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せおぽん

パスワード

パスワードを入力したが、ログインができない。


生体認証などない古い端末だからなんとかしてパスワードを入力しなければアクセスができないのだ。


困ったぞ。このデバイスには僕の一生をかけたデータが入っているのに。


コツコツと貯めた全財産が入っているのに。


沢山の旅の思い出が詰まっているのに。


無作為に並んだ20文字程度の『ひらがな』で構成された、『ふっかつのじゅもん』を誤る事は、僕の貴重な青春を費やした時間を全て無に返す事を意味する。


『ふっかつのじゅもん』を記したメモを何度も見直す。自身の文字の汚さを改めて悔やむ。


この文字は「ぬ」なのだろうか「め」なのだろうか?


僕は『りゅうおう』よりも、手強い敵に屈してしまいそうだ。


これまでの長い旅が、思い出される。


「お母さーん、僕の、ふっかつのじゅもん。知らなーい?」

「なによ? “ひらがな“ばっかり書いてあった チラシ? 捨てちゃったわよ。 もっと漢字を勉強しなさい!」パシンと、母から会心の一撃食らったあの日。


「あんたは、ファミコンばっかりして」と、ACアダプターを隠され、その探索に数日を費やした、あの日。


あの冒険の日々が全て失われてしまうのだ。僕は試行錯誤を繰り返し、なんとか「ふっかつのじゅもん」を再現させ、ようやく「りゅうおう」を倒すことができたのだ。



かろうじて、DQ1を攻略した僕は、お父さんに頼んでDQ2を買って貰った。DQ1は最高の冒険だったからね。お父さんは、徹夜で並んで買ったんだぞ。と、僕にDQ2を手渡した。


「ありがとう、お父さん」と、僕はお父さんに抱きつく。


後に、DQ2の『ふっかつのじゅもん』が、52文字と知った時に僕は泣いてしまった。


14インチのブラウン管に滲む文字が、僕の涙でなおさら滲んで見える。


僕は涙を拭った。


父の貴重な有給で手に入れたDQ2を、無駄にしてはいけない。と僕は、覚悟しスタートボタンを押すのだった。




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