世紀末くいず!

日月のぞみ

第1話

 20XX年、世界は核に包まれた。

そして、大地は荒れ果て、人間は数十年の地下生活を強いられた。訪れた終末、しかし、希望は消えていなかった。


 苦威逗クイズ……。それは、無法と非道を究めた世紀末の人々の前に突如として現れた新たなヒエラルキー。力の証明。正解、それ即ち、己の武力と知力の表れなり。


 今から話す苦威逗クイズ大会の記録は、新時代最大の死者と感動を生んだ世紀末いまの神話。僕は、その参加者だ。



 時は遡り、5年前……核により村を焼かれ、荒野を彷徨う僕が、世紀末に適応を始め、しばらく経った時の事だ。

あの頃は、そう。隠密行動も上手くなっていたし、月に3人は殺していたと思う。ハッキリ言って、力に自信があった。だからかな、参加した。してしまった。


 さらに数カ月前のある日、荒野で他部族からの略奪を計画していた僕は、こんな噂を耳にしたんだ。


(……2人。か、別れた瞬間に裏から1人づつ確実に仕留めよう)


「なぁ、聞いたか?」


「ん? 何を?」


「あれだよ、あれ、『くいず』だよ」


「あぁ? んだよそれ」


「いや、俺も知らねーんだけどさ、それで地上最強を決めるんだとよ」


「はぁ!? バッカじゃね〜の!」


「いや、馬鹿だと思ったんだけどよ、あいつも出るって聞いてよ」


「まさか……核殺王プルトンか!?」


「……あぁ」


 モヒカンがゆっくりと頷くと、二人の間に沈黙が訪れる。どうやら、『ぷるとん』とやらは相当ヤバい奴らしい。しかし、僕もそれなりに強いはずた。それこそ、このチキン野郎共2人を殺し、苦威逗クイズの情報を吐かせられるくらいには。


 第一回 世紀末苦威逗世界クイズ大会

参加券は己の命。敗者には死を。勝者には世界ちからを。ルールは無要。力で権利解答権を勝ち取り、血と知で答えを述べろ。


 場所は第8コロニー前。

開始時刻は、そこに爆炎はなびと共に外道参加者集いしその瞬間とき。始めよう。命取  ゲームりを。



 正直に言おう。これを聞いた僕は、興奮した。血が沸き立ち、今にも目の前の2人を殺してしまいそうな程に……!


 力の証明。ずっと求めていた他者からの承認。死体ではなく、世界からの承認を。その存在証明を。


 急いださ、研いだナイフと爆弾たま揃えて、第八村だいはち焼いて、直ぐにでも始めようってね。


 燃やしたさ、闘志も村も、住民も。

先に来ていた外道ライバルと一緒にね。

そうして揃った舞台では、焼かれた死体台座と一つの起爆スイッチ。そして、生き残り共。そう、苦威逗クイズが始まる。


「さぁ! 始まりましたっ! 世紀末くいず大会! 参加者は――」


「うぉおおおお!!!」


「殺せー!」


「死ねぇーー!!」


 薬をキメたイカれ野郎が司会を務め、外野の雑魚共が僕たち王候補チャレンジャーを急かす。闘いのボルテージが上がってゆく。


 一通りの説明を終え、戦いの幕が開ける。

聞いたルール通りなら、一番最初にボタンを押した奴が、解答権を手に入れる。

そして、それが正しいなら"勝ち"だ。


「問題! この地に核を落とし、人間から太陽を奪った者は誰だぁー!?」


「なっ……!」


 核……!? 僕たちの村の……家族のかたきだとっ!? クソっ! 誰だ!? 誰があんな非道をっ……!


「うぉらァ! 死ねぃ!」


 瞬間、隣から刃。頬から血が滴る。回答こたえなくてはっ……! 回答こたえなければ勝てない!! 今はもう、考えてる場合ではないっ!


「うるせぇ!!」


「うぐっ!」


 モヒカンの鼻をえぐり、落ちたそれを拾い上げ、むさぼる。そう、ここは世紀末。世紀末なのだ。例え自分の回答こたえが間違っていようとも、間違いと考える者を全て殺せば、それ即ち正解なりっ!


「やっ、やめろ!! 来るなぁっ!」


 あぁ、なんと弱々しい。こんな者が苦威逗クイズの参加者? 笑わせるな。資格が無いのに参加した自分を恨め。そうして、腹をナイフでかき回し、死体を他所に。起爆スイッチへと向かう。


 しかし、敵。強烈な爆風、轟音と共に注目を一身に受ける。


核殺プルトォ――」


 爆心地から遅れてもう一音。鳴る。

言葉と共に首も舞う。空気が足りない。もう、音が出ないのだ。


「ガハハハッ! 雑魚は答えらんねぇよ!」


 今の奴、知っていたのか!? 回答こたえを! 『ぷる』……? ぷる、なんだ? どこかで。ぷる……プル……核殺王プルトン!?


 ここの参加者で最強と言われる者か!?

どこに……。いや、とにかく次の起爆回答権を奪わねばっ……!


 再び、響く音。耳をつんざく。それほどに、近い。殺っ――


「我だ」


「……は?」


「この地に核を落とし、人間から太陽を奪った者は誰だ? 答えはもちろん核殺王プルトン様ぁ!」


「正解です! ピンポンピンポンピンポーン! ギャハハハハァー!!」


 こいつが、あの、核殺王プルトン。俺たちの村を……家族をっ……焼いて、殺したっ……! 悪魔!!


「……き」


「き? ……なんだ? 小僧」


「き、貴様かぁぁあ!! 俺たちの村を…!! 返せッ…!!!!」


 腹にナイフが突き刺さ……らない。

違和感。覗いた手には折れ曲がったナイフが1本。なんだ? 硬すぎる。腹だぞ。ガラ空きだった! 布切れ一枚でどうこうできるモンじゃない!!


「あぁ、なるほど。」


「悪かったな小僧。だが、あの選択を間違いとは思わない。故に謝罪もしない。」


「な、何を。ふざけっ……!」


 頬に拳を感じる。強く、重い。しかし、弱い。加減されている。尊厳が、踏みにじられているのだ。


「どうしても謝らせたいというのなら、もっと強くなってから俺に復讐しに来い。」


「……畜生っ!」


 そうして、僕の前から王は去った。

ルールとして、敗者からは命を奪う。らしいので、他の参加者は皆殺しにした。

僕を殺そうとした有象無象も、無論殺した。


 そうして、一夜にして約960000名の犠牲を生んだ苦威逗クイズ大会は、2名の生存者を荒野に残して終わりを告げた。

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世紀末くいず! 日月のぞみ @hituki-nozomi

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