祐都悲哀 〜正気 Not Found〜
WARATTA
Season❶
第一話 ハルが来た!
??:うわー!初日で遅刻だー!うわー!
4月12日 08:30
ある晴れた春の日、
先生:隣の街から引っ越してきた
ハルは疲れが取れないまま、
ハル:よ、よろしくです!
と挨拶。
先生:じゃあ…あの席に座って、いつも「空いてる」から。
ハル:そこですか?すごい絶対「座るな」の雰囲気ですけど?
机の上には堂々と「
先生:いいのよ、みんなにとってはそこ「空いてる」の。だからわかったら早よ座れやボケ(笑)
授業中、ハルの座ってる机に空いた穴からミミズが生えてきて、ハルの手に手紙を押し込んだ。
手紙には、「放課後すぐに旧校舎404教室に来い。来ない場合は迎えに行くby黒井」と書いてある。
ミミズはそのまま枯れて死んでしまった。
ハル:来たばっかりなのにどうやって行けばいいのさ?
先生:ハルさん?授業中よそ見をした子は、一秒ごとに成績を1ランク下げますからね〜、さあわかったら目をかっぽじってこっちを見ろ。
放課後になると、ハルは旧校舎に直行して404教室を探すが、そもそも旧校舎は3階建て。308教室までしか存在しない。
ハル:あれ、四階なんてないじゃん。黒井さ〜ん?いるの〜?
と虚空に向かって呼びかけるが反応なし。
ハル:あほくさ!もう来ないからね〜
と帰ろうとすると、廊下の端の木の壁から、真っ黒で身長は3mくらいある人型生命体が現れ、100mを1秒で走るくらいのスピードでハルの背後まで近づき、ハルの肩を掴む。
??:╪卄龴、ƺƕᛪ☡᭻℄ഗაꯖ⨧⨧"ꯖ"ⳣ𖧏᭻ᤊ₺ᑑᛪ
ハル:え?
ハルが振り向いた瞬間、身体からフッと意識が取れたような気がした。ハルはそのまま生命体に引きずられる。廊下の端の木の壁は通り抜けることができ、幻の404教室に直通している。
ハルは机に仰向けになっていたが、目が覚めると真っ先に首を触る。何とも無いことに気づいて安堵した。しかし隣にはさっきの生命体がハルをまじまじと見つめている。
??:起きたか、さっきはすまなかった。ついカッとなってしまってな。
ハル:あなたは何者?
??:私の名は「ᗪΙΓΥΝΙΤΙΕ」。人間達が呼びやすいよう、「黒井 虎子」という偽名を使っている。こちらの姿の方が親しみを持てるかな?
と、黒井は人間態に変身する。黒髪トリプルテールで、黒目の面積が非常に大きく、虹色の虹彩が輝いている。
黒井:白木春、君が転校した経緯は知ってるよ。君のお家である神社が、行政の区割りの変化によって祐都市側になったから転校したんだ。
ハル:当たりよ。じゃあ私を呼んだ理由は?…待って当てるから!私が神社の家系だから、とんでもない怪異を止めるために必要ってパターンね?
黒井:惜しい。ただ単に、将来がだいたい決まってる君を雇った。一般の高校生だと将来とか学業に関わるからね。家系とかは全く関係ない。それに、とんでもない怪異を止めるというのは語弊がある。
ハル:なんで?
黒井:祐都市は日本、いや世界で最も特異な街だ。この街に元々住んでいる怪異は善良な奴らで、普通に人と働いたり、結婚したやつもいる。問題なのは、外からやってきて生活でトラブルを起こしまくった上に反省せず、再三注意しても街から出て行かない不法怪異だ。私は入街管理人として取り締まっているのさ。
ハル:そうだったんだ…学校まで無我夢中で走ったから気付かなかったよ、仕事もなんかお役所みたいね。
と、ガッカリ。
黒井:小説や創作では「すごい陰謀が!」とか、呪いとか都市伝説を混ぜこぜにしてるが、現実はそんなものだよ。探偵と同じさ。
ハル:それで?私は何をしたら?お祓い?
黒井:登記確認や住民トラブルに対する解決とか、クライエントの心理的ケアもあるし、結構時間がかかることもあるんだ、一般の高校生にやらせると将来とか学業に邪魔になるって言ったのはこれが理由。
黒井は紙切れを取り出す。
黒井:早速だけど、今日はこのクライエントのとこに一緒に行くよ。ちなみにだけど、ここではクライアントじゃなくてクライエントね。一応福祉系だから。
17:30、〜祐都市の中でもオンボロのハイツ、201号室前にて〜
ドアベルを鳴らす黒井。
黒井:いいか?どんな怪異であっても下手に刺激したりするなよ。パワハラ扱いされて苦情が来るから。逆に向こうが滅茶苦茶を言ったらカスハラとして処分できるから。
ハル:わかった。
ドアが開くと、女性が出てくる。今回のクライエントはハルのクラスの先生だった。
先生:あら!ハルさんじゃな〜い、どうしたのかしら?宿題の提出忘れならぶっ飛ばすぞ〜?
会話を遮るように黒井が間に入る。
黒井:入街管理人です。ご依頼の件で参上しました。
先生は不満そうにちょっと舌打ちをしながら、
先生:ああ、下の階の住民のせいで床に穴が空いたからなんとかして欲しいの、じゃあ終わったら呼んで。
バタンと扉が乱暴に閉まる。
ハル:なんで対応に温度差があるんだろ?
黒井:誰だって"お役人"に冷たいのさ。
〜祐都市の中でもオンボロのハイツ、101号室前にて〜
黒井:よし、ここの大家から合鍵をもらったから、これで開けるぞ。
ハル:うん。
ドアを開けると…変な怪異が住んでいた。頭に剣山を突き刺しながらひたすらスクワットしている。身体は太陽のごとく輝いている。部屋もクレイジーで、全部の床が足ツボマットとランニングマシンのコンベアで構成されている。また、サンドバッグの残骸が散乱しており、普段からこの住民が何をしているのか何となく察せる。
??:うーーーっす!!うーーーっす!!自分は自称自動暴力マシンのTAC-YA!誰かを一日タコ殴りにしないと気が済まないっす!うーーーっす!!うーーーっす!!
ハルは開いた口が塞がらない。
ハル:ねえちょっと、流石に警察呼んだほうが…。
黒井:怪異だってナチュラルなパターンだけじゃない、極めて人工的なデザインに進化したやつもいるんだから、文句は言うな。
部屋に敷かれた足ツボマットを華麗に踏まずに、黒井はTAC-YAに近づく。
黒井:あなた、上の階の住民が困っておりますので、そういった筋トレはジムでお願いしても?
TAC-YA:ムリっす!ジムは月謝がチョー高いし、TAC-YAのパワーだとジムの設備が逆に壊れまっす!
黒井:ふむ、じゃああなたを安全レベルまで改造しなおせばいいかしら。
TAC-YA:駄目っす!そんなことしたら自慢のバルクアップしたガチムチ筋肉が…!今すぐコテンパン!コテンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン!
いきなり発狂したTAC-YAは、頭に刺していた剣山を引き抜いて黒井を突き刺す。しかし黒井は瞬時に元の姿に戻り、剣山を変身時の無敵時間でやり過ごし、大きな手でTAC-YAの身体を鷲掴みにして、床へ頭を衝突させる。頭がひしゃげたTAC-YAは、
「き゚ョッッッ!!」と絶叫。そのまま倒れるかと思いきや、そのまま三点倒立を始める。
TAC-YA:き゚ョッき゚ョッき゚ョッ!このまま死ぬとでも思ったか!
倒立で屈む体勢になった瞬間、ゴムボールのように黒井の前を通過して玄関の方向に吹っ飛び、たじろいでいたハルの首を掴む。
TAC-YA:むかついたからこいつを再起不能にしてやる!
黒井:…。
TAC-YAは絞め殺す、自分を。いつのまにか手はハルではなく自分を掴んでいた。
TAC-YA:あれ…確かに、絞めた…のに…。
ハル:!?どうなってるの?
黒井:私の能力さ。相手が調子に乗った瞬間だけだが、すり替えができる。さて、仕事に取り掛かろう。
18:30、〜祐都市の中でもオンボロのハイツ、201号室前にて〜
先生:よかった〜、もう下の住民から悩まされることもなくて♪。おまけにこんなファンシーなお掃除ロボットも貰っちゃった♡。
ハルは後ろめたそうに、
ハル:そうですね…ああああじゃあもう帰りますんでさよならっ!!
と走り去った。
黒井は背中に大量の機械パーツやスクラップで一杯の袋を隠して、無言で会釈だけした。
ハルの家は山の頂上の神社なのだが、あんな光景を見たら、長い距離を走る疲れなんか全く感じないくらいだ。あんな光景とは…黒井がまだ意識があるTAC-YAを乱暴に改造し、血を撒き散らしながら悲鳴が響き渡る中、黒井は楽しそうにしていた光景だ。
「もう終身雇用だから逃げられないぞ!」
そんな声が頭の中で響き渡ったような気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます