この物語のネクロマンサーは命を自在にできるような万能の支配者ではない。
主人公は自分を拾い育ててくれた人の死を見送ることになってしまう。
育ての親、後見人、恩人である老人の遺体を棺に入れ、オリーブの木の下に埋めたその時から、主人公の旅は始まる。
主人公はネクロマンサー。人里離れた場所にずっといたためか、ずいぶん長く生きているけれど、中身は少女そのもので、見た目も幼く美しい女の子に見える。
彼女はずっと後見人と二人で潜むように生きてきた。その彼女が外に出た動機は、後見人が遺した手紙を、宛先に届けるため。世間から離れていた少女の一人ぼっちの旅が始まる──
この物語には優しい人々がたくさん出てくる。
だが、主人公がネクロマンサーだとわかった瞬間に、掌を返す。
ところどころに散りばめられる死の気配。優しい人たちが奥底に秘めた、異物に対する強い拒絶反応から垣間見える暗い雰囲気がたまらなく胸を刺す。
一見平和で、一見誰もが優しいこの世界。しかし、ネクロマンサーという存在がシーンに登場した瞬間に強烈に見える世界の影。
光が強ければ影がより濃くなる。
無垢で『理想主義者』のネクロマンサーである彼女が、世間の光と影にさらされ続けどう『成長』していくのか。
主人公とともに世界のことを一つ一つ知りながら、是非とも読み確かめてみてほしい。
(「10テーマ小説コンテスト」骨太ダークファンタジー部門 講評4選/文=稲荷竜)