ナツメの介護
宮藤才
第1話 2026・1月
近所の神社に初詣、お参りに行き、帰宅すると母はまだ背中を丸めて寒い寒いとヒーターにかじりついていた。
「ただいま」
見ると、母の席のテーブルの上には私が出かけた時のまま、おせちの煮物が手付かずのまま残っていた。
「はあ」ボディーブロー。
毎度のことながら堪える。
自分が精魂かけて作ったものが、味見すらされず卓上で乾いていくのを見るのは忍びない。容赦ない現実。でもまだシンクの生ごみに入っていないだけマシ。「完食してくれた」と喜んだ後にシンクの生ごみポケットに溜まっている料理を見つけた時は未だに絶望的な気分になる。いい加減慣れたら? とも思うが、それもどうかと思う。
私は荷物を置き、そのままシンクに溜まっている洗い物に手をつけた。
「お腹すいてる?」
母はぼんやりテレビを見ている。
「お腹すいてる?」
「……」
「お昼!」
「……」
「お昼作るよ!」
「……」
はあ。ともかく。
私はテフロンフライパンに水を入れてコンロにかけて火をつけた。
その間に冷蔵庫から先日の作り置きのナポリタンの入ったタッパーを取り出した。
「ちょっと野菜が欲しいな…」
確か先日新しい玉ねぎがおうちコープで届いていたはずだ。
冷蔵庫にあった、幼馴染のおじさんが経営している八百屋で買った小さな玉ねぎは先日使い切ったはず。一階の部屋は冬場は5度前後にまで下がる。自分の家でこんなことを言うのもおかしな話だが、この季節いくのは思い切りがいる。
できれば行きたくないが、野菜類の置き場としては重宝している。
まあ私は我慢すれば済む話なのだが、お風呂もその一階にあるのだ。デイサービスのある時期は母もそこで入るので問題はないのだが、年末年始はそうはいかない。
寒がりな母をお風呂に入れるには、あらゆる手を尽くして部屋を暖める必要がある。1階に降りるたびにあれこれそんなことを考えるので、思考が重くなって、前頭葉が憂鬱になる気がするから大変だ。しかもこんなこと、私以外誰に共感してもらえる希望もない孤独な思考だ。
【つづく】
ナツメの介護 宮藤才 @hattori2525
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