「嘘を読まされているな」というのが本作への第一印象である。
試しに本作の冒頭の「謝辞」を読んでくるといい。私の発言が真実であることがはっきりとわかるはずだ。そしてこの「謝辞」を読んだ人ならば察せられる通り、本作はこうしたトンチキな大ボラが作品全体にあまねく散りばめられている。この独特のリズムで繰り出される珍文の連続が本作の最大の魅力であることは間違いない。
だからといってストーリーがつまらないということはない。各話ごとに春原女子校のドクターペッパー道部の面々が、突如襲来した宇宙人と地球人類の命運を賭けてボードゲームで対決したり、突如宇宙人が爆弾を投下した山へハイキングに行ったり、校内で例年通りに開催される変則トライアスロン大会に参加したりと、文体に負けない不条理すぎるイベントの目白押しである。あまりに珍奇すぎる内容なので全てをただただ思いつきで書いてるのではないかと疑ったりもするのだが、読み直すとしっかり伏線のようなものも張られているのが恐ろしい。個人的には第2話でサラッと登場する「降雲」という概念とその取り扱いにはSFならではの面白さが存分に詰まっているように感じられた。
読んだことで人間的に成長するわけでもないし、感動のあまり滂沱の涙を流すという作品ではない。ただ小説に対して「面白い嘘」を求めている読者にとっては、一読する価値のある作品であることは約束しよう。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)