異世界自衛官戦記~日本人がやらかした世界、迫害されるのなら畏れられればいいじゃないかと美少女と奮闘したおっさんの話

山田 勝

プロローグ 

 この戦いが何故起きたのか分かっていない。

 歴史家ならば単に物資を求めたからと云うであろう。

 宗教家なら、業(カルマ)というのかもしれない。


「お嬢様!大変です。魔王討伐軍がこちらに向かっています!要求は女と金、食料を寄越せとのことです。でなければ都市を一つ略奪するとのことです」

「ど、どうして、お父様、お兄様たちは戦死、物資も供給したのに、これ以上何を求めると言うの・・・」



 ギュニー伯爵領の重要都市メンヒルに魔王軍討伐隊の一隊が向かって来た。


「敵は懲罰兵団の狂犬団です。少なく見積もっても三千人でございます・・」

「懲罰兵団、凶悪な盗賊、囚人から編成された部隊だと」


「そんな。どうして、小勢しか残っていないのに・・」

「お嬢様、だからです・・・」


「援軍よ。冒険者ギルドに依頼を出して」

「お嬢様、他の領も同じ状況です。冒険者ギルドも・・・・」



 しかし、この領地のクエストを受ける者がいた。


「黒髪族が受けてくれた」

「等級は何だ。勇者級なら何とか・・・」

「スローライフ級です。しかし、異世界の騎士団出身です」

「まあ、もしかして・・・人数は?」


 黒髪族、一説には女神様が統治する外の世界から来た者、不思議な知識と力を持っていると云う。 朗報が持たされたが、来たのはたった2人だった。


「松永・・・いや、康夫・松永です。転移前は自衛官と傭兵をしていました。・・」

「と助手のエスダ、帳簿係だよ」


 三十過ぎのおっさんと十代の少女の2人であった。


 令嬢は膝をつき両の手の平で顔を覆い泣き出した。

 人は絶望の中で希望が潰えたら更に絶望は深くなる。

「グスン、グスン、グスン・・・異世界の騎士が1人・・・だけ。まだ、下等遊民ニート級がマシよ!」


 令嬢は奥に下がり執事長が対応する。


「戦うのはマツナガ殿お1人か?」

「いいえ、エスダは戦闘補助です。二人分頂きたい」

「クエスト内容は理解されているのか?」

「ええ」

「まさか、報酬は先払いで逃げ出す気では?」


「失敬な。成功報酬は後でもらうぜ。メンヒルを防衛したら上乗せしてもらいたい」

「分かった。好きなように」


 都市を一つ失った。我々はよくやった。傭兵団は都市一つで満足するであろうと執事長は思った。

 後3日で都市に来る。王国から見たら小規模な都市だ。


「指揮官待遇で、外で迎え討ちます。兵の指揮権を頂きたい」

「分かったが老兵と見習い200人しか残っていないぞ」

「それで良いです」」


 松永はたった百余名を連れ。領都郊外に布陣した。

 逃亡者多数、半分だけ残った。


 開戦当日、都市メンヒルの前の草原で陣を作った。傭兵団も好機ととらえ布陣。

 戦端が勃発した。

 傭兵団は迷うことなく攻め立てる。



「ギャハハハハ!野郎ども!女はあそこにいる!かっさらえ!」

「突撃だ!」


 カーン!カーン!カーン!


 銅鑼がなり。兵を鬨の声をあげ襲いかかった。


「「「ヒャハーーーーーー!」」」


 三千対百人である。



 実のところ、この戦いは年代記に記されていない。

 もし、記すとしたら、人魔大戦第八次魔王討伐時に一兵団が暴走し友軍を攻撃した。

 の一文だけだろう。


 だが、この戦いの勝敗を記すとしたら理解に苦しみ。戦局まで記すとしたら困難を極める。戦争は三十分で終了した。

 傭兵団三千対メンヒル伯爵軍百余名、メンヒル伯爵軍勝利。

 女神様の奇跡としか書きようがない。




「団長!今夜は家で寝られますぜ。女付だ」


「ギャハハハハハ!馬鹿め籠城すれば長持ちしたのによぉ~といっても1日だ。ここでのんびり時間を潰して魔族領に行けば罪ももみ消されるぜ!」



 ・・・全く良い世の中になったものだぜ。俺はコツコツと畑泥棒から初めて追い剥ぎ、強盗と何でもこなしたがよ。人魔大戦で傭兵団長までなったぜ。魔王討伐は全てに優先される。

 女神様は俺の努力を見て下さっていた。


「団長・・・気になることがありますぜ。変な情報が上がっています。冒険者の中に黒髪族が一匹おります」


「はあ、ほっとけ。何級か?勇者級、聖女級は魔族領だ。どうせ。スローライフ級か、下等遊民級ぐらいだろう。100人で片がつく」


「いいえ。スローライフ級ですが・・・異界の騎士団出身だそうです。斥候からの・・」


 部下の報告の最中。爆音が響いた。


 ズドーーーーーーン!


 一発の爆音であるが、四発同時に爆裂した。それは視覚から分かった。


 黒煙が4つ攻撃軍のはるか前で立っていたのだ。


「おい、馬鹿か?この平原で爆裂魔法を使っても意味ないぜ。馬鹿だな。おい、魔道士、戦局を見る。指を貸せ」


「ヘイ!」


 魔道士が指で輪を作る。その中をのぞくと望遠鏡のような効果があるのだ。



「おう。何だ。兵が止っているぞ、な、何だありゃーー」


 思わず叫び声があがった。

 攻めかかった傭兵団は全滅していた。総勢3000人である。

 騎馬も重装歩兵、軽装歩兵も皆地面にふしていた。


 草原中央には爆裂魔法の跡はない。



「異世界人がらみの力か!もっとよく見えるようにしろ。異世界人を探す!」


 敵陣地を見ていたが、マダラ模様の奇妙な服装の者を見つけた。

 全身マダラもようだ。


 彼は小高い丘に毛布を引き地面に伏していた。


 しかも。


「な、何だ。杖を逆さまに持って、こっちに構えてやがる・・・俺を見ているのか?」


 不気味な。何もかもおかしい。と思った瞬間。


 バシュン!


 魔道師の指と団長の顔がほぼ同時に破裂した。


 実態は、魔道師の指の輪と団長の右目を7.62ミリ弾が貫いたのだ。


「ヒィ、何?何が起きた・・・」

「魔道の射程範囲外だ」

「どんだけ離れているんだよ!」




 ☆メンヒル伯爵連合軍


 寝撃ちの体勢を取っている松永を跨ぎ助手のエスダが立っていた。両手で定規を地面に対して平行に持ち。まるで大きさを測るように敵本陣を定規越しに見ていた。

 実際測っていた。但し、単位はミルである。メモリで距離が分かる。ミルとは照準具で使われる単位だ。


「フウ、エスダ、ご名答だぜ。距離450メートルピッタリだ。胸を狙ったけど頭をやったのは俺が未熟だからだ」

「うん・・誤差もあるよ」


 領地の名ばかりの軍団長は尋ねた。


「ま、マツナガ殿、敵は・・・敵は・・・・全滅?」

「いんや、まだだ。まだ、うごめいている奴がいる。3人一組で、生きている奴を殺せ。戦利品はその後だ。目的は一つだ。OK?」


「りょ、了解」

「マツナガ殿は?」

「ああ、このまま、敵の首脳部を撃つよ」


「あの予備の爆裂魔法の元は?」

「おう、指向性散弾な。俺が片付けるからそのまま、雷管がついているからいじったら・・・」


「【ドカーン!】だぜ」

「ヒィ、絶対触りません!」



 真相は、指向性散弾による敵の撃滅・・・セオリーじゃない。

 指向性散弾とは地面に露出した地雷、米軍ではクレイモア地雷である。


 自衛隊は、対人地雷禁止条約が調印されてからも指向性散弾だけは維持した。


 クレイモアとは比較にならない大きさだ。

 しかも、手動で起爆することが出来る。地面から露出し手動だ。だから、地雷ではないのである。


「敵は殲滅したか・・・問題はこの後だな」

「うん」


 俺は松永康夫、エスダと手をつなぎメンヒルの城門に向かう。


 どうなるか?いつも、この能力のせいで怪訝に見られていた。


 門が開いた。飛んで来るのは罵声か?石か?身構える。


「ジ、ジークマツナガ・・・」


 出むかえた一人が言うと。


「「「「ジーク、マツナガ!ジークマツナガ!」」」

「真の勇者様だ!」

「いや、勇者を超えた!」


 俺の視界は涙で曇った。長かった。


 俺が感動するには理由がある。一言で言えば嫌われていたのだ。同族が銃で乱暴を働いていたのもあるが、


「エスダ、結婚しよう」

「無理・・・」

「えっ、やはり歳の差か?それとも他に好きな人が・・・」



「もう、慣習上は結婚している・・よ。何度も臥所ともにしたよ・・だから結婚するには離婚しなければならない・・よ。それは嫌だ」


【エスダ!】


 まさか、野営で一緒に寝たことがあったが、そんな慣習があったのか?やってないけど良いのか?


「でも、書類上は・・・追認になるね・・」


 俺はエスダを抱きしめながら歓喜の歓声に埋もれるようにエスダと出会った刻を思い出した・・



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