は町の北方、森を抜けた先の丘陵地帯にあるという。

「面白そうだ。久しぶりにワクワクする依頼だな」

秋山は自ら手を挙げ、調査の準備を始めた。


丘陵地帯に到着すると、そこには見慣れない石造りの門があった。

他の冒険者たちが足を踏み入れた形跡はなく、

苔に覆われた門は古代からの眠りについているようだった。

秋山は慎重に周囲を観察し、手で触れてみる。


「…これはただの遺跡じゃないな」

手に触れた瞬間、門が微かに光を放ち、

空気が震えるように揺れた。

次の瞬間、秋山は強い吸引力に引かれ、足元が崩れた。


気が付くと、見知らぬ霧の中に立っていた。

視界は霧に包まれ、地面の感触は湿った土。

周囲に目を凝らすと、迷宮のような岩と樹木が入り混じる景色。

「ここは…一体、どこだ?」


足元を確かめながら歩き出すと、遠くで小さな光が揺れている。

好奇心に駆られ、その方向へ進むと、

小さな泉のほとりで一人の少女が立っていた。

銀色の髪、透き通るような青い瞳。


「あなた…誰?」

少女は警戒した声で尋ねる。

「秋山次郎だ。異界…かな、ここは」

秋山は状況を簡潔に説明した。

少女は少し考え込み、そして言った。


「私、リラ・ヴェルデ。ここは霧深い迷宮層、異界の一部よ」

秋山は眉をひそめ、慎重に周囲を見渡した。

「異界…俺が来たのか。なるほど、これは新しい戦いになりそうだ」

リラは静かに頷き、秋山に案内を申し出た。


迷宮の道を進むと、時折奇怪な魔物が現れる。

秋山は身体強化のスキルを発動し、筋力と反射神経を強化。

戦術洞察の力で敵の動きを解析し、一撃で制圧した。

リラもその戦いぶりに目を見張る。


「あなた…すごいわ」

「歳は食ってるが、まだまだ衰えてない」

秋山は苦笑しながら応える。

二人は協力しながら迷宮を進む。


迷宮の奥には古代遺跡の入り口が待っていた。

石の扉には複雑な紋様が刻まれ、触れるだけで微かな魔力が伝わる。

リラは手をかざし、古代文字を解読しようと試みる。

「ここを開くには、二人の力が必要ね」


秋山は身体強化で力を最大限に高め、

扉の石を押すと、ゆっくりと扉が開いた。

内部からは冷たい空気と、微かに光る霧が漏れ出す。

「行くぞ、リラ。新しい冒険の始まりだ」


扉を抜けた先、霧の向こうにはさらに深い迷宮が広がる。

未知の魔物、古代の罠、そして天空都市層への道…

秋山は心の中で決意する。

「この異界、俺が制する。年寄りだからって侮るなよ」


リラも小さく笑い、秋山の横を歩いた。

霧深い迷宮層での、長い冒険が始まろうとしていた。

二人の影が、霧の中に溶け込むように進んでいく。

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