ただ、君に
渚乃雫
それが降り積もるから。
ただ君に会いたいから
走った。
息があがるまで
血の味がするまで
君のことを、視界に入れたくて
ただ走った。
君の下の名前も、知らないけれど
それでも、
君のことが好きだと、胸が叫んでいたから。
「…………っ」
はぁ、はぁッ、と息があがる。
うまく息が吸えなくて、思わず、すぐ後ろにあったガードレールへ寄りかかって、顔を上へと向ける。
「………………あ」
こんなにも、空が綺麗に見えたのは、いつだったのか。
こんなにも、空が青かったのは、いつからだったのか。
こんなにも、君への気持ちが降り積もっていたのは、いつからだったのか。
分からない。
覚えていない。
けど。
ーー 「大丈夫ですか?」
あの日、君がかけてくれた言葉が、僕を突き動かすから。
「大丈夫」
大丈夫だ。
ーー いらっしゃいませ
君が、そう言って振り向くまで、あと、
「あの、大丈夫ですか?」
「オゥわぁ?!!」
「わっ?!!」
「あッ」
ずるり。
思わず出した大きな声と共に、肩が跳ねたせいで
ゴッ
「イッ?!」
ガードレールに乗せていた手が滑り、恥ずかさで泣きたくなるくらい、僕は格好悪く尻もちをついた。
格好悪くて、うつむく僕の鼻先を
青葉の香りが、ふわりと過ぎった。
ただ、君に 渚乃雫 @Shizuku_N
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