Hello, Alternative World.
七理チアキ
上――
異世界転生。
という概念が在る。死に様は様々、何でも良いのだが、
俺は頭を駆け巡る激痛に堪えかねて、うっ。と身悶え意識が覚醒し始めたところだ。どうやら横になっている姿勢のよう。背の感触がめっちゃ硬い。
頭痛。この痛み、頭が割れるどころの話ではない。
ううん。そうさな。
ずきずきずんずん。頭痛に対抗すべく、門を閉じるようにして眉間に皺を寄せるばかりで、瞼を持ち上げることも叶わずにいる。
俺は死んで、そんで異世界転生している。元いた日本東京とは異なる世界の
何故ならば、先の酷い頭痛に不協和音が伴い、俺の頭の中に響き続けているからだ。その不和の音の止む気配が、一向に見えないからである。
普通に考えれば当たり前のことだ。記憶を持ち越しているのならば、脳の機能がまるっと転送、転移していると考えるのが自然。痛みとは体の
脳の機能がまるごと異世界に来たのなら、脳が検知していた痛みもまた付帯していて何ら不思議ではない。痛い、という感覚がまだ残っているんだろう。
十中八九、俺は死んでいる。頭が西瓜のように、石門のように割れているのだ。死んでいて当然である。にも関わらず俺の意識は覚醒しつつある。と
不意に肌寒さを感じ、この身がどのような状況に晒されているのか気になった。今の俺にとって瞼を持ち上げるというのは、頭痛に堪えるための儀式である眉間への皺寄せを一度解除し、別の手段で痛みに抗わなければならない。そういう決死の覚悟のうえでの行動である。
何とか鉛の如き瞼を持ち上げて、自らの体をまんじりと見やる。見ようとするのだが、しかしまだ視界がぼやけている。ぼんやりと浮かび上がる俺の体に、黄土色がベースの至極複雑なモザイク柄が広がっている。ように見えた。
成る程。ナイロンやポリエステルといった合成化学繊維が存在しない文明で、
じゃあ、他には。その他はどうであろうか。
ぶろん。滲む視界の中で、白い塊が一つ駆け抜けた。あの走行音はそれなりの質量を伴ったものだと俺は思う。車輪も有しているか。
持ち越した記憶の中から近しいものを結び付けるならば、乗用車、と呼称するのが最もしっくり来る。不鮮明だがシルエットはしゅっ、ぐんっ、しゅっ、としていたのでセダンタイプに近い。
白いセダンを思わせる何かが俺の目の前を通り過ぎた、というわけだ。
この地の文明は何だかがちゃついている。衣服の観点で見れば黄土色のぼろ着という、イザナギとイザナミがゲバ棒? いや、そりゃ失敬か。木の棒、ではなかったよな。であれば、矛か? 取り敢えず長っ細い何かで大海原を掻き回してオノゴロ島が出来上がった。そのあたりの時代であろうか。流石にもう少し後? ヤマトタケルノミコトらへん? あんまし変わらんか。
兎も角、装束のレベル感は古事記の世界観なのに対して、移動手段は乗用車である。車輪を持った塊が、俺の記憶の中にある自動車と同じく、時速六十キロメートルだかで駆け抜けたのだ。この落差は何だ。ぼろ着と車輪走行体。これは文明のがちゃつき、Chaos Mixである。がちゃついた文明は、キマイラと謂う他ないのだ。
まあいい。俺の身体感覚以外に、二つも外的な情報を得られた。
もういい。ぶっちゃけ、陽光が目に刺さる感じがして頭痛が余計に酷くなるので辛い。どうせ目を開けていても視界がぼやぼやしているし。もう一度瞼を下ろし、眉間に皺を寄せて痛みに堪えるための防御姿勢に移行することにしよう。
さて。俺が異世界に転生している、ということはこれまでの情報の羅列から疑う余地も無いだろう。持ち越しは記憶と死の痛み。新天地はキマイラ文明。
では、死ぬまでの俺に関する情報を整理してみよう。そうすることに依って、この世界のBrand New俺、という存在に発現する技能を認知できるってわけ。
もそもそ、死ぬ前の俺が何者であったか。
おお。問題無くするっと出てくるではないか。良いぞ。
次。その上条ナツキ(29)は何をしていた? バンドだ。うん、音楽活動をしていた。ギタリスト。
悲しいかな、それ一本では食って行けぬのでコンビニエンスストアでアルバイトをしながらではあったが。確かにバンドマンである。
ほほ。なんか尋常でない状況のわりに、するすると記憶を手繰り寄せられるではないか。よきよき。
で? どんなバンドだったか、だ。
俺が所属している。否、もう死んだんだから所属していた、か。
俺が所属していたのは、オルタナティブロックバンド『
今時分の多様化し尽くしたRockに対し、何をもってして
それよか。俺、上条ナツキというIdentityについて認識が改まったところで、いよいよ、
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