番外編① 危険なお留守番
1
「え?今日帰れないの!?」
夕食を食べ終え、櫂理君とリビングでくつろいでいたところ。
突如掛かってきた母親からの電話に出ると、第一声に言われた言葉を私は思わず大声で復唱してしまう。
それに反応した櫂理君は、ソファーで寝そべっていた体を即座に起き上がらせ、私の側まで近寄ってきた。
「どうした?」
それから暫くして通話を終わらせると、間髪入れず櫂理君の質問が飛んできて、彼の方に視線を向けると、何やらいつになく目を輝かせながらこちらを見てくる。
「えと……電車が信号機トラブルで止まったんだって。暫く再開目処が立たないみたいだから、今日はホテルで一泊するって」
そんな圧に押されながら、私は先程言われたことをそのまま櫂理君に伝えると、彼の目の輝きは更に増した。
「つまり、莉子と朝まで二人っきりってことか!」
そして、今にも飛び跳ねそうな勢いで現状を突き付けられ、私の体は急激に熱くなっていく。
今日は父親が県外出張で一日帰って来ない。
なので櫂理君が言うように、これで母親も帰って来なければ、今夜は櫂理君と二人でお留守番ってことになるんだけど……。
「とは言っても十時過ぎてるし、明日も学校だから、もう寝よっか?」
櫂理君がやけに強調してくれたお陰で、変に意識してしまう自分が恥ずかしくなり、私は気持ちを誤魔化すためにその場から立ち上がる。
けど、それを許さないと言わんばかりに、櫂理君に腕を掴まれてしまい、そのままソファーへと引き戻された。
「逃げんなよ。またとない機会なんだし、久しぶりに思う存分堪能してもいいだろ?」
そして、とても高校生とは思えない程の色気をたっぷり含んだ声で囁かれてしまい、心拍数は急激に上昇してくる。
「えっと……櫂理君ちょっと待っ……きゃっ!」
すると、腰に櫂理君の手が回ってきた瞬間、そのまま押し倒されてしまい、私は軽い悲鳴をあげた。
戸惑う私とは裏腹に、満足げな表情で私を見下ろしてくる櫂理君。
その情熱的な瞳に囚われた途端、脳裏にいつぞやの記憶がふと浮かび上がってきた。
あれは、初めて櫂理君に自分の気持ちを伝えた日。
あの時もこうして櫂理君に覆い被さられ、ものすごく濃厚なキスをされた。
それからは一日最低一回以上は必ずキスするという変なルールが新たに出来、“手を出さない”というルールはいつの間にやら綺麗さっぱり消滅した。
それでも、キス以上のことはしてこないので、それなりに一線を引いてくれているのだとは思うけど……。
今の櫂理君の目は、それが危ぶまられるような気配が漂う。
その時、櫂理君の顔がゆっくり落ちてくると、私の首筋に唇がそっと触れ、思わず肩が小さく跳ね上がる。
「ここに跡付けたらどうなるかな」
そして、愛おしそうに軽めのキスをしながら、悪戯な な目で私を見る。
「そんなことしたらお父さんが怒るよ」
本気なのか、冗談なのか。
いまいちよく分からない彼の様子に、私はとりあえず牽制してみる。
「いいな、その背徳感。なんか興奮してくる」
けど、それが逆に火をつけてしまったのか。
櫂理君は妖しく微笑むと、首筋にあてていた唇を徐々に上へと滑らせ、顎まで到達したところで私の唇をぱくりと食べた。
そこから、角度を変えて、言葉通り私を堪能しながら、
最後には櫂理君の舌が容赦なく口の中に侵入してきた。
こうして、またもや濃厚なキスを受けていると、不意に唇が離れ、今度は耳の裏を舌でぺろりとなぞり始め、痺れるような感覚に思わず「あっ」と小さな声が漏れてしまう。
「耳弱い?」
その反応を楽しむように、櫂理君は吐息混じりの低い声で囁いてくる。
「知らない。そんなとこ誰にも舐められたことないから」
それが、まるで煽られているようで、私は少し悔しくなり顔を背けた直後。
隙ありと、櫂理君は私の髪の毛を捲り上げ、鎖骨付近に何度もキスを落としてきた。
「やっ、だめっ……」
基本首は弱いので、彼の唇が触れるたびに小さな痺れが幾度となく襲って来て、堪えようにも声が自然と漏れ出てしまう。
部屋中には櫂理君のキスをする音が響き渡り、段々と変な気分になってきた。
「ねえ莉子。もっと鳴いて。もっとその声が聞きたい」
そう甘えた声でおねだりしてくると、櫂理君は私のパジャマのボタンに手を掛け、第一、第二とゆっくり外し始める。
「え?櫂理君?ちょっと待っ……ひあっ!」
そのうち下着が見えそうになり、焦り出した私は慌てて手の動きを止めようと彼の手首を掴んだ時。
ぱっくりと空いた胸元に突然顔を埋められ、谷間ギリギリのところを軽く吸われてしまい、これまでで一番大きな声が出てしまった。
「櫂理君ストップ。もう、おしまいにして!」
これ以上されると感覚がおかしくなりそうで、とにかく止めてもらおうと必死に懇願するも。
櫂理君の動きは一向に止まることを知らず。
今度はパジャマの裾を捲り上げて、おへそ付近にキスをされてしまい、もうやりたい放題。
親が居ないことをいいことに、これまでされたことがない敏感な場所に沢山キスをされてしまい。
彼の思惑通り、初めての刺激続きに私はずっと声を抑えることが出来なかった。
__翌朝。
ピピピピ
「……ん」
目覚ましの鳴る音と、カーテンの隙間から差し込む朝日のダブルパンチで、夢の世界から強制的に現実世界へと引き戻される。
まだ布団の中で微睡んでいたいけど、今日も学校だからこのまま寝るわけにはいかない。
なので、無理矢理瞼を開き、先程から鳴り続けている耳障りな目覚ましを止めようとスマホを手探りで探す。
すると、指先に細くてサラサラしたものに触れ、なんだろうと視線を向けた途端。そこには私を抱き枕のように抱えて、静かな寝息を立てている櫂理君の顔がすぐ近くにあった。
……あ、そっか。
そういえば、昨日……。
あれから櫂理君に沢山キスをされた後、体の芯まで溶かされてしまった私は、お姫様抱っこで部屋のベッドまで運んでもらった。
そして、ここぞとばかりに櫂理君は布団に潜ってきて、“弟の顔”でおねだりをされてしまっては拒むことが出来ず。
結局彼の要望通り、朝まで一緒に寝ることになったのだった。
昨日は大人顔負けの色気で迫ってたのに、今の櫂理君の寝顔は少年のようにあどけなくて、庇護欲をくすぐられる。
普段は誰もが恐る悪魔のような人なのに。
ある時は頼れるヒーローになったり。
またある時は可愛い無邪気な弟になったり。
そして、時には色気ダダ漏れの大人な男性になったり。
沢山の顔があり過ぎて困惑する時もあるけど、そのどれもが私にとって魅力的で、たまらなく愛しい。
時たま、人から櫂理君はシスコン過ぎると言われることがあるけど、私だって相当なブラコンな気がする。
世界一可愛くて、世界一格好いい私の弟であり恋人。
そんな彼に絆されていく幸せを感じながら、溢れる愛情のまま、私も櫂理君の体をこっそりと抱き締め返したのだった。
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