ネクロマンサー〜手紙が紡ぐ旅路〜
西瓜すいか
序章 旅立ちへ〜暖炉の家より〜
第1話『神話の嘘』
神が大地を創り、天を創った。
海を創り、山と川を創り、そして、生命を生み出した。
生命は神の恵みを受け取り、生活をし、神により”生”が与えられていた。
やがて、恵みの奪い合いを行う争いが始まった。争いが絶えないこの地を見て、最初の世界を創った神はこの地を捨てた。
同時に、この世界が生命自らの力で存続することを願い、双子の神様を創造した。
それが”生”と”死”の神である。
そして、生命は自身で新たに生命を生み出すことができるようになり、同時に死という概念がもたらされた。生命は死という概念から逃れることはできなかった。
神もまた、”生”と”死”という概念から逃れられなくなった。
そして、”生”と”死”はこの世にある生命を用いて、10人の子供を創り出した。10人それぞれに”生”と”死”を司る力を与えられた。
その力の正体は不明であるが、一つ言えるのは、そのものたちは不死身であるということだ。
そのものたちは後の時代に”ネクロマンサー”と呼ばれ、時には救済を時には苦痛を与えた。
”ネクロマンシー”という力を使うことができる者たちはその力を必要とする者の目の前に現れると言われている。
『世界創造神話ーネクロマンサーの誕生より』
「この神話で確実に間違っているところは、不死身であるというところだろうねぇ。」
暖炉に腰をかけ、杖を持った老人がそうつぶやく、彼こそがネクロマンサーの一人、アレントである。彼は亡くなった人の魂をこの世界に呼び寄せることができた。しかし、彼にできるのは、その魂と会話することであり、彼自身はネクロマンシーがそれほど強い部類ではないと思っていた。
彼は死を悟っていた。800歳まで生き、たくさんの地を徘徊したが、700歳を超えてからは隠居生活を送っていた。彼がネクロマンシーを使ったのは、もう50年前になるのだろう。
彼にとって、ネクロマンシーを使い、人々を救う生活も性に合っていたが、自身の家を持ち暖炉の前でゆったりと過ごす生活ほど幸せな時間はなかった。
「アレントさんは、死んじゃうの?」
ある少女が老人を悲しそうな顔で見つめた。彼女の名前はフリージアである。彼女もまたネクロマンサーだった。彼女が50歳の時、森の中を彷徨い続けていた頃にアレントに拾われた。同じネクロマンサー同士、気配でなんとなく分かるのである。
「そうだよ。そろそろかもしれないねぇ。」
アレントは微笑んで言った。
「嬉しいの?」
「嬉しいわけではないさ。ただ、もうそろそろだと思うと、なんとなく、受け入れられる気がしてねぇ。」
そして、アレントはフリージアを見てから頭を撫でる。結局、アレントは一時的にと思い、フリージアと一緒に過ごしたが、そこから100年ぐらいは一緒に生活を共にした。50歳と言っても、幼子の姿をしており、人から離れていたため、知識がなかった。人として、食べることを教え、寝ること、買い物をすること、会話すること、さらには文字など様々なことをフリージアに授けたのだ。
アレントの唯一の心残りといえば、フリージアが今後一人で生きていかねばならないことにさえなっていた。アレントとしては、フリージアに死ぬところを見せたくない。しかし、フリージアは最後までいると言って、頑なに意見を変えようとはしなかった。アレントの言うことは、基本的には聞いてきたものの、それだけは譲れないらしい。
アレントはフリージアに言った。
「私が死んだら、新しいネクロマンサーがこの世界に誕生する。」
「まだ、先の話でしょ?」
フリージアは少し不満げに暖炉に薪をくべながら、そう言った。
「でもね。フリージア。その新しいネクロマンサーは一体、どんな運命を辿るのか気になるのさ。」
「まだ、生まれてないよ。」
「うん、そうだね。」
「どうして気になるの?」
「ネクロマンサーは人との共存が難しいからね。」
「そういうものなのかなぁ?」
「そういうものだよ。」
フリージアは自身の持っている拳銃を撫でる。彼女はこの拳銃に自身のネクロマンシーを封じ込めていた。フリージア自身が幼い頃にその能力のせいで迫害されたという過去を持っているが、力の制限を行っている今であれば、人間として生活もできるのではないかと思っていた。
アレントは懐かしい目をしていった。
「各地を旅していたけれどね。結局、私は私の居場所を人の中に見つけることはできなかったんだよ。どこにいっても、余所者という感じだった。……あのときに会ったネクロマンシーたちは今はどうしているのだろうね。」
「じゃあ、私が会ってくるよ。」
フリージアの予期しない発言にアレントは驚いた。そして、その後微笑んでいった。
「じゃあ、手紙を書かなくてはいけないね。それと、フリージア。君にも、他のネクロマンサーたちのことを教えないと。」
アレントのその発言を聞いてフリージアは大いに喜んだ。
暖炉の薪の燃える音がする。薪という燃えるものがなければ、徐々に消えていく。まるで人生そのものを表しているようだった。
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