看護師の俺が全属性使いとして転生。 そんなことは置いといて倒れてる人をROSCしたら、 死者蘇生と崇められたけど――それは倫理に反しますか?
んご
「おい、しっかりしろ!」
「だめ、息もしてない!
回復魔法も効果がないわ!」
血まみれになった魔法使いを抱え、
戦士は声を張り上げていた。
傍らでは僧侶が必死に回復魔法を唱え続けている。
しかし、その身体は微動だにしない。
道の脇には、巨大な魔物の骸が横たわっている。
その存在が、つい先ほどまで行われていた死闘の激しさを物語っていた。
そこへ、二人の人間が通りかかる。
「ラバン先生、人が倒れてますよ!?」
青年はそう叫ぶと、躊躇なく駆け出した。
「ま、待たんか
白衣をまとった老人――ラバンは、継の背中を追う。
「ひどい出血だ!」
継は倒れている魔法使いの首元に指を滑らせる。
「この状況いつからですか!?」
「ついさっきだ!
そこの魔物にやられた!」
腹部は血に染まり、衣服をめくると、臓器に達しているであろう深い傷が口を開けていた。
「先生、指示を!」
「またか”それ”か…
それ、毎回言ってるけど、わしの指示いるの?」
「癖みたいなもんです!
先生の"指示"がないと俺は動けない!
とにかく早く!」
「よし、やりなさい」
継は医師の指示を確認すると、火の魔力を指先に集めた。
「
傷口から焦げた臭いが立ちのぼる。
光が収まったとき、傷は大きな火傷痕へと変わり、血は止まっていた。
「おい、何やってんだ!?」
「止血です。次は胸骨圧迫します!」
継は魔法使いの胸の中心に両手を置き、押しては戻す動作を繰り返す。
「ちょ、ちょっと!
何やってんのよ!?
私の回復魔法だって効果なかったのに、
そんなことしてどうなるのよ!?」
「そ、そうたぜ!
こいつはもう…」
「まだ死んでない!!」
強い声に、戦士と僧侶は言葉を失った。
「この人を助けたいなら手を貸して下さい!」
継は戦士に心臓マッサージのやり方を簡潔に説明し、交代する。
「そう、いいリズムです!
もう少しリコイルをしっかり!」
「リ、リコイル!?」
継は魔法使いの二の腕を紐で縛る。
浮き上がった血管に狙いを定め、管のついた針を刺した。
管の中を、赤い血が静かにさかのぼる。
「あなたはこれを持ってて!」
僧侶は状況を理解できないまま、言われるがまま管を支えた。
「
魔法の発動と同時に、水の塊が空中に現れ、管へと吸い込まれていく。
赤い血は透明な液体に押され、体内へと戻っていった。
「か、体に直接水を!?
こ、これは一体!?」
「この状況、どうみても出血性のショック。
なら、輸液は必須!
先生、強心薬を!」
「はいはい」
ラバンは鞄から小さな小瓶を取り出し、継に手渡す。
継はそれを、水の塊へ一滴垂らした。
僧侶は、ただ呆然とその光景を見つめている。
「はい30回で一回ストップ!」
継は魔法使いの口元に手を当て、短く唱えた。
「
濃縮され空気が魔法使いの喉を伝い、
胸がわずかに2回上下する。
心臓マッサージと換気を繰り返すうち、魔法使いの指先が小さく震えた。
「心マとめて下さい!」
戦士は反射的に飛び退く。
継は再び、首元に指を当てる。
「
早く回復魔法を掛けて下さい」
僧侶は慌てて回復魔法を唱える。
ゆっくりと、しかし確実に魔法使いの顔色が戻っていった。
「やっぱり便利だなぁ、回復魔法は」
「どういうこと!?
さっきは回復しなかったのに!?」
「回復魔法は生命力を増幅させるものじゃ。
しかし、死んでいたらそりゃ効果もないじゃろ?
こいつはまずそこを治したんじゃ」
「いや、だから死んでませんって。
心臓が止まっただけで、すぐに対応すれば…」
「いや、もうその説明は聞き飽きた。
年寄りにはよく分からんわ」
「医者がそんなこと言わないで下さいよ」
そのとき、魔法使いがかすかに目を開けた。
「わ、私は…」
「無理に喋らない方がいいです。
まだダメージは残ってます。
今はゆっくりしてください」
「す、すげー!!
本当に生き返らしやがった!!
死者蘇生だ!!」
「そんな、死者蘇生なんて、神の領域よ!?」
「いや、だから…死者蘇生とかじゃなくて…」
継の言葉は、興奮した二人の耳には届かなかった。
魔法使いの容態はかなり落ち着き、担いで移動できる程度には回復していた。
戦士は魔法使いを背負い、僧侶と共に何度も礼を言いながら去っていく。
継は、その背を見送りながら、道端に横たわる魔物の骸へと視線を向けた。
「何回見てもやっぱり信じられないですね。
こんな化け物がいるなんて…」
「ワシからしたら、
何度見てもお前の魔法の方が信じられんわ。
全属性使えるなんて聞いたこともない」
「いや、本当に”ただ使えるだけ”なんですよ。
魔力量もそんなに高くないみたいだし、
だから有名な魔法使いみたいに
超強い魔法とか使えないし」
歩きながら、継はこれまでのことを思い返す。
看護師として、普通に働いていた日々。
事故に遭い、死んだこと。
気付けば、神と名乗る存在が目の前にいたこと。
そして、再び気付いたときには、この世界にいたこと。
「俺だってよく分からないですよ。
死んだと思ったら変なやつに、
全属性の魔法が何たらかんたら言われて、
気付いたら知らない所にいて…。
今だに意味が分からない。
それに、肝心の回復魔法は使えないし」
「あれは別物じゃ、
神の力を借りる技で特別な素養が必要らしい。
ていうか、その話は他人に話すんじゃないぞ?
変人扱いされるからな」
継は、転生前は看護師として普通に働いていた青年だった。
この世界には勇者や魔王が存在するらしい。
神がどのような意図で力を与えたのかも分からない。
ただ一つ言えるのは、継は争いごとが苦手な性格であり、全属性の魔法も「使える」だけで、何かに秀でているわけではなかったということだ。
そのため、魔王と戦おうなどという発想は最初からなく、ラバンのもとで医者の助手として、前世と変わらない日々を送っている。
この世界で継が強く感じているのは、医療の質の問題だった。
魔法や薬草学は発展しているが、
医療機器と呼べるものは存在しない。
当然、できることにも限界がある。
だからこそ継は、自身の魔力の特性を利用し、医療用としての魔法を独自に試行錯誤してきた。
それでも――救えない命は多い。
救急の場を経験した回数は少なくない。
対応する知識もある。
だが、継は看護師であって医者ではない。
正確な診断を下すことはできなかった。
今回は、たまたま運が良かっただけ。
その思いは、いつも胸の奥にまとわりついている。
王都へ戻った二人は、いつものように往診へと向かった。
体調が悪く、ラバンの診療所まで通えない患者は少なくない。
そのため、往診は日課のようなものだった。
一軒の民家に入ると、初老の夫婦が深々と頭を下げて迎える。
「先生、お待ちしていました」
「お父さんの具合はどうかね?」
「それが…」
二人は奥の部屋へと案内される。
そこには、ベッドの上で力なく眠る老人の姿があった。
ラバンは老人の傍らに腰を下ろし、
手を取って優しく語り掛ける。
「今日の調子はどうですかな?」
返事はない。
ただ、かすかに瞼が動くのみで、呼吸も弱々しい。
「先生、父はもう死ぬのですか…?
いざという時は助手さんのお力があれば父は…」
「いや、その…俺の出来ることは…」
継が言葉を選びながら口を開こうとしたが、
ラバンはそれを遮るように、穏やかな声で続ける。
「この人は十分に生きた。
この前、本人と話した時も、
もう思い残すことはないと言っておった。
それに、コイツの力は言うてみれば、
"命を引き延ばす"ようなものじゃ。
多分、それは苦しみも続くということ。
長年頑張ってきたんじゃ、
そろそろゆっくりさせてやっても
いいんじゃないかの?」
「そう…ですよね…。
分かってはいるんですが、
やはりいざその時になると思うと…」
「色々、いい思い出もあったんじゃろうな。
目も開けられない、声も出せない。
じゃが、耳は聞こえとるらしい。
思い出話でもするといい、
それが残された者の心の整理じゃ」
二人は静かに民家を後にした。
「さすが先生です」
「こういう話は医者がしろって言ってたのは
お前じゃろうが。
何だっけか、ディーエー…」
「DNARです」
「そうそれじゃ。
まあ、助けなければならない命もあれば、
そうでないこともある。それだけのこと」
前の世界でも、この世界でも変わらない。
変えてはならない線引きが、確かに存在する。
そしてそれは、誰かが決められるものではなく、
明確な答えもない。
継は命の場面に立ち会うたび、いつもそのことを考えさせられていた。
二人は次の往診へと向かう。
目的地は王都の中央、城だった。
国王は病に倒れている。
先ほどの患者と同じく高齢であり、
寿命という側面も否定できない。
だが、継の存在を知った王国評議会は、
その力にすがるように希望を託していた。
城の中庭で、王子と大臣が二人を出迎える。
「ラバン先生、繋先生、お待ちしておりました」
先生と呼ばれ、継はむず痒い気持ちになる。
そのまま国王のもとへ案内された。
「陛下、調子はいかがですか?」
ラバンは、普段よりもやや丁寧な口調で尋ねる。
「おかげさまで、今日は調子がいい方じゃな」
一通り体調を確認し、調合した薬の説明を行う。
やがて話題は世間話へと移り、自然と国王の心境へと変わっていった。
「私は長く生きた、悔いはない。
息子はまだ頼りなく思う所もあるが、
あいつなら必ず民を導いていける。
私の息子だからな」
国王は、誇らしげにそう言った。
「陛下、それは直接、
王子に伝えてあげてはいかがです?」
「そんな恥ずかしいこと、出来るわけなかろう」
「それが思い残しにならなければいいですがね」
自らの死を語っているというのに、
寝室には不思議と暖かな空気が流れていた。
継もこうした時間を前世でも何度も経験している。
そして、それは嫌いではなかった。
人は最期に、何を思い、何を語るのか。
その言葉に耳を傾けると、
その人の人生が垣間見える気がする。
自分は、その最期を穏やかに迎えるための手助けができているのではないか、そう感じられるからだ。
だが、それは他人であるがゆえの自己満足なのかもしれない。
死にゆく者とは裏腹に、
残される者は決して納得しないこともある。
前世でも、よくある光景だった。
現に、国王を取り巻く人々の心は揺れている。
寝室を出ると、待ち構えていたかのように王子と大臣が歩み寄ってきた。
「陛下はどうでしたか!?」
「あまりいいとは言えんの」
「そんな、この国はどうなるのですか!?」
「お言葉ですが、殿下、
それは貴方が引き継ぐことではないのですか?」
王子は歯を食いしばる。
「先生、やはりこの国にはまだ王が必要なんです」
「しかしですな、大臣…」
「なにとぞ、お願いします!」
その場は、肯定とも否定ともつかない返事で切り上げた。
城を後にした二人の周囲は、夕暮れに差し迫っている。
「継、お前はどう思う?」
「延命は反対です。多分、本人は苦しだけ。
それに本人も悔いはないって言ってましたし」
「そうじゃな。
しかし、それをワシらに決める権利は無い。
そして、残される者も選べない」
「分かってるつもりです。
同じようなことは経験してきましたから。
本人の意思よりも周りの意思が
尊重されるみたいなことはよくありましたから」
「継、今回の件は今までとは少し違うかもしれんぞ?」
「どういうことですか?」
「死ぬのはこの国の王だ。
ただの人間ではない。
周りもいろんな思惑があるだろうな」
「…」
「王子は国を継ぐ自信がない。
大臣は王が死ぬことで、
他国との均衡が崩れることを恐れてるかもしれん」
「他国?」
「今、王が死ねば国を率いる者がいなくなる。
その混乱に乗じて敵国が攻めてくる。
そんな考えもあるじゃろ」
「それじゃあ、個人の尊厳は?」
「対象は王じゃ、普通の個人ではなく、
存在そのものに意味がある。
人間には変わらんが普通の人間とは違うんじゃよ」
「…」
継も理解はしている。
だが、割り切れないジレンマが、表情を苦くさせていた。
「…若いな」
そう言ったラバンの顔は笑っていたが、夕陽に照らされ、どこか寂しそうにも見えた。
次の日の深夜、診療所のドアを激しく叩く音で継は目を覚ました。
外に立っていたのは城の兵士だった。国王の容態が急変したという。
事情を聞く間もなく、継とラバンは兵士に連れられ城へと急いだ。
王の寝室には、王子や大臣をはじめとした関係者が集まっていた。
ベッドの中央では、国王が胸を押さえ、苦悶の表情を浮かべながら身をよじっている。
「先生!頼みます!
どうか王を…!」
縋るような声が飛ぶ。
「どうする?継」
「この場合、セデーションで少しでも楽に…」
「それはお前の決めることじゃないわ」
「先生、わざと聞いたでしょ?」
ラバンは意地悪そうな笑みを浮かべた。
「皆さん、王はこの通り苦しんでおられる。
ワシらが出来ることは二つ。
深い眠りに落ちる薬を使って楽に最期を迎えるか、
継になんとかしてもらうか」
「もちろん継先生に何とかして頂きたい」
即答だった。
「ラバン先生、俺からもいいですか?」
ラバンは無言で頷く。
一息つき、継は王を取り巻く人々を見渡した。
「俺が出来るのは死者蘇生なんかじゃありません。
心臓を無理矢理動かすことで、
多分胸の骨も折れます。
自分では呼吸もできないので、魔法で常に空気を
送り続けないといけなくなるかもしれない。
食事も摂れないので、
水分を魔法で体内に送り続けます。
王の年齢からみても、
そうなったら回復の見込みはないと思います。
そして、
その苦しみは死ぬまで続くかも知れません。
それは数日か数週間か、あるいは数ヶ月、
先生や俺にも分かりません」
誰も口を挟まなかった。
その場にいる全員が、継の言葉を真正面から受け止めている。
「それでも、やりますか?」
今度は、すぐに答えは返ってこなかった。
沈黙の中で、王子が一歩前に出る。
「それでも、父上はまだこの国に必要です。
もう少しだけ、私に時間を下さい。
父が生きている時間を、
私が王になるための時間を。
父上ならきっと受け入れてくれると思います。
だから、お願いします!」
王子は深く頭を下げた。
その瞬間だった。
もがいていた国王の動きが、ぴたりと止まる。
呼吸も、途絶えている。
「…先生、指示を下さい」
「好きにやりなさい、継」
継はまず、王の首筋にそっと手を添え、
魔力を操作する。
「
心臓の動きを視覚化できるわけではない。
だが、王の体から伝わってくる、微弱で不規則な電気信号を確かに感じ取る。
「小刻みな震え、おそらくはpulse less VTかVF…。
そこのあなた、心臓マッサージをお願いします!
俺は今から”充電”します!」
「し、心臓マッサージ!?
充電!?」
幸いにも人手は十分にあった。
継は周囲の人間に、簡潔に、だが的確に胸骨圧迫の方法を伝える。
「いいですよ、リズムも深さも!」
胸骨圧迫の様子を確認しながら
、継は両手に雷の魔力を集めていく。
空気が張り詰め、指先に力が満ちていくのが分かる。
やがて、“充電”は完了した。
「みんな離れて下さい!」
継は王の右胸と左脇腹に、心臓を挟み込むように両手を当てる。
「
乾いた衝撃音とともに、王の体が大きく跳ねた。
「はい、心臓マッサージ再開してください!
そこのあなたは2分カウントしてください」
「い、今のはいったい!?」
「簡単に言うと、
王の心臓は小刻みに震えてる状態で、
ちゃんと動いていません。
だからその震えを止める電気を流しました!」
継は次に、静脈路を確保しながら魔力を巡らせる。
「
「継、強心薬はいるか?」
「準備だけお願いします、
使うとしたら次のショックの後です!」
「ほいよ」
「2分経ちました!」
「心マ一回止めて下さい!」
その声と同時に、継は再び魔法を唱える。
「
指先に伝わる感触は、まだ細かく震えていた。
「…まだ震えが。
心マ再開、充電します!」
二度目の
衝撃の直後、継は間を置かずに指示を飛ばす。
「先生、強心薬を!」
「待ってたわい!」
ラバンは宙に浮かべた水の塊に、迷いなく一滴の薬を落とす。
継は王の頭元に立ち、今度は風の魔力を制御した。
「
非同期、六秒に一回の自動換気。
「2分経ちましたぁ!!」
「
その瞬間、指先に伝わったのは、
震えのない、規則正しい鼓動だった。
「…
継の指示が止まったことで、周囲がざわめく。
聞き慣れない言葉。その意味を、誰もが意味を測りかねていた。
「王は生きてます」
一瞬の静寂の後、誰かが息を呑む。
誰もが、それを死者蘇生だと疑わなかった。
そして歓声があがる。
「皆さん、落ち着いて!」
継は一歩前に出る。
「確かに王は今生きてます。
でも、おそらくこの状態は死ぬまで続くと思います。
生命力も微弱、
回復魔法もたいした効果はないでしょう」
そして、王子の前に立った。
「貴方はお父さんのこの姿を見てどうおもいますか?」
王子はベッドの上の父を見る。
そこには、ピクリとも動かず、強制的に呼吸をさせられている王の姿があった。
胸には、焼け焦げた痕も残っている。
「父上…辛かったですね」
王子の目から、涙がこぼれ落ちる。
「でも…頑張ってくれて、
ありがとうございました!!」
反応のない父に向かって、王子は深く頭を下げた。
「頑張るのはこれからです。
多分、もっと辛いかも知れません」
継はそっと、王子の肩に手を置く。
「でも、声は届きます。
毎日話しかけてあげて下さい」
それは、とある夜の、ほんの十数分の出来事だった。
死者蘇生と呼ばれた力を目の当たりにした人々は、その現実を知ることになる。
一か月後、王都では国王の盛大な葬儀と、王位継承の儀が執り行われていた。
王が崩御するまでの間、継とラバンは毎日のように城へ往診に通った。
王子もまた、欠かさず父のもとへ通い、毎日声を掛け続けていた。
国のこと、民のこと、そして家族への労い。
返事はなくとも、その時間を大切にしているようだった。
しかし、衰えていく国王の生命力は、やがて限界を迎えつつあった。
ある日、王子は継を呼び出し、静かにこう告げた。
それは死を意味する。
だがそれは、ただ弱りゆく父を見るのが辛いという理由だけではなかった。
王子の表情には、確かに王としての覚悟があった。
継はそれを受け止め、頷いた。
そして、神の息吹を解除したのだった。
———
今、民の前で演説を行う現国王の姿には、確かな威厳があった。
一か月前と同じ人間とは、到底思えない。
「立派じゃなぁ」
「本当ですね」
二人は少し離れた場所から、その光景を見守っていた。
「人の死は人を強くも弱くもする」
「そうですね、それを支えるのが俺たちの役目ですから」
「継、何故あの時助けようと思ったんじゃ?」
「王子…いや、国王のあの時の言葉。
『父上ならきっと受け入れてくれる』、
あれはしっかりとした前国王の代弁です。
俺はそう受け取りました」
「そうじゃの。
人は親しい人間の死を目の当たりにすると、
命を諦める選択はどうしても難しくなる。
諦めるしかなくても、助けを求める」
「でも、それは悪いことじゃないです。
だから俺たちが選択できるように、
方法を提示するんです」
「なんと言ったか…いんふぁーすと…」
「インフォームドコンセントです、先生」
「そう、それじゃ、それ」
「あと、生きてる間にしっかり
話し合っておくことですね。
自分の最期はどうありたいのかを」
「じゃあ、ワシは不老不死にしてくれんか?
お前の医療魔法をもっと進化させてだな…」
「先生、それ、倫理に反してませんか?」
倫理とは何か。
その答えを持つ者はいないのかもしれない。
継はその言葉を胸に刻みながら、
今日もまた、生と死の境目に立つ準備をする。
完
看護師の俺が全属性使いとして転生。 そんなことは置いといて倒れてる人をROSCしたら、 死者蘇生と崇められたけど――それは倫理に反しますか? んご @Yn19870331
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