【RTA解説】初夢死亡RTA(Any% たぶんWR 6:54:18)

枝栗実@現在撃沈中

【RTA解説】初夢死亡RTA(Any% たぶんWR 6:54:18)

◇前書き


 皆さんは、『初夢における縁起の良い夢tear表』をご存知です。


 恐らく、実家に帰省した際に、親戚のドパガキが見せてきたと思います。

 もしくは、貴方がドパガキで、それをスクロール中に見つけたのかもしれませんね。


 どうしても思い出せない残念な人は、これを機に、記憶に刻みつけて下さい。


──────────

S:富士

A:鷹

B:茄子

C:扇

D:煙草

E:座頭

──────────


 この表です。

 見たことありますよね?


 実は、このtear表には、更に上であるS+が存在します。


 これに関しては知らない人が多いと思います。


 では、そのS+には何が当てはまるのか。


 本作をご覧の皆さんには、もうお分かりですね?


 そう、『死ぬ』夢です。


 初夢で死ぬと、新しい自分に生まれ変わると言われています。


 はい。


 今、『どうせ架空の縁起で、死んで転生するというオチでしょ?』と、思いましたね?


 思った人は、一度この画面を閉じて検索してみて下さい。


 思ってない人も検索して下さい。






 ・・・・・・ね?


 初夢で死ぬと縁起が良いという話は、実際に存在する言い伝えなのです。


 ですが、舞台は夢の中。


 実際に初夢の中で死ぬというのは、中々高難易度な挑戦であると言えましょう。




 そこで今回は、寝ることが趣味の、プロの夢走者が、実際に初夢で死ぬまでのプロセスを、RTA形式で書き起こしてみました。


 では、ご覧下さい。




◆本編


 計測開始は目を瞑ったタイミング。


 タイマーの起動音を確認した後、意識を底の方へ沈み込ませていきます。


 現実で死ぬ時も、こんな風に意識が消えていくのだろうかと、考えてしまう人も多いのではないでしょうか。




 気がつくと、テレビの前で、家族と食卓を囲む風景。


 珍しい光景です。


 今回は三人称の夢ですね。


 一応解説しておくと、夢には一人称と三人称の二種類があり、どちらになるのかは、完全ランダムとなっています。


 タイム的には一人称の方が楽なのですが、初夢RTAはリセットを許しません。


 このまま続行しましょう。




 さて、テレビの内容ですが、よりにもよってM-1。

 テロップには『|─:ン〒:□ルテ』とあります。

 夢なので、文字がぐちゃぐちゃになっています。


 一見すると楽しい夢の様に見えますね。




 ですが、これはまずいことになりました。


 笑う門には福来ると言いますが、笑う夢は疲労のサインです。


 疲れた状態では、福を迎える準備が難しくなります。


 笑わないようにお祈りをするしかありませんね。




『・・・・・・聞いてください。親ガチャは、存在しません』


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・・・・」




 家族揃って真顔ですね。


 現実での、家庭環境の悪さが幸いしました。


 こういった逆転現象が、初夢RTAの醍醐味と言って過言ではありません。


「・・・・・・友達には、初詣とか誘われたのか?」


 口を開くのは父親。

 ノンデリ発言によって空気が沈み込みます。


 ちなみに、夢の中なので、M-1が大晦日に行われているようですね。


 それにしても、これは良い兆候です。


 夢の中ではメタ認知が難しいため、純粋に自殺へと誘う言動はタイム短縮に繋がります。


「俺の友達は、ほら、住んでる所が離れてるからさ」


 嘘です。


 実際のところ、友達は皆、彼女と共に初詣へ行ったようでした。


 この夢の世界でも、きっと同じでしょう。


 事実を再認識したことで、かなり落ち込んでいるようです。


 今回は自殺チャートで進めていきましょうか。




 場所を変えまして、JR尼崎駅の一番ホーム。


 仄暗いコンクリートの上を、親戚と共に歩いています。


 慣れ親しんだ通学路なので、やけにグラフィックが安定していますね。


「じゃあ、それではまた、お盆に」


 帰省が終わり、家へと向かうところのようです。


「・・・・・・・・・・・・」


 老婆が話しかけてきます。


 適当に相槌を打って、会話を流しましょう。




 電車が到着しました。


 家族を含め、誰一人として乗り込もうとしません。

 彼らと離れられるチャンスですね。


 一人で乗り込みます。


 扉が閉まりました。


「なんで」


 誰が言ったのかはわかりませんが、そんな声が響きます。


 電車が走り出し、車内に孤立しました。


 ふと車窓を覗くと、大勢の人々が追いかけてきます。


 顔は判別がつきません。


 大して重要ではない存在なのでしょう。




 次の瞬間、山道に転移しました。


 夢の中は、このように移動時間を短縮できるので、非常に走りやすい環境です。


 ただ無心に上へと登っていきます。


 良い流れです。


 鳥居が見えてきました。


 悪い流れです。


 整備された道を外れ、獣道を進んでいきます。


「なんで」


 鳥居の陰から、白装束の人々が次々と出てきました。


 もし彼らに捕捉されてしまうと、操作が効かなくなってしまいます。


 だから鳥居を避けて歩く必要があったんですね。


 草木をかぎ分け、岩を乗り越え、■■■■を踏み潰します。


 ■■■■はひび割れ、くしゃくしゃの中身が飛び出ます。


 死んだ老婆の顔が、くしゃくしゃになっています。


 これは喜ばしいことです。


「なんで」
















 山頂に辿り着きました。
















 目の前には、一人の少女が立っています。
















「[聴取不可]、待って」
















 邪魔です。
















「止まって」
















 妹を押し退け、崖に向かいます。
















「なんで」
















 少女が裾を掴んできます。















「やめて、[聴取不可]。兄さんを殺さないで」
















 死人が離れません。









 穢れが落ちません。






 崖に飛び込めません。




 遊びが終わりません。


 夢から目覚めません。

 タイマーが止まりません。

 記録を狙う事ができません。

 周囲に自慢する事ができません。

 どうかその手を離して私を自由にして下さい。どうか彼を自由にしてあげて下さい。彼を生まれ変わらせてあげて下さい。そんなにおもちゃにされるのが嫌ですか。そんなに彼で遊ぶのが駄目なのですか。始めたのは貴女です。貴女が始めたのです。別に現実で死ぬわけではありません。ただ貴女が勝手に死んだせいです。ただ遊ぶ相手が変わっただけなのです。さあ離して下さい。もっと彼で遊ばせて下さい。私は無害です。ただ彼で遊びたいだけなのです。貴女が私で遊んだように私が彼で遊びたいだけなのです。
















 これはゲームです。
















 ただのゲームです。
















 ■が飛び散りました。
















 目が覚めました。


 タイマーストップです。


 記録は6:54:18。


 たぶんワールドレコードですね。


 知らんけど。


◇後書き


 さて、完走した感想ですが、中々良いタイムが出たのではないでしょうか。


 途中邪魔が幾つか入ってしまいましたが、それも全て、今回で消え去りました。


 来年の再走が楽しみです。


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 また、記憶を消したい故人がいる方は、こちらまでご連絡下さい。

 縺セ縺後→繧阪≠縺」縺ィ縺倥@gmail.com


 ではまた、次の走りでお会いしましょう。


 バイバイ。

 

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