そして、グラスをかかげる
満月 花
第1話
妹は私から奪っていく。
ぬいぐるみ絵本も親の愛情も、そして大切な人たちも全て。
私と違い、可愛いくて甘え上手な妹は何でも簡単に手に入るのに。
私から取り上げる事をやめない。
そして今度は将来を誓い合った恋人を取られた。
私には不釣り合いな程の男性だった。
夢の中のような日々。
私の全てを愛している、幸せにすると熱く語ってくれたのに。
あっさりと妹の誘惑に堕ちた。
ただ、「君の幸せを願っている」と言って。
勝ち誇った妹の顔を忘れない。
あれから、二年。
穏やかな人と出会ってささやかな幸せを送っている。
さすがに妹はその男に手を出さない。
元恋人よりも全てが格下で地味でさえない。
二人で両親に挨拶しに行くと、居合わせ妹にお似合いだと祝福された。
妹にとって私は敗北者だ。
妹も、もうすぐ結婚するらしい。
二人の結婚前のパーティーに呼ばれる。
煌びやかな雰囲気に場違い感が否めない私と彼。
挨拶に周る妹は見せびらかすように自分の幸せをアピールする。
そんな惨めな気持ちの中で
元恋人が、優しい表情で一言
『幸せか?』と聞く。
もう妹の脅威に晒されない。
これからはじまる穏やかな生活は幸せだと思う。
頷く私に、元恋人は私達の幸せを願った。
*
かりそめの宴が終わった。
男はホテルの部屋から、夜景を見下ろしながら
首元を緩めた。
良かった、彼女は幸せになる。
男は心の底から彼女を愛していた。
でも、彼女は常に不幸の種を抱えている。
自分は幸せになれないと、確信してる。
その不安の原因は直ぐにわかった。
あの妹がいる限り。
彼女は幸せは破壊される。
常に姉を見下す事が楽しくてたまらない。
妹の価値は、姉を踏みつけることで成り立っている。
姉から恋人だと紹介されて、すぐに俺に擦り寄ってきた。
あざとい姿態で己の魅力を信じて疑わない、醜悪な存在。
たとえ、断ったとて解決にはならない。
きっとありとあらゆる手で彼女の幸せを潰そうとするだろう。
だから、枷を付けた。
妹を選び婚約者として縛り付けた。
愛する彼女が今度こそ奪われない幸せを見つけるために。
彼女の側にいたのはつまらない男だったが
彼女を大切にしてるのは見てとれた。
彼女の幸せを見届けたら、あの女を始末する。
身持ちの悪い女だ。
どこぞの男と居なくなったとて、周りはあり得ると思うだろう。
今から根回ししなくては。
俺は彼女が幸せになればいい。
どうしても彼女を欲して、渇くのなら
取り戻す手段なぞいくらでもある。
グラスを掲げる。
「幸せに……」
今はただ彼女の幸せを祝う。
そして、グラスをかかげる 満月 花 @aoihanastory
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