朝から小言
日の出を見ていた二人は、風が吹き同時に身体をぶるり、と振るわせ顔を見合わせて家の中へと入る。
中ではテキパキと朝食をテーブルに並べる祖母の姿があった。
「ばあちゃん、ただいま」
ゼンの言葉に祖母はお皿を並べている手を一度止めて、微笑む。
「おかえりなさい、ゼン。お疲れ様。ご飯まだでしょう?食べてから寝なさいね」
「ありがとう」
「アイシャも。お疲れ様」
【シューリカ様、ありがとうございます】
ゼンの肩の上でアイシャは頭を下げる。
ラーシャとゼンの祖母であるシューリカは、今はこんなに穏やかな人物だが数十年前は全くの別人だった。
竜の国が誇る最強の女竜騎士、白竜に跨がる鬼神。
そんな異名を持つシューリカをこの国で知らぬ者はいない。
「さてと、朝ごはんにしましょう。ハクレン、できましたよ」
シューリカの呼びかけにずっと部屋の隅の籠の中で丸くなって寝ていた白い竜がゆっくり動ごき彼女の肩に乗り大きな欠伸をする。
【爺様、おはようございます】
アイシャの挨拶にハクレンは白い息を吐き出して応える。
「ハクレンってば…ちゃんと挨拶なさい」
シューリカの小言をハクレンは気怠そうに聞き流す。
ラーシャはシューリカの肩にいるハクレンの頭を撫でてから席に座る。
「ハクレンは無口な竜だからしょうがないよ」
「ジジィだしな」
ゼンの一言は余計だと言いたそうにハクレンが睨む。
三人と二匹が各々の席に着いたところで、朝食がようやく始まる。
「そういえば、ばあちゃん。ラーシャがまた井戸に落ちそうになってたぞ」
「ゼン兄!」
「また?ラーシャ、気をつけなさいとあれほど言ったでしょ」
シューリカに注意をされてラーシャは恨めしそうにゼンを睨んでからため息をつき、ごめんなさい、と謝る。
「瞬きをしてるつもりなのにそのまま目を閉じちゃうんだもん」
「だから、早く寝なさいと言っているでしょ」
「わかってるけど…」
スープに浸したパンをラーシャは口の中に放り込み、ゆっくり咀嚼する。
「明日試験なのに心配だわ」
シューリカは頬に手を当ててため息をついた。
その一言で、ラーシャは慌てて口の中のものを飲み込むと口を開いた。
「大丈夫だよ!私だって十歳だよ?ちゃんと竜と契約できるって!」
竜の国では、十歳になると生涯のパートナーとなる竜を探し出し、契約する試験が行われる事になっている。
そして、その試験はいよいよ明日へと迫っていた。
試験の制限時間は一日。
たった一日で、広大な竜の住む森の中に入り相棒となる竜を見つけ出さなければならない。
出来なければ来年にもう一度試験を受けるか、あるいは竜との契約自体を諦めるかを決めなければならない。
人生を決めると言っても過言ではない重要な試験ではあるが、不安よりもラーシャは期待に胸を膨らませていた。
絶対に、最高の相棒を見つけ出してやるんだから。
心の中で意気込んでいると、そんなラーシャにゼンが水を差す。
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