英雄最高?

俺はミーナから聞いた話を整理するため、

一度寝室に戻った。

……でかい。

触り心地のいいキングサイズのベッド。

大の字になって倒れ込む。

はぁ……。

えーと、さっきの話を整理しよう。

ここはアルカニア帝国。

俺はバスタル。

そして――英雄。

……あれ?

アルカニア帝国って、

あの p.v詐欺映画 に出てきた国じゃなかったか?

バスタルは最後に出てきた黒ローブだな

点と点が、ゆっくり線になる。

確か映画のラストはこうだ。

――戦争は終結。

――アルカニア帝国は勝利。

――七英雄が誕生。

――バスタルは英雄となり、

  屋敷を与えられ、

  幸せに暮らしました。

……。

やっば。

分かっちゃった。

この屋敷、戦争で英雄になった報酬だ。

つまり、俺は七英雄の一人。

「……おぉ」

思わず声が漏れる。

俺、すげぇじゃん。

……七英雄って何かは知らんけど。

でも確定した。

俺は紛れもなく 英雄バスタル だ。

そしてこの屋敷も、俺のもの。

英雄の財産も俺のものだ

やべぇ。

俺、英雄じゃん。

楽に生きられるやつじゃん。

つまりだ。

ミーナが生活面を全部見てくれて、

この屋敷に住んで、

たぶんどこかに財宝もあって、

俺は優雅に――

「やっべ……」

心臓がドクドクし始める。

「やっべ、俺……勝ち組じゃん……」

異世界ライフ、最高では?

俺はこの世界で、英雄として気楽に生きる。

そう考えた瞬間、

不安がすっと消えた。

はぁー……最高。

俺は年甲斐もなく、

ベッドの上で飛び跳ねた。

異世界!

美女!

魔法!

英雄!

やっほー!!

とんとん。

ノックの音。

扉が開き、ミーナが入ってくる。

「……何をしているんですか」

ベッドで跳ねる俺を、真顔で見ている。

……まずい。

でも俺は英雄バスタルだ。

これからは“それっぽく”振る舞って楽に生きる。

「ミーナ。

 これは特訓だということが、分からないのか」

……。

あ、これ、ミスったかも。

「……すみませんでした」

ミーナは深く頭を下げる。

「私には特訓とは分からず……

 年甲斐もなくはしゃぐ、中年にしか見えませんでした」

めちゃくちゃ見えてるな

「私の目は、まだまだ節穴ですね」

いや節穴どころかいい目してるよ

てか恥ずかしいよ、ふつうに今の見られたの

でも俺はバスタル。

バレてはいけない。

「まだまだだな、ミーナ」

……我ながら痛い。

「……わぁ」

ミーナの表情がぱっと明るくなる。

「記憶は、戻ったんですね!」

え?

「あ、いえ……その……」

今のバスタルぽかったんだろうか

てか、、チョロいなぁ。

なりきり、いけそうだ。

俺はこの世界で楽に生きる。

そのために、絶対にバレないようにする。

「で、ミーナ。

 なぜこの部屋に来た?」

「あ!そうです、バスタル様!」

ミーナは思い出したように言った。

「お仕事です」

……仕事?

英雄に?

「え、英雄って仕事あるの?」

俺は素に戻り聞いてしまった

ミーナはあまり気にしていない

それよりも

俺の中の“英雄像”が崩れ始める。

英雄って、

戦争終わったら財産もらって、

豪邸で優雅に暮らすもんじゃないの?

「断れないのか?」

「……それは無理ですね」

ミーナは当然のように言った。

「英雄ですから」

……英雄ですから?

どういう理屈?

俺は何も分からないまま、

仕事へ向かうことになった。

――異世界ライフ、

思ってたのと違うかもしれない。

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