@riko1212

とある8階建てのアパート。その一番上の隅。そこが俺の住む部屋だ。

夜になるとベランダに出て、夜風を浴びながら本を読む。毎日の楽しみだ。

今日も彼はやって来るだろうか?そんな事を気にしながら彼を待つ。

「やあ、友人。遊びに来たよ。」声がする。彼だ。

「ああ、友よ。こんばんは、良い夜だね。」8階建てのアパート。彼は屋上からぶら下がり、ベランダにやってくる。最初は一体どうやって?と考えたが、慣れてしまった。

いつものように、他愛もない話をする。

「そうだ、友人。合うのはこれが最後なんだ。」彼は静かに言う。「最後?随分と急だな。何かあったのか?」驚きはしたが、不思議で包まれてる彼の事だ、なんらおかしくは無い。「そうだね、まあ、ちょっと」やはりか。「実は、もう地球には居られなくなったんだ。」と寂しそうに俯く。「地球には?と言う事は、友よ、君は宇宙人か何かだったのかい?」そんな事を言われたら、誰だってこう返すだろう。「そうだね、宇宙人で間違ってはないよ。」「見た目はそんなに人間なのにかい?」そう、彼は人間にしか見えないのだ。一点だけ除けばだ。彼は仮面で顔を常に隠している事を除いて。

「理由はきっとすぐにわかるよ。それじゃあ、そろそろ時間だ。いつかまた会おう、友人。」待ってくれ、まだ聞きたい事、話したい事が沢山あるんだ。「またっていつだ?俺は友と話すのが大好きなんだ。急に居なくなられると寂しいよ。」素直にそう言った。

「すまないね、いつかはわからない。でもきっと友人の事だから僕の事を探すだろうね。本当にすまない。」そう言うと、パッと消えてしまった。目の前からだ。そこに何も居なかったかのように。

「どういう事だ?俺が探す?どうやって?」


これは、一人の青年が、大切な友達を探す物語。


彼が居なくなってから一年がたとうとした時、世界に異変が起き始めた。

未確認生物の襲来だ。

それは人を襲い、殺した人間を模倣し、そして、成り代わる。

目的は謎。賢くて偉い人達は、地球が侵略されていると騒いでいた。俺はすぐに思った。彼は、コイツらから逃げる為に姿を消したのではないのか、と。

そんな侵略者達に対抗するべく作られた組織。仮にA特殊部隊。少しでも彼の手がかりを掴めないかと、俺は入団した。成績は上場だ。とある班のリーダーを務めている。「隊長、お疲れ様です。今日も生が出ますね。」俺の班の団員だ。「ああ、日課だからな。お前もサボらずに頑張れよ。」「少しくらいサボったて大丈夫ですよ。なんて言ったて、隊長が居ますからね。ヤツラなんて怖くないですよ。」呆れた、コイツなんで入団したんだ?「馬鹿言うな。しっかりやれ。」キツめに言う。「じ、冗談ですよ!冗談!しっかりやりますって!」そう言い残すと早歩きで、訓練器具の置かれた場所へ向かっていく。


今日のお勤めも終わりが近づいて来た頃、警報がなった。「侵略者が出現!各班、急ぎ出撃の準備をされたし!」また来たか、最近はやけに多いな。仕方ない、殺るか。「お前達!準備は出来てるな!?」俺の班を集めて、確認を取る。

「はっ!みな、出撃準備完了しております!」「よし、遅れはないな!では、出るぞ!」6人編成の部隊だ。リーダーは俺。他の5名もそこそこ優秀だと思う。「今回は3人に別れて対処する!A!B!俺に付いて来い!C,D,F!貴様らはCをリーダーに動け!C!出来るな?」少し早口で言う。「はっ!やってみせます!」良い返事だ。

現場に向う。いつもの光景だ。人が数名殺された形跡がある。血の海だ。死体は無い。この近くに模倣した侵略者が居る。まずはヤツラを見つけなければ。「A!B!わかってるな!?」そう言うと、二人は特殊なゴーグルを装備する。これは体温を測る物だ。そう、奴らには体温が無い。それで判別する。俺もすかさずゴーグルを装着し、あたりを見回す。

「隊長!見つけました!あっちです!」Bが叫ぶ。「でかした!よくやったな。」こう言う時は素直に褒めるべきだ。ヤツラは人を殺し、模倣する。殺し方はワンパターンだ、心臓を刺し、喉をえぐる。そうして、吸収し成り代わる。

「確認した、今回は2体か。俺らで事足りる数だ!A!B!しくじるなよ!」そう言うと腰に付けていたホルスターから銃を取り出し、構える。ヤツラの弱点は、なんともまあ、簡単だ。人で言う脳を破壊すれば、死ぬ。「今回は近接戦闘は避ける!射撃用意!始め!」合図をする。銃声が3回。俺がヤツラの1匹を、Bがもう1匹か。「射撃停止!A、どっちを狙って射撃した?」「はっ、隊長と同じ方を狙いました。」なるほど、だからか。「A、頑張ったな。だが、壁を見ろ。」「はっ!」ここからでもわかる。Aの弾丸は少しズレていた。これではヤツラの脳には着弾しない。「Aよ、だからサボるなと言っただろう。」「はっ!おっしゃる通りでした…。すみません。」今回は俺が仕留めたから良いが…。「次の出撃までにしっかり命中精度をあげておけ。」そう言うとAは背筋を伸ばし敬礼をこちらに向けてくる。無線を繋げる「各員、聞こえるか!こちらで対処が完了した!撤収準備!」これで今回の件は終わりだ。早く済んで良かった。長引く時は長引くからな。


それから何年が立っただろうか。未だに彼の手がかりは掴めていない。侵略者は増える一方だ。どうやら人口の4割がやられたらしい。実感がわかないな。彼は今何をしてるのだろう?また話したい。あのゆったりとした、不思議で落ち着いた雰囲気の中での会話が思い出される。もういつの事だったか…。確かあれは…。


「やあ、友人遊びに来たよ。今日は寒いね。」「ああ、待っていたよ、友よ。全く連絡手段が無いのも困った物だ。危うく凍える所だっただろう?」季節は冬。すっかり寒くなった物だ。「はは、ごめんね。しかし、ちゃんと僕の事を待っていてくれたじゃないか、嬉しいよ。」そう、何故だかわからないが、彼を待つ時間は楽しくも思えてしまう。「今日は何を読んでるの?」彼が珍しく本に興味をしめした。「これかい?なんでもない古本屋で適当に買ったつまらないラブストーリーだよ、ありきたりだ。」そう言うと、少し胸がざわついた。なんだろうか。「ラブストーリー!良いじゃないか!僕は好きだよ、愛おしい人と話す時間。」ああ、そうか、そう言う事か。「俺は…いや、俺も好きだな。愛おしい人と話す時間か、うん、確かに好きだ。」俗に言う恋とはこれの事を言うのか、不思議だな。実感するとこんなにも嬉しくなる物なのか。「どうしたんだい?友人」そう言うと顔を覗いてくる。彼が仮面を付けていて良かった。顔を見れない所だっただろう。「なんでもないよ、ただ新しい発見をしただけさ」「それは、ますます気になるじゃないか!」少し嬉しそうだ。「いや、今は秘密だ。でもきっと友に教える時が来るだろうね」


いつの間にか寝ていたのか、もう懐かしいと思えてしまう夢を見てしまったな。だけども…。そう、だけどだ。彼を見つけなくては。日々の生活の中で薄れていた気持ちが、再び熱を持って覚悟に変わる。俺を突き動かす、この衝動。これだけは何年経とうが消える事は無いんだな。こんな大切な事を忘れそうになるくらい、毎日が慌ただしくなって来た。ヤツラだ。いくら倒しても、どこからか現れて、人を殺す。目的も不明、対話で解決しようとしていた組織もヤツラに潰された。意思疎通が出来ない訳ではない。ヤツラ曰く「どうしても人間を殺したくなってしまうんだ」と言うことらしい。サイコパスか何かなんだろう。実にやっかいだ。

カラカラ…。と、扉を開く音。

「隊長、お話があります。」Aか、どうしたんだ?「わかった、すぐに仕度を済ませる。10分後に訓練所でいいか?」「はっ、ありがとうございます。」銃の命中精度でも落ちて来たか?なんの話だろう。まあ、少し早く向うとするか。

「Aよ、待たせた。話とはなんだ?」「隊長、我々の部隊は今何人ですか」なんだ?今更。「4人だな」「わたしはもう、耐えられそうにありません。仲間がどんどん居なくなってしまいます。どうして隊長は平気なんですか!?悲しくは無いのですか!?」ああ、面倒な話だったか、仕方ないな。「悲しくはあるとも。しかし、俺は仲間を失ってでも掴みたい物がある。その覚悟だけで俺は生きてきた。これからもそうだ。」本心だ。

「掴みたい物…ですか…。では、それを掴んだら、隊長はどうなるのですか?」どう…なる…?いや、それは、まて、なんだ?掴んだら?どうなるんだ?幸せにはなるのか?いやしかし、彼が本当に見つかるとは限らないだろう。俺は…どうしたいんだ…?気持ちを伝えたいだけなのか…?「隊長、お顔が…」「す、すまない。大丈夫だ。掴んだらか…。そうだな。考えた事も無かったのが事実だ。俺とした事が、どうしたんだろうな。」何故今まで考えつかなかった?俺は馬鹿か?Aの言うとおりだ。掴んだとして、世界が平和になる訳じゃないだろう。じゃあ何故だ?「そうか…。自己満足だ…。」ポツリと声に出た。「隊長…?」「Aよ、感謝する。これは俺の自己満足だ。それだけの為にここまで頑張って来たみたいだ。」


少しの沈黙が生まれ、気まずい雰囲気の中を切り裂いたのは、警報だ。「侵略者が出現!各班、急ぎ出撃の準備をされたし!」また来たか。本当に多いな。しかしこの場を抜け出せて良かったと思えてしまった。情けない。「今回は…この基地か!?」ヤツラめ、ついにここを攻めて来たか。いつかは来るだろうと思っていたが、今日だったとはな。「各班、情報を集めろ!この基地をなんとしても守り抜くぞ!」いつの間にか俺は、俗に言う偉い人になっていた。叫び声が聞こえる。一つ二つじゃない、大勢のだ。ヤツラ、医療班をまず先に狙ったのか!してやられた!行動が早すぎる!「お前達!急げ!医療班を少しでもいい!救助するぞ!作戦会議をしている時間はない!各々の判断で動け!」「「「はっ!!」」」総動員だ。ヤツラ、一体どうやって医療班の居場所を特定した?くそ、考えてる暇もない!急いで殲滅しなければ!

…。

………。


ああ、なんて事だ。

元々人数が少なくなっていた、この基地だが、こうも簡単に壊滅されるのか…。だが、ヤツラも残り少ない、生き残りを集めて、他の部隊に合流すればいい。そうだ。まだ終ってないんだ。「残った物はヤツラを見つけ次第始末しろ!俺は一人で大丈夫だが、少しだ!少しでもいい!仲間を助けろ!一人になるな!最低でも二人で行動しろ!」確実に、この基地は終わりだ。部屋に一人残る。頭を使え。考えるのをやめるな。生き延びろ。

「やあ、友人」

背後から懐かしい声がした。

ゆっくり振り返る。

「友よ…。」

それは唐突にやってきた。

「友人、ごめんね。」

まさか、いや、そんなはず…。いや、それしか。

…。

……。

「…友よ、君は宇宙人と言っていたな。そうか、君も侵略者だったのかい?」

「侵略者、そう言われてるみたいだね。ああ、そうとも、侵略者だよ、僕は」じゃあなんでだ?「君が侵略者ならいつでも俺を殺す機会はあっただろう?」そう、あんなに何時も話していたんだ。

「そうなんだ、我慢していたんだよ、僕は。でもね。」彼は言い続ける。「友人、貴方に恋をしたんだ。」恋?彼が?俺の事を?「そうか、だからか。」納得がいった。「俺の前から消えたのは、殺したい衝動が強くなったからだね?」「流石友人、ご名答」なるほどな。そう言う事か。「君は俺に恋をしたと言ったね。」「うん。」「消えたのに、何故戻ってきた?」純粋な疑問だ。わからなかった。「恋とは、凄い物なんだよ。ずっと殺したいのを我慢しながら、君との時間を心の底から楽しんでいたんだ。この二つの気持ちがせめぎ合って、どうにもいかなくなったんだ。」ああ、この声、この雰囲気、懐かしい。「だから消えたんだ。友人の前から。」「そうか、わかった。しかしだ、友よ。どうして、俺が君を探すだろうと思ったんだい?」薄っすら気がついてはいる。「友人、だって、君は僕に、恋をしてるでしょ?」ゆっくりと、しかしハッキリとした声で彼は、そう言った。「…わかっていたんだな。そうか。ああ、そうだ。友よ、君に恋をしている。この気持ちだけで、生き延びて来たんだ。」もう、駄目なのか?「はは、やっぱり」「戻ってきたって事は、そう言う事なんだろう?」不思議と確信が持てた。「友人、そうなんだ。愛しているから、君を殺す事にした。」だろうな。「友よ、俺を殺した後はどうするんだい?」「簡単さ」彼はまっすぐこっちを見てそう言うと、俺の胸には友人の腕が刺さっていた。「君になるんだよ」ああ、そうか、彼も、侵略者、だもんな。「…友よ。最後に一つ。愛している。ずっと。」やっとの思いで、言葉が出た。「友人、わかってるとも。僕も貴方を愛しているよ。」ああ…嬉しい…これが…恋か…。わからないが、少なくとも、俺は幸せを感じている…。これで、いつまでも、友人とし生きて行くんだな…。嬉しい…嬉しいなあ…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

@riko1212

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ