妙宰嶺治短編集

妙宰嶺治

「愛情論」

※同内容を小説家になろうにも投稿しています。












『愛情論』   

       妙宰嶺治












愛していますから。


千代という名の女は煙草屋のカウンタアに肘を置き、気怠げに目の前の通りの人間を眺めている、痩せこけ、目の開きは悪く、世の人は千代を目に入れないだろうという具合の醜い女だ。

ただ僕の目はそんな千代から離れていこうとしなかったのです。

僕は醜い女に恋をしました。

喫茶の店主、書肆(しょし)の手伝い、旧友、どの千代を知る人物にこの感情を吐いたとしても「ああ、千代に呪いでもかけられてしまったのか。」と云うのです。




「こんばんわ。お元気かな?お嬢さん」


「えぇ。」


初めて僕が千代の目に入る。

冷めており鋭利さすら感じる様な声色に心が弾む。


「どれにします?」


「私は初めて煙草を買うんだ。君の良いと思う品をくれ。」


「では、こちらなんていかがかしら。」


「それにするよ。」



千代が選んだ煙草はどうも苦く甘かったのです。



その日より僕は千代に毎日会いにゆきました。

初めの頃こそ、少量の会話であったが日を重ねるごとに僕に話をしてくれるようになりました。、


千代は歳が9つのころ親を亡くし、3人の下の兄弟のために働いているらしい。


不憫、哀れ、なんて愛おしい。


霞草の咲く頃、僕は上等な背広に花束を持ち、会いにゆきました。


「貴女以上に魅力の感じる女性はいません。これまでもこれからも。」


千代は泣いて私に抱擁をしました。

僕と千代は誓いを交わしました。


ただ困りました。

日に日に千代は美しくなってしまうのです。


あの時僕の目を離さなかった千代にあった何かが無くなってしまったのです。

それはきっと僕が幸せを与えてしまったからなのでしょうか。

てっきり醜い千代が僕の物になると考えたこの結婚は千代から僕の愛した醜さを奪ったのです。


それでは意味が無いのです。

僕の愛した千代は私が消したのです。

僕は後悔しました。

僕は考えたのです。奪えばいいのです。

僕が与えたのなら私が取って焼いて消してしまえばいい。

そう考えたのです。


ああ。私は今、幸せです。







年代は大正あたり。

千代は19、主人公は18。

主人公はツラのいい男です。

健気で可愛い恋のお話です。



•要するに事情聴取、あなたは取調官です。






この話は2度読むとすこし意味が変わると思います。

よければもう一度、どうぞ。








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