2
__翌朝。
「莉子おはよー。……なんか唇腫れてない?」
登校して早々。
美南と顔を合わせた途端、早速痛いところを突いてきて、私は思わず表情が引き攣る。
「……えと、これは……ただの乾燥」
昨日散々櫂理君とキスしてましたとは、流石に言えず。
短い時間で頭をフル回転させた結果、しょうもない嘘をついてしまった。
けど、櫂理君と付き合い始めたことはきちんと伝えようと思い、私は美南にこっそりと耳打ちする。
「えっ!?マジで!?ついに弟君の気持ちを受け入れたの!?」
すると、想像以上の声量で驚かれ、私は慌てて彼女の口を塞いだ。
「ちょっと声が大きいよ。このことはまだ内緒なの」
そして、なるべく声のトーンを落として必死で抗議する。
「そうなの?それじゃあ、もしかして家族にも言ってないってこと?」
「……うん。一応私が卒業するまでは手を出すなっていう約束だから……」
とは言え、昨日の櫂理君はタカが外れたように約束を平然と破っていたけど。
一体今まで律儀に守っていたのはなんだったんだろうと。
今更ながら疑問に感じるけど、ここはもう気にしないことにした。
「莉子」
その時、突然背後から誰かに抱き締められ、危うく心臓が止まりそうになった。
「なんで先に登校するんだよ。今度から一緒に行こうって言っただろ」
確認せずとも誰だか分かるその声に、私は苦笑いを浮かべて後ろを振り返る。
「ごめんね櫂理君。なんか凄く恥ずかしくて……」
昨日あれから私は何事もなかったように櫂理君の部屋を出て、自室へと戻った。
それから、なるべく両親に気付かれないように平静を装っていたけど、彼の顔を見るとやっぱり落ち着いてなんていられない。
だから、ちょっと冷静になろうと思ったんだけど……。
「それなら、もっとキスすればじきに慣れるから」
すると、何やら振り切った彼の言動に一瞬目が点になる。
冗談なのかと思ったけど、徐々に櫂理君の顔が接近し始め、私は慌ててそれを阻止した。
「ちょ、ちょっと待って。ここ学校だよ?それに、私達が付き合うのはまだ内緒にしようって……」
「あれから考えたけど、学校ではいいんじゃね?てか、隠したところで今更だし。それに俺らが正式に付き合ってるって知れ渡れば、もう虫は二度と湧いてこないだろ」
そう力説する櫂理君に対し、どう返答しようか言葉に迷う。
確かに、櫂理君が私を好きなことは周知の事実だし、ここで私達が付き合っても、周りはそこまで驚かないのかもしれないけど……。
だとしても、公衆の面前で堂々とイチャつく勇気は持ち合わせていない。
そうこうしてたら再び櫂理君の顔が降りてきて、しかも、今度は両腕をがっちり掴まれてるから抵抗出来ない。
ここはもう諦めるしかないと。
覚悟を決めた次の瞬間だった。
突然櫂理君の体が私から勢い良く離れ、咄嗟に振り向くと、そこには呆れたような表情で彼の首根っこを掴んでいる雨宮君が立っていた。
「なんか今日は朝からウザさが強化されてね?」
そして、怪訝な目で私達を見てきて、ぎくりと肩が小さく震える。
「当たり前だろ。もう莉子は完全に俺のものになったんだから、邪魔すんじゃねーよ」
そう断言する櫂理君は相変わらず隠す様子はなく、雨宮君の腕を振り解き、再び私を後ろから抱き締めてきた。
「あーあ。莉子さんこれからもっと大変になりそうだね。こいつの恋愛感情拗れに拗れまくってるから」
すると、いつの間に私達の背後に立っていた圭君は、哀れんだ目をこちらに向けてくる。
その言葉がやけに重く感じ、私はただ苦笑いをすることしか出来なかった。
結局、私達が付き合っていることは一瞬で学校中に広まった。
そして、櫂理君が言う通り、告白されることはあの日を境にパタリとなくなり、その代わり極妻的扱いが更に強化された。
こうして、いつもの平穏な暮らしにちょっぴり(?)甘いスパイスが加わって、私は今日も櫂理君から重くて真っ直ぐな愛を受け続けている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます