グルテン不耐症
小松たね
第1話
「チキンブロス(水、チキンストック)、小麦粉……」
原材料を確認していく。 はあ、このスープも食べられない。 こんなことばかりだ。
私はグルテン不耐症を持っている。 このせいで、食べるものに限りがある。 テレビではハンバーガーやサンドイッチなどのコマーシャルが盛大に流れている。 世界にはグルテンを含んだものしか存在しないのではないかと錯覚するほどだ。
グルテン不耐症は、ドクターから診断されたものではない。
2017年9月ごろから、ひどい胸焼けに襲われるようになった。 ファミリードクターを受診したのが、その年の11月ごろだ。 ドクターの見立てでは「逆流性食道炎」だった。 2週間分処方された胃酸を抑える薬を飲んだが、一向に効かなかった。
食後、何時間も経ってから胸焼けが起きる。 その症状がグルテン不耐症ではないかと気づいたのは、今から3年前、12月の終わりに読んだYahooニュースの記事がきっかけだった。 「朝のトーストをやめたら調子がよくなる」といった内容の記事だ。
もしかして、これかもしれない。 そう思って、熱心に読み進めた。
私に当てはまることが多かった。 症状の一つに胸焼けもある。 私は逆流性食道炎と言われてから、胸焼けがあった日はすべて日記につけていた。 そして、記録好きであったことが、ここで役に立った。
結婚してから、毎日の献立を記録していたのだが、途中から使った食材も書き残していた。 胸焼けのあった日と食べたものを照らし合わせてみると、見事に、グルテンを含むものを摂取した日と一致していた。
袋入りのラーメンを食べた後の胸焼けは、麺が油焼けしていたのだろうと思っていた。 市販のフライドチキンの後は、揚げ油が悪かったのだろう。 エクレアを食べた後は、砂糖が原因だと思っていた。 自分で作ったカスタードクリームでも、砂糖が悪かったのだろうと考えていた。
グルテンのせいだとは、露ほども疑っていなかった。
2003年9月、義母が一時帰国する私を、思い出にとナイアガラの滝へ車で連れて行ってくれたことがある。 昼食は、彼女が用意してくれた全粒粉のパンのサンドイッチだった。 帰りの車の中で、ひどい吐き気に襲われた。
車酔いだろうと思い、酔い止め薬を飲んだが、効かなかった。
また、いつの頃からか、麦茶を飲むと胸焼けが起きるようになった。 小麦の皮が合わないのだろうと考え、全粒粉の食品を避けるようになった。 白く精製された小麦粉で作られたパンを食べていた時期は、症状が強く出ることはなかった。
しかし、体が「これ以上は無理だ」と判断したのだろう。 ある日、ひどい胸焼けが始まった。
大人になってから、グルテン不耐症を発症する人もいるそうだ。
あのYahooニュースの記事に出会っていなければ、 私は今もグルテンを摂取し続け、胸焼けに悩まされていたと思う。 あの記事には、心から感謝している。 願わくば、もっと早く出会いたかった。
2022年5月に受けた胃カメラでは、食道と胃の境目に炎症があった。 しかし、グルテンの摂取をやめてから受けた2025年6月の検査では、炎症はなくなっていた。 インターネットで調べると、逆流性食道炎とグルテン不耐症は関連があると書かれていた。 やはり、と思った。
もし最初に診てもらったファミリードクターが、食生活について詳しく聞いてくれていたら、 効き目もなく、必要もなかった胃酸を抑える薬を、5年近く飲み続けることはなかったのかもしれない。
ドクターには、できれば患者の食生活についても、もう一歩踏み込んで聞いてもらいたいと思っている。
私はグルテンのほかに、砂糖を摂取すると胃がもたれる。 そのため、砂糖を使ったものは、できるだけ避けている。 私にとっては、ジャンクフードのポテトチップスの方が、むしろ安全だ。
果物に含まれる果糖は問題がないので、果物は食べられる。 デザートがリンゴジュースという日もある。 すべての甘いものを断つことはできない。 心の健康を守るためだ。
93歳の父は、朝から甘いせんべいを食べ、 おやつにどら焼きを食べても、何の不調もないという。 正直、うらやましい。
スパゲティ・ミートソースを食べるときは、ライスヌードルにしている。 グルテンフリーのパスタやパンもいろいろ試したが、口に合わなかった。 ハンバーガーショップでは、レタス・ラップを選ぶ。 炭水化物は、フライドポテトで十分だ。
うどんやラーメンが大好きだった私は、 今ではインターネットの画像を見て、食感や味を思い出して楽しんでいる。 誘惑に負けてうどんを食べ、胸焼けに苦しむのは、もうごめんだ。
大人になってからでも、グルテン不耐症は起こるそうだ。 もし、どこかおかしいなと感じることがあれば、 食べものを少しだけ振り返ってみるのも、一つの方法かもしれない。
グルテン不耐症 小松たね @marplecci
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