第4話 君はサンタクロースがいないって思ってるの?

「駅に着く前に早く作戦を伝えたいんだけど。君と話すとすぐに話が脱線するね」


車内では、そろそろ到着のアナウンスが流れている。


「作戦って言ってもさっき言ってた、あずきが戦って俺がおとりだろ?別に他にないんじゃないか?」


人間である俺が、空高くにいるサンタを攻撃するのは絶対に無理なので、これ以上聞いたところで、さらに恐怖するだけで良いことは無い。


「聞く気が無いなら別にいいよ。言ってもすぐに君が死んだら、ただの徒労に終わってしまうからね」


お前がいいなら別にそれでいい。と言いたげなあずきは、ポケットからスマホを取り出して、イヤホンをつける。もう今言った徒労にならないように俺と喋る気は無いのだろう。そもそも人間と妖怪がしゃべっている方がおかしいし。


あずきのスマホはいたってシンプルで何の飾り付けもされていないさっき買ったばかりのような見た目だ。


妖怪が何を見るのか気になった俺は自分もスマホを取り出して、いじるふりをして、あずきのスマホをこっそり覗く。番号を付けた馬が必死に走っているところだった


ホームに着くと、あずきは無言で改札を抜ける。駅員は何も言わないので、他の人からは見えていないのだろう。俺も改札を抜けると車内とは比べ物にならないほどの数のサラリーマンが鞄を持ってところかしこに歩いてる。さっき俺があずきの話を遮って聞かなかったからなのか、あれからあずきは全く話しかけてこない。表情をあまり変えないので今何を考えているのかもわからない


(もしかしたら怒らせてしまったのか?)


一応、サンタクロースへの攻撃として俺を助けてくれえるわけだし、仲は良いに越したことは無い。


「こんな市外で戦うのか?」


「サンタクロースはただ人を多く殺したいだけだからね。街中を襲うのが手っ取り早い」


「朝この駅に来たことないけど、だいたいいつも通りだし、なんかやっぱりまだ現実味無いな」


まったくいつも通りな光景。俺は今夢を見ているのでは⋯そう思ってしまう


朝の銃声も、こいつもきっと、ゲームのやりすぎで疲れてひどい夢を見てるんだろう


「夢落ちなんてエンドは無いよ」


あずきは真顔で俺を見ながら、まるで思考を読んだかのように言う


「俺の頭読めるのか?」


「さっきいった怪異だよ」


部屋が戻ったりとかって言っていたのでてっきり、そういう物質的な現象だと思ったのに言われてみれば、思考を読んでくるのなんかもそういう系か⋯。驚く俺にあずきはさらに


「君が私と悪い関係を避けたいのも、全部知ってるよ」


なんだか恥ずかしく感じてくる⋯。誤魔化すようにうつむいたまま


「⋯なら何か喋ってくれても」


「徒労になったら嫌だからね。君が言ってた通り、妖怪と人間が仲良すぎるのも変だし」


本当にすべて読まれているのか⋯おそらく、いや絶対、今この思考も読まれている


「あっちからやってくるから」


あずきがそっと腕を上げ、濃い青が広がる水平線を指さす。


やはりそこも見慣れたいつもの景色だ


「妖力を使って1分に一度の間隔で撃つから、もし初動の迎撃を外したら1分間逃げ回るのが君の役目」


説明しながら、どこから出したのかあずきの正面にはすでに迫撃砲らしき重工のものがある。


これまたセットで置いてある弾を、あずきは説明書を読みながら挿入し始めた


「ちなみに使ったことはあるのか?」


「大丈夫。今回が初めてだから途中で壊れる心配は無いよ」


「あーいや、そうじゃなくてあずきが、その迫撃砲とやらの使用経験はあるの?」


あずきはもし外してしまっても、その次に当てるから俺は1分間逃げ切れば良いという前提で話している


。それは手慣れていて、命中率が非常に高い状態ならそうと言えるが、そうでない場合俺のおとり時間はあずきが当てるまでとなってしまう。


あずきは任せろと言わんばかりに親指を上げて「任せろ。本番には強い人・だから」と答えを濁す


「終わった⋯。てか人間じゃないだろ」


「最悪、言った通り君の死体は回収するから、みじめな醜態を知られることなく悔いなく死ねるよ」


「いやまだ悔いばっかだよ⋯」


多分死ぬ⋯。このでかい迫撃砲が必要な相手に、運用経験がない操縦者。


「それじゃ死ぬ前に、君の後生を使わせてもらって」


人の絶望など知ったこっちゃないと言わんばかりに手を俺の方に突き出して


「お金貸して」


俺の目を、その赤い瞳で凝視しながらそういった


「いやなんで死ぬと思ってるんだよ。お前が一発目で当ててくれればいいわけだろ」


「絶望してたからもういいかなって。死んでくれた方が私的には儲かるわけだけど」


何もためらいなく当たり前かのような顔でさらに俺に手をふいふい突き出してくるあずきは、やはり妖怪だ。人間ではない、そう確信した。そしてその瞬間、迫撃砲が鳴った⋯


勝手に耳を塞いでしまうような、人的な爆音が街に走る。


「来たよ。あれがサンタクロース」


指をさす海の上には、何やらそれらしきものがこちらに向かってくるのが薄く見える⋯そしてその瞬間⋯初撃を外したことに気づいた

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