第8話ポテチっておいしいね

サンタクロースの件から一週間。家来になってしまったわけだが、実際これと言って変わったところはなく、全くいつも通りの日々を過ごしていた。しいて言えば


「あずきさん、朝です起きてもらえますか。あずきさん朝です」


悪魔のような寝起きの悪さをしているあずきを起こさなければいけなくなったことが、一番大変なことだ


サンタクロースの日の夜、この家にこれから泊まることを言われた次の日の朝、目を覚ますと俺の視界のおよそ半分は銃口だった。悲鳴も出ないまま、ゆっくりどけば、どうやったらこうできるのかと感心するほどの寝相で寝ていたあずきが拳銃を握っていた拳銃がたまたま俺の顔に向いていたということだった。


もし寝返りで、引き金を引かれてしまっていたら確実に俺は死んでいただろう


それから朝起きれば何か家具が壊れていたり、窓が割れていたりと、次第に俺が早く起きてあずきが何かやらかす前に起こすというのが日課になっていた。そして言った通り、その寝起きの悪いあずきを起こすことも、非常に大変なことなのだ


「あずきさん。そろそろ起きる時間になります」


いつも使わない不慣れな敬語をあずきに言うも全く起きる気配はない。


「あずきさん。起きないようですので、失礼させていただきます」


俺はゆっくりあずきの肩に手を伸ばし、揺らした。


この時に注意するのはあずきの体の反応にすべての意識を集中させること。


今、あずきの閉じた瞼がぴくっと動いた。俺は手を離し部屋の隅にいそいで離れる


あずきは低い声で


「触んな」


それだけ言ってまた静かになった。


「あずきさん。起きないのでしたらもう一度触らせていただくことになります。失礼します」


一度喋ったことであずきの意識は薄いだろうが、あるのが分かる。静かに再びあずきの肩に手を伸ばして


「触んな」


あずきはぱっと目を開き、伸ばしていた俺の手を強く握った。


「あずきさん。おはようございます」


「⋯ん、おはよう」


あずきは俺の手を離し、鼻から可愛い鼻息を出しながら目をこする。俺の手は青くなっていた


(よかったー。今日はこれで済んだ)


昨日は腹を殴られて、一昨日は何とか避けたものの何発か拳銃を撃たれた。それに比べればこんな青い傷なんてこともないものだ


「お風呂沸かしといたぞ」


あずきは朝風呂派なので、起きてすぐ入れるようにしておくとその日の機嫌がよくなる。これも試行錯誤で見つけたことだ


「ありがと」


淡白な感謝だけ伝えて、ややおぼついた足取りであずきは一回へ向かって行く。その背中が、俺にとって一番の安らぎを与えてくれるものになった




「ありがとうね。お風呂気持ちよかったよ」


バスタオルを首にかけて、現れたあずきはいつものあずきに戻っている


そして当たり前のように俺のベッドにゴロンと横になり、しおりの挟まった漫画を取りページを開く。


片手は、箱で用意された堅あげポテトを一つ取り、視線すら動かさず袋を開けて口に運びながら、ページをめくる。油で汚れるなどお構いなしだ


「前言ってたピザポテト試したか?俺あれが一番好きなんだけど」


寝ころぶあずきの横に腰掛け、俺もポテチをつまむ。


「おいしかったけど、もういいかなって感じかな」


段ボールにつまれたポテチ。これはすべてあずきのお金で買ったものだ。


競馬やボートで負けていると言いながらも、食へのお金は惜しまない性分らしく、もう一つもらおうとポテチに差し伸べた右手を、あずきはじっと睨んでいる。


「今度お小遣い貰ったら、ひと箱買うからお願い」


「ならいいよ」


買ったポテチは油断したらきっと全部あずきに食べられる。いつの間にか、空になり新しいポテチの袋に手を伸ばすあずきを見て、俺は確信した。


「学校っていつから始まるの?」


袋を開け、ポテチをばりばり食べながら聞く


「多分、来月かな。なんか学校に不審者が来て、いろいろ荒らしたみたいで時間がかかるみたいで」


「ふーん。じゃあそれまでは、私はここで待機かな」


「逆に学校始まったら何かするのか?」


「それはお楽しみ。あ、あとポテチ買ってくれるお礼に」


あずきは手についた塩をそっとなめながら


「今言った学校の不審者、私だよ」


それだけ言って、あずきはまた漫画に視線を落とし

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