魔導世界の落ちこぼれは、異界だとエリートでした
あんこロ。
第一話 魔導の世界
オレの名前は
そしてこの世界は、機械がファンタジー。魔法が
よく戦争に機械が扱われるが、ありゃあ嘘だ。
この世界での戦争は、異界より召喚された悪魔や、わけもわからず命令に従う異界人がよく使われる。
────もうわかっただろ?
この世界は、機械がファンタジー。
魔法が
そんな世界に数年前、「スマホ」が登場した。革命的だ。
そんなスマホをオレも持っている。オレは「マジホン」と呼んでいるがな。
理由は簡単。オレの嫌いなヤツの名前が「
それと正式名称が「マジック・スマートフォン」だからでもある。
なんてことを考えながら学校まで走っていると、校門前であの大っ嫌いな「
あんなの無視無視。
そう思って無言で目の前を通ると、当然のように後をついてくる。
なんなのコイツ? オレのタイプはおとなしくて攻めっ気のない大和撫子なんだよ!!
こんなヤツのことは無視して、教室まで行く。
すると、教室が大賑わい。歓声やら指笛まで聞こえてくる始末だ。
これも無視だ無視。
高校に入学してから2ヶ月経つが、オレの高校生活はすべて天堂魔帆に狂わされた。
自己紹介のとき、『一目惚れしたので付き合ってください』などと言われた。それがきっかけだった。
そんなの誰でも断るだろう。
……てか、普通自己紹介で告白するか!? マジで変なヤツだ。
当然、答えはノー。
それ以来、こいつはオレにくっついてくる。
そして、オレを真似ているつもりなのか、いつからか白いローブを羽織るようになった。
席もいつの間にか隣に移ってるし、絶対先生買収されただろ。いや脅されたのか……?
何にせよ、こいつはやべーヤツだ。関わらない方がいい。
──とは思ってる。思ってるんだが、たまに見せてくる哀しそうな顔をされるとどうにもな……。
弟もむかしはこんな感じでかわいかった。もちろん、いまもかわいいがな。
そういう愛嬌がコイツにはある……気がする! 断じてコイツをかわいいとは思っていないがな!
「よう」
「ん……」
毎朝こんなふうに挨拶がはじまる。
連絡先や「メッセ」は登録していないので、言葉のみがコイツとのコミュニケーションのやり方だ。
ちなみに「メッセ」ってのは、簡単に言えば履歴が残る「メッセージ」を送り合ったり、通話したりするアプリのことだ。
オレは口下手で威圧感があるとよく言われるから、「メッセ」に登録してるのは父さんと母さんだけ。
おじいちゃんは(時代遅れだが)武道家で、「マジホン」なんて持っていない。
弟はまだ「マジホン」を買ってもらってすらいないからな。まったく、かわいいやつだ。
それにしても……あー暇だ。暇つぶしに待ち受けにしてる弟でも見るか。
「ふぅ、癒される……」
「ねぇ……」
「!?」
な、なんだ!? 見られた? 見られたのか!?
こんなやべーヤツにオレの気が緩んでるところを見られたってのか!?
やべー……交換条件でなんかされそうだ。時を戻せるなら戻してやりたい。
そんなオレの思考とはべつに、天堂は口を開いた。
「それ、家族写真……?」
「だったらなんだ?」
「わたしも撮りたい……」
ん? どういう意味だ?
家族写真が撮りたいなら、撮ればいいじゃねぇか。
というか、家族写真として撮っておいて助かったぜ。
弟だけの写真を眺めてたらブラコン扱いされるところだったからな。
「いいんじゃねぇか? 好きにすれば……」
「そっか……」
そう言うと、天堂はオレを撮った。
「やった……」
「おい、ふざけんじゃねぇぞ」
「ふふっ……」
「コラー! 聞いてんのか! おい!」
「ありがとう……!」
「ケッ……」
変なヤツ……。
オレじゃなくて家族で撮れっつーの。
そんな満足気な天堂を見て、不貞腐れるオレだった。
◇◇◇
銀色の髪、肩までかかった髪型、長い睫毛、ぱっちりとした目、兎のような赤い瞳、整った顔立ち。
150センチ程度の身長、無いとは言わないが、小さい胸。
そして、ダウナー系っつーのか? とりあえず、何を考えてるのかわかんねぇヤツ。
オレはコイツのことが嫌いだ。
1時間目は「魔法検定」のようだ。
自分の固有魔法をどれだけ使いこなせるのかを上級生や教師に見せる、絶好の機会。
ちなみに、オレの固有魔法は【加速】と【減速】。
【加速】は最高で時速4000キロの速度、【減速】は最高100分の1までの速度にできる。
そう、人はオレをエリートと呼ぶ。
「花の種をください」
先生からアサガオの種を貰う。それを植木鉢に入れて、
「【加速】!!」
花の成長速度を【加速】させる。
すると、一瞬で花が開花した。
「おおっ!」
「流石は渋堂だな」
「やるね、彼」
よし! 上級生や教師たちからの評価はいい感じだ!
さーて、天堂はどんな感じだ? そう思って天堂の方に目をやると、まるで話にならなかった。
緊張しているせいか、目の前のものすべてを【無重力】にしている。
天堂の固有魔法は【過重力】と【無重力】だ。使いこなしたらオレのいいライバルになるだろうが、現状はカスみたいなもんだ。
よし、まずは天堂を落ち着かせよう。
オレは小声でこう唱えた。
「【減速】……!」
天堂の心拍数を体感半分くらいにした。
つぎはこう唱える。
「【加速】!」
天堂の
これでそこそこの評価を取ることだろう。
「よ、よし……」
「よくやったな、天堂! 魚をべつの容器に移し替えるなんて!」
「はぁ……」
上手くいったようだな。
天堂はこっちに気がつくと、ピースサインをこちらに向けてニコッと笑った。
「フン……」
ま、喜んでくれたなら満足さ。
「しっかし……」
なんでだろうな……。
嫌いなはずなのに、ついつい天堂を助けちまう。
困ってる姿が
……まあいっか! オレは困ってるヤツを放っておけないタチなのかもしれない。
こうして、1時間目の授業はお互い良好な結果に終わった。
◇◇◇
「渋堂くん……」
「あん?」
「さっきはありがとう……」
「何のことだ?」
「いつも落ちこぼれのわたしを助けてくれる……」
その発言にオレはプッツンする。
「落ちこぼれだと……?」
「うん……」
「ふざけんじゃねぇぞ!」
「……え?」
「お前なんか落ちこぼれじゃねぇ! オレの弟なんて……いや、なんでもねぇ。とにかく、改善できるなら落ちこぼれじゃねぇ。勘違いするのもいい加減にしろよ!」
「うん……」
クラスメイトのみんながオレに注目する。
だがそんなことはお構いなしにオレは話し続ける。
「弟はもう……」
「亡くなったの……?」
「馬鹿なこと言うな! アイツは生きてる!! だが……」
「?」
「帰り、オレの家に来い。見せたいものがある」
「わ、わかった……」
こうして、オレの家に天堂を誘った。
普段なら歓声が上がるところだろうが、オレの真剣な表情と威圧感で、歓声が上がることはなかった。
◇◇◇
「乗れ」
「え……?」
「オレは最高で時速4000キロ出せる。背中に乗れ」
「うん……」
「それと、顔はオレの肩から上を維持しろ」
「わかった……」
「【加速】!!」
少しセーブしながら、天堂を背中に乗せて走るオレ。
当たり前だが、ものの数秒で家に着く。
「【減速】!」
オレは天堂だけを【減速】させ、安全に着地させる。
「よう、導魔」
「あっ! 兄貴! ……と兄貴の恋人?」
「違う!」
「じゃあ、兄貴のよく話してくれる人?」
「……まあ、そうだな」
「へぇ! 兄貴、ボクもお邪魔してもいいかな?」
「ああ、いいぞ」
「お邪魔します……」
こうして、導魔を支えながらリビングに移る。
「今日は、天堂がな──」
「へー! やっぱり兄貴はすごいなぁ」
「……あの」
「じゃあ、オレたち大事な話するから、導魔はまたあとでな」
「うん!」
オレは天堂をオレの部屋に入れる。
「わかったか? 真の落ちこぼれってのは、ああいうヤツのことを言うんだ」
「歩けないの……? 弟くん」
「ああ。だが、復学するつもりはあるようなんだ。足さえ動けば……」
「何があったの……?」
「導魔はオレよりも強かった。オレより早く【加速】させられるし、【減速】は使えなくとも、速度調整が上手いヤツだった」
「……それで?」
「それで、ちょうど2年前だ。アイツは両脚の骨が折れたんだ」
「でも……」
「ああ。完治はしてる。してるはずなんだが、感覚のせいか、ストレスのせいかはわからんが、足が動かなくなった」
「わたしが治してみせたら、わたしに感謝してくれる……?」
「何をする気だ?」
「渋堂くん。弟くんを支える人を用意して……」
「オレじゃ駄目か?」
「渋堂くんはサポート係……」
「そうか。わかった! なにかやるんだな? ちょっと待ってろ!」
こうして、おじいちゃんを呼んで支えさせる。
◇◇◇
「渋堂くんはわたしをサポート。集中力を【加速】させて」
「わかった! 【加速】!」
何をする気なんだ……?
「【過重力】!!」
「わっ!? 重さを感じる!」
「そうか!」
天堂のやりたいことは……!
「渋堂くん……!」
「ああ! 【加速】! どうだ導魔? 久しぶりの感覚は?」
「うん。いい感じ」
「そうか」
オレは涙を流しそうになるが、なんとか堪える。
「【過重力】!」
「どんどん足があったかくなってきた!」
「おじいちゃん、説明して」
「わからん。が、血行が良くなってるんだろう」
「なるほど」
まさかこんなことができるなんて……。
「【過重力】!」
「だんだん足に感覚が戻ってきた!」
「そうか!」
「じゃ、帰るね……」
「え?」
天堂は部屋から出ていこうとする。
「おい、なんでだよ?」
「最後の【過重力】はブラフ。これでもう弟くんはリハビリすれば歩けると思う……」
「そ、そうなのか? おじいちゃん、手を離してやってくれ」
「あ、ああ」
導魔の足がガクガクと膝を震わせる。
いままでならこんなことできなかったはずだ。
天堂は無言で外に出ていった。
「兄貴、天堂さんを追いかけて」
「ああ!」
オレは天堂を追いかける。
「天堂! 『マジホン』の『メッセ』、交換しようぜ!」
「うん……」
こうして、「メッセ」に登録する。
それと、もうひとつご褒美をやるか。
「一度しか言わねぇぞ」
「うん……?」
「導魔を助けてくれてありがとな、魔帆」
「うん!」
満面の笑みを浮かべる天堂。なんとなく心が落ち着くオレ。
……なんでだ?
「……じゃあな」
「送ってくれないの……?」
「…………はぁ、わかったよ。天堂の家ってどこだよ」
「異界……」
「は?」
「わたし、異界人だから」
「ふーん。ま、今時そんなに珍しくないな」
「……じゃあまた明日ね、法魔くん」
「おう。あとその呼び方、学校ではするなよ」
「善処する……」
「ん? ちょっと待て。どこに帰るって?」
「異界……」
「行き来できるのか?」
「……来る?」
「ああ」
「じゃあ、この鞄の中に触れて。魔導具だから異世界に行ける……」
「おう」
こうして、異界に行くことになったオレ。
どんな場所なのか楽しみだ。
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