産まれる前の卵を自我を守る檻に見立てた、不条理ラブストーリーでした。
世界を拒否する恋人と、彼を盲信する「僕」。「僕」の期待と愛の重さに耐えかねた恋人は自己否定へと走ります。その逃げ込んだ先の美しい卵の中で、恋人は孵る寸前まで思い悩み、遂に崩壊してしまいました。
孵ったあとの描写がすさまじく、いったい「僕」は何を見て誰を愛していたのだろうと戦慄します。恋人は自己崩壊してまで「僕」の愛を拒絶したのに、それすらもこともなげに飲み込まれてしまう、思いが届かない無力感。一見このストーリーは卵になった恋人の物語と見せて、やはり「僕」の物語なのだろうと思いました。結末で不条理の焦点が反転する構成が見事でした。