友は遅刻を庇う
ラーシャはそっと教室の扉を開く。
教卓にはもう担任のフラウがいて、話をしている。
みんな真剣に話を聞いてる…。静かに入れば大丈夫…。
人が一人入れるくらい扉を開くと、
自分の席である窓際の一番後ろまで、フラウに姿を見られることなく辿り着ければ、怒られないはず−−
「ラーシャ。今日は明日のために渡すものがあるから早く来るように言ったの覚えてなかったのか?」
「!?」
突然、声をかけられ驚いて立ち上がると、クラス全員の視線が自分に集まり、ラーシャは顔を赤くする。
「いや…あの、すみません」
ラーシャが謝ると教室がクスクスと、小さな笑い声に包まれる。
「全く…。そんなんで明日の試験大丈夫だと思っ…」
その瞬間、フラウの小言を遮るように教室の扉が勢いよく開き、全員の視線がそちらへと向く。
教室は一気に、しんっと静寂に包まれた。
ラーシャよりも遅れて入ってきたのは、先に行ったはずのセルジュだった。
「セルジュ、なんで…」
驚くラーシャに、セルジュは何も言わずに自分の席へと向かいそのまま座る。
セルジュのその態度にフラウが眉間に皺を寄せる。
「セルジュ、何か言うことは?」
「…」
「どうして、今日は早く来るように言ったのに遅刻した?」
「別に」
全く悪びれることなく受け答えするセルジュについにフラウがワナワナと震え出した。
「お前な…!自分が悪い事しているのに、なんだその態度は「先生!!!渡すものってなんですか!?せっかく早く来たのに、お説教してたらいつもと同じ時間になっちゃいますよ!!」
フラウの言葉を遮って言ったのは赤銅色の髪が目立つソルという少年。
ソルの言葉に隣に座る美しい栗毛色の長い髪を持つ少女、ニアが頷いた。
「そうですわね、頑張って早起きしたのに無駄になってしまいますわね」
二人の言葉に教室が一気に騒がしくなり、フラウは盛大なため息をつく。
「わかった、わかったから!…ラーシャ早く席につきなさい」
「はーい!」
セルジュのおかげで忘れられていたラーシャは、すぐに自分の席に着くと、自分の前と横に座る二人にお礼を言う。
「ありがとう!助かった!」
「全く、手のかかるやつだな」
「私達のおかげというよりは、あんな態度をとって入ってきたセルジュのお陰ですわね」
ニアの言葉でラーシャはちらりとセルジュの方を見る。
私を置いていったのに…。まさか、私が来るのを待ってから後から入ってきたとか?
「まさかね…」
「どうした?急に」
ソルが変なモノを見るような顔で振り返ってくるので、ラーシャは笑顔で、なんでもない、と首を横に振るとフラウの話に耳を傾ける。
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